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  • 2020.12.04

3×3 U18日本選手権で披露された、若き世代の3人制と競技からの学び

18歳以下の3×3日本一を決める大会が、コロナ禍の難しい状況を乗り越えて、今年も開かれた。高校最後の公式戦に懸ける選手たち、冬の大一番を控えながらもチャレンジする選手たちらが代々木へ集結。個の力はもちろん、ゲーム中の冷静な判断やビックショットを決めた精神的な強さなど、競技を知る者たちのサポートを支えに、トップシーンで見られるようなレベルの高い攻防を若き世代が披露した。

コロナ禍でもキープされた真剣勝負の場
『第7回 3×3 U18日本選手権大会』が11月28日、29日の2日間にわたり、東京・代々木第二体育館で開催された。今大会には都道府県予選とエリア予選を勝ち抜いた男女それぞれ16チームが集結。春先から続く新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年はインターハイなど練習の成果を発揮する舞台が中止を余儀なくされた。しかし日本バスケットボール協会によって、今大会は感染防止対策のガイドラインに基づき、無観客試合で貴重な場がキープされるに至った。



そしてコートを見わたすと、今年も5人制がメインの年代において、3×3の競技特性を理解して体現しようとするチームが着実に台頭し、結果を出すようになってきた。年を追うごとに大会へかける意気込みは上がりつつあり、その背景には競技を知る選手や関係者からのコーチやアドバイスがあったことも見えてきた。

ROOKIESが初優勝、経験者たちを破った強さ
まず男子の模様を振り返りたい。初日のトピックスは大会初Vを狙った習志野市立習志野高校(千葉)とORANGER(神奈川)の準々決勝だ。前者は前回大会5位を経験したメンバーが3人残り、コーチは勉族やSEALSに所属して3×3をプレーする、ダークロこと黒田裕氏が務めている。対する後者も前回大会に出場した皆藤太郎(# 11)を含めて3人の大学生に高校生をミックスした編成で、TEAM-SのJUNこと鈴木淳氏がコーチをしている。3×3の特徴を肌で知る者たちが手掛けたチーム同士の対決だったのだ。

試合は習志野高校がORANGERに開始3分足らずで4点のリードを奪われたところで、1試合で1度しか取れないタイムアウトを取った。早々と請求することに勇気がいるかもしれないが、悪い流れを断ち切るべく、しっかりと判断した姿が印象的だった。そして中盤にかけてエース・木島優(#34)を中心にドライブでファウルを誘い、アウトサイドから朝比奈友海(#5)が射貫いて21-15で試合をひっくり返してみせた。黒田氏は彼らの判断について「大人たちと練習をさせています。そういうときにタイムアウトを取って流れを切る。そしてファウルを上手く使うことを教えています」と自らの所属先、ときにはBEEFMANに胸を借りて場数を踏ませたことが、背景にあったと明かした。そして「組み合わせが決まったときにORANGER戦が一番の勝負試合と思っていました。本当に落ち着て勝ち切ったことは、彼らの成長だと思っています」と教え子の戦いぶりに目を細めていた。


しかし習志野高校は続く準決勝でOSAKA(大阪)を19-14で破りながらも、頂点には届かなった。ファイナルでは彼らの前にROOKIES(山形)が立ちはだかり、21-17で初優勝に輝いた。ウインターカップ予選では県の決勝で敗れた米沢中央高校の3年生たちが、エリア予選を1位で突破し、今大会も4試合すべてでKO勝ちを収める文句なしの強さだった。平均身長187㎝の相手に対して、彼らは173㎝とハンデはあったが、豊富な運動量と2ポイントシュートを武器にドライブをおりまぜ、守備から攻撃に転じる際には味方の動き出しを熟知した素早いパスを出しで、リズムを生み出した。さらにリバウンドやルーズボールなど球際で見せてくれた気迫あふれるハッスルプレーは、優勝への執念そのもの。MVPに選ばれた佐藤賢明(#14)は大会後、「(3×3は)楽しかったです。僕ら小さいチームが、でっかいチームに勝てたことが嬉しかったです」と喜びを語った。


彼らは顧問の先生の勧めで今大会のエントリーを決めたという。加えて、同校バスケ部のコーチと親交のあったSANJO BEATERSの小野寺彰から競技のポイントを教えてもらう機会もあった。3年間、積み上げた練習と3×3のアドバイスが融合されて「歴史に名を刻もうという言葉をかかげて(佐藤)」挑んだトーナメントで勝ち切ったROOKIES。3×3で学んだ「小さくても、できるんだということ。そして諦めない気持ち(同)」を胸に、ネクストステージでの活躍を期待したい。

初制覇のKUKI GYMRATS、競技を学ぶ環境が支えに
一方で、女子も男子に負けない熱戦の連続だった。全15試合のうち、じつに8試合が2点差以内の攻防。そんな大混戦を4年連続出場のKUKI GYMRATS(埼玉)が初めて制覇した。第4回大会(2017)に15位だったチームは、第5回大会(2018)で6位、前回大会は4位と先輩たちが最高位を更新し続け、今大会の4人も先輩たちの背中を見て自分たちの代を迎えた。さらに今年はウインターカップ予選で県ベスト4で敗れ、その悔しさを抱えての一戦でもあった。山口美南(#55)は「今度は自分たちが(先輩や仲間たちの思いを)受け継いで5対5で掲げた“日本一”という目標を、今度は3×3で達成して、私たちの代のケジメをつけたいという気持ちで挑みました」と話す。

そして彼女の言葉通り、全4試合の中で2点差以内の試合は3度に及び、うち2度は延長戦というタフなトーナメントを強い気持ちで乗り切った。初戦は3×3.EXE PREMIERに参戦するKARATSU LEO BLACKSの下部チームであるLEO NINERS U-18(佐賀県)に対して終了間際に追いつき、延長戦のすえ17-16で勝ち切ると、準々決勝では鎮西学院B(長崎)に19-11で快勝する。続く準決勝ではウインターカップに出場する神奈川No.1チーム、鵠沼高校に終盤リードを許すも、フェレイラ ミユキ(#83)が土壇場でアークの少し遠目の位置から勝ち越しの2ポイントシュートを決めて、16-14で決勝へ。沖縄県立糸満高校Aとのファイナルでも10分間で決着がつかずに、2点先取の延長戦へ勝敗の行方はゆだねられた。

迎えた勝負のかかった局面では、「延長戦前のインターバルで、みんなに打ちたいと立候補しました」と、山口が練習をしてきたセットプレーのフィニッシャーを宣言。スクリーンでマークを外し、トップ位置から綺麗な放物線を描いてゲームウィナーとなる2ポイントシュートを決め、18-16で喜びを爆発させた。MVPにも選ばれた彼女は「セットプレーからシュートを打ったときはなにも考えられない状態でしたが、自分のプレーらしく最後は打てました。気持ちよく決まって、すごい良かったです」と、笑顔でビックショットについて振り返ってくれた。

また結果を残した背景には、チームとして強化に取り組み、Bリーグ2部の越谷アルファーズとの関わりがあったことなど、技術や競技特性を学ぶ機会に恵まれたことも見逃せない。スキルコーチには元3×3日本代表コーチの岡田卓也氏が名を連ね、越谷の運営会社である株式会社フープインザフッドが運営するバスケ基地・アルファーズベースで、2020年度の3×3男子日本代表候補選手である齊藤洋介(UTSUNOMIYA BREX.EXE/以下YOSK)から数多くのアドバイスを受けている。「顧問の先生からそういった機会をいただきました。アルファーズとの関わりがあって、そこから様々な関係者の方につなげていただいて、たくさんの方と練習試合を組ませていただき、クリニックで教えていただくことができました」と山口は明かした。とりわけYOSKからは「攻守の切り替え」と「強くアタックすること」が一番の学びとしてゲームにいかすことができたそうで、「わかりやすくて楽しかったです!」と、その教えは彼女たちの目標達成に貢献した。大人たちが環境を整え、先輩たちの背中を見て、選手たちが努力をした末の優勝劇だと感じさせてくれた。


3×3で収穫を得た鵠沼、冬の大一番へ
今大会に出場した多くの選手は高校生であり、大半が3年生とあって、公式戦はこれが最後の舞台だった。そんな中、数少ないがウインターカップに出場するチームがあったことも最後に触れておきたい。鵠沼高校(神奈川)である。男子のORANGERと同じく、鈴木氏からコーチングを受け、得点やアシストでチームをけん引した野坂葵(#77)を中心に、チームディフェンスが優れていた。準決勝で惜しくも敗れたが、野坂は「3×3は初めての経験で、勝ち上がって舞台が上がるほど緊張しましたが、楽しませていただきました」と充実した様子で試合を終えている。そして3人制を経験できたことで、「パスを出したあと、動き出しを速くすることで、ディフェンスを外せてシュートまで行けること」、「スクリーンのディフェンスのときに、すぐにスイッチアップすれば相手のプレーをやらせずに、持ち味である攻撃的なディフェンスができること」を収穫に挙げてくれた。

来る大会で目指すは全国ベスト8。チームを代表して彼女は「自分たちの攻撃的なバスケをやり通すことで、平均身長が小さいチームでも『できるんだぞ』ということを、全国に示したい。最後の最後まで自分たちが悔いのないプレーで終わりたいと思います」と決意を語った。初戦は12月23日。今大会の経験が、冬の大一番で発揮されることを期待したい。

3x3 U18日本選手権大会で披露された、若き世代の3人制と競技の学び

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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