3×3の未来を創る――「FIBA 3×3 アジアカップ 2026」取材記vol.3

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今春も、シンガポールはアジアの3×3の過去・現在・未来が交錯する象徴的な舞台になった――。
4月5日(日)、3×3のアジアNo.1を決める「FIBA 3×3 アジアカップ2026」は最終日を迎えて、男女の8強が激突。地元はもちろん日本や中国、フィリピン、モンゴル、オーストラリアなど各国のファンも押し寄せて会場が大きな熱気に包まれた中、次世代の台頭、新たなメンバーでの戴冠、成長の過程で苦しみを味わった者など、変化の激しい3×3を象徴するようなシーンが例年以上に多かった印象だ。ただ、継続的に取り組むからこそ生まれるものがあることも確か。競技に可能性を感じ、本気でやる選手がいる限り、競技の未来は明るい。

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平均年齢22.3歳。ニュージーランドが初優勝
3×3アジアカップの歴史で初の優勝を飾った男子・ニュージーランド。準々決勝では王者・オーストラリアを21-16で破り、準決勝では日本も21-16で撃破。決勝では韓国を21-15で破った。平均年齢22.3歳。4人中3人が昨春の銅メダルメンバーであり、全員が23歳以下の選手が出場する「FIBA 3×3 ネーションズリーグ 2025」を転戦したほか、「FIBA 3×3 U23 ワールドカップ 2025」にも出場。若い力が1年で大きな成長を遂げ、モンゴルとオーストラリアが席巻していた大会史に、新たな名を刻んだ。

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彼らを見てて思うのは、同じスタイルで継続的に取り組むという、結果を残す原理原則を体現していることだ。かつてのニュージーランドと言えば、200㎝を超えるビックマンを軸に、個の強さを活かすスタイルだった。
しかし、昨秋からそのスタイルがモデルチェンジ。ピック&ロールやスリップ・ダイブ、ドライブキックアウトからの2ポイントショットなどチームの連動が必要になる戦い方になった。それでいて190㎝から200㎝の選手がディフェンスでもオールスイッチでプレッシャーを懸けるハードワークも厭わない。

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決勝で対戦した韓国も高麗大学、延世大学、成均館大学といった強豪大の選手たちがシンプルな1on1を主体に躍進したが、3×3の土俵ではニュージーランドが上回った。大会MVPに輝いたDavid Lewis(#13 / 193cm)は、いまのスタイルをこう説いた。勝利に近道はないのだ。
「去年はまだ自分たちのシステムを模索している段階だったと思います。今年はより明確なビジョンと、より多くの経験、そして共に戦って試合数を積んで臨みました。そして、それがコート上で皆さんが目にしたものです。今年と昨年の違いは、まさにもっと結束力が強まり、自分たちが目指すプレーへの認識が一致していたからだと思います」

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オーストラリア「伝統を受け継ぎ」6度目のNo.1に
そして、女子に目を向けると6度目の頂点に立ったオーストラリアが新鮮だった。2023年から3連覇を飾ったパリ五輪にも出場した選手たちは不在だったが、新たなメンバーで今年3月の「FIBA 3×3 チャンピオンズカップ」を経て、今大会に出場。準々決勝でニュージーランドを19-11で下し、準決勝では中国に14-20と敗戦濃厚の展開から2ポイントシュートを射抜くなど、21-20の大逆転勝ち。平均身長183㎝の大型チームは、決勝でフィリピンを18-9で退けた。

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大会MVPに輝いたKristy Wallace(#3)は昨季、WNBAのインディアナ・フーバーに所属。新シーズンより新規チームのトロント・テンポにエクスパンションドラフトで加入が発表されている選手でもあった。
表彰式を終えて、取材に応じたWallace。落ち着いた表情で「大会の最初から最後までチーム一丸となってプレーしました。浮き沈みもありましたが、最終的に金メダルを獲得できたので、これ以上望むものはありません」とコメント。新たな4人でGangurrus(=3×3オーストラリア代表の愛称)の歴史を紡いだ喜びも大きいようだ。

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「私たちは、まだチームとしてまとまって活動したことがほとんどありません。ですから、参加するにあたっては、経験不足になるだろうと分かっていました。でも、私たちは自分たちの強みを活かし、できるだけ早くチームとしてのまとまりを築けるようベストを尽くしました。Gangurrusはアジアカップで輝かしい実績を残してきました。ですから、その伝統を受け継ぎ、私たちより前にプレーしてくれた人たちに敬意を表すことができて嬉しかったです」

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また、3×3は5人制と違う競技。毎年、オーストラリアは5人制の選手が出場して結果を残しているだけに、彼女へチームビルディングの秘訣も尋ねた。「本当にいろんな要素が絡んできますね」と切り出し、こう続けた。心にとめておきたい。
「一番大事なのは、お互いに良い連携を築き、お互いの長所と短所を理解することだと思います。それに3対3の試合には運の要素も少しあります。どのチームでも、その日次第で勝つことができますから、私たちには少し運が味方してくれたし、本当にみんなが見事なプレーをしてくれたおかげだと思いますね」

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成長した井後。新しい小澤のあり方で変わるもの
一方で、男女の3×3日本代表は今大会を4位で終えた。まず、男子は準々決勝でモンゴルと21-20の死闘を演じたのがハイライトだった。残り2分16秒で20-20の同点から何度もシュートまで持ち込まれたが、耐えに耐えた。仲西佑起(#24 / 191cm)がプットバックで決勝点を押し込んだ姿に、叫んだ人は一人や二人ではないだろう。

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ところが、準決勝ではニュージーランドに16-21で敗れ、3位決定戦では中国に20-20のタイゲームまで持ち込んだが、2ポイントシュートを許して敗戦。一時、17-14とリードした時間帯では8年ぶりのメダルも見えかけたと思ったが、終盤の攻勢を跳ね返せなかった。

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小澤崚(#13 / 178cm)、仲西、井後健矢(#15 / 198㎝)という昨年のメンバーをベースに、クーリバリ ソロモン(#33 / 183cm)が初代表。小澤の調子が上がらずとも、勝ち切る試合が作れたのは大きな進歩であり、ソロモンが乗れたのもチームの声掛けがあったからこそ。彼は今大会、チームトップの31得点を叩き出した。加えて、代表2年目の井後が、鮮やかなダイブで準決勝と3位決定戦では1点を5本中5本決めるパーフェクトショットを魅せ、ディフェンスで互角に渡りあった姿に大きな成長を感じた。大会中に、彼はこんなことを語ってくれた。

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「2年目のアジアカップは、見える景色が違っています。去年だったら僕のところを中心に相手が攻めてきたのですが、今日の韓国戦でも僕がディフェンスを頑張れるシーンもあったり、リバウンドとゴール下のシュートを落とさせるシーンがあったり。それは、去年に比べて成長していると思います」

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ただ、今回ソロモンを入れた結果、上手く行かないこともチームであった。彼が悪いのではなく、役割が変わった選手もいれば、コミュニケーションで判断に迷いも生じたのだ。モンゴル戦では終盤、ソロモンの1on1でスクリーンに行くのか、行かないのか、混乱する場面があった。仲西は「僕はビッグマンがソロモンついていたので、ファウルも溜まっていたのでそのまま1対1でいけると思いましたが、冷静に考えるとあそこは疲れているのでスクリーンに行って、ズレを作った方が良かったと思います」と振り返る。

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また、大会を通して調子を上げきれなかった小澤。2ポイントシュートの成功率は19%(7/36)に終わった。徹底マークもされていたが、本人からすれば、それは昨春の1試合個人20得点というFIBAの記録以降、ずっとされていること。この1年「自分のリズムで打ててるシュート」もたくさんあったという。ただ、シュート不調の背景には、彼の役割の変化も今大会にはあった。
「ソロモンが初選出だったので、ちょっと自由にプレーさせてみようと思って、最初(=予選)はボールを多めに持たせたのです。ですが、そこでいつもの自分のリズムとは違くなってしまい、自分が乗り切れずに苦しい展開になってしまった。昨日、反省して、もう少し僕も最初からボール持ってもいいんじゃないかという感じで(みんなが)言ってくれたんで(モンゴル戦から)積極的にボールを持つことでリズムもできたかなと思います」

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それでも、メダルが獲れなければ、役割の変化こそ明かしていたが、結局は調子を上げられなかった自らの実力を彼は悔いた。パリオリンピック予選など代表で一緒に戦った保岡龍斗(現ファイティングイーグルス名古屋)の存在に触れて「僕が代表に入ったときに自由にやらしてくれてたんです。それでも彼は自分のプレーを存分に発揮して、結果も残してる」と話した。気が付けば小澤も27歳だ。もう若手でなく、中堅として後輩を引き上げるフェースに入ってきた。シュートでチームを引っ張る男が、ボールを持たずともチームに良い影響を与える。きっと、役割の受け入れ方と発揮の仕方のバランスを見つけ出した先に、小澤や日本の代表が見える景色が変わるのではないだろうか。

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フィリピン戦で見せた信頼の証。高橋の11得点
そして、3×3女子日本代表も振り返りたい。準々決勝でタイを15-13で破り、準決勝でフィリピンと対戦して19-21で惜敗。3位決定戦では中国との接戦を15-20で落とした。頂点を目指していただけに、これもまた悔しさが残る。
昨年5月より前田有香ヘッドコーチが就任。ピック&ロールなどでズレを作ってイージーな1点を取る。ドライブキックアウトで2ポイントシュートをクリエイトする。状況判断をして個で打開する。旧来の個を最大限に生かすやり方からモデルチェンジして、いまは発展途上にある。3×3をよく知らない人に強化の妥当性、競技の魅力を伝えるためには、メダルはマストだったかもしれないが、鶴見彩(#5 / 165cm)、野口さくら(#13 / 182cm)、高橋未来(#7 / 169cm)、花島百香(#8 / 178cm)という初結成の4人は非常にいいチームだった。

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その良さの最たる例は、チームの信頼感である。初日に野口が「全員がみんな本当に良い人で、何か一個になろうとしなくても一個になれるようなチームだなと思います」と表現していたほか、高橋の活躍にもその表れを感じた。決して大会を通してどの試合も2ポイントショットが確率よく入っていなかったわけではないが、チームショットで彼女に打たせ続ける場面があった。タイ戦で勝利を決めたのは、彼女の2本である。彼女は「私の役目はやっぱり外の2ポイントを打つことです。入らなくても打っていいよって言ってくれるし、最後まで打ち続けようと思いました」ときっぱり。フィリピン戦では5本もネットを揺らしてみせるなど、11得点を挙げた。

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ただ、チームの強みが発揮された中で、鶴見からはフィリピン戦でゲームコントロールの難しさも感じていた。「準決勝のフィリピン戦は(相手の)ビッグマンのところで1点の確率と、こっちの高橋のシュートが当たっていたところがあって。そこの(2ポイントで)得点が取れてた分、やっぱりそこだけになったかな……。これは自分のあれ(=ゲームコントロール)なんですけど」と、彼女は言う。2点と1点のバランスをどう取るのか。一番、3×3をやっている当の本人が最も分かるだろうが、疲労や緊張なども重なった中でこの判断を瞬時に行う難しさは想像に難くない。

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それでも、新たなスタイルもさることながら、今大会のスタッツを見ても、まんべんなく4人が活躍した結果がうかがえる。5試合で花島が25点、高橋が24点、野口が22点。鶴見は13点だったが、キーアシストは8本を数えた。誰が出ても活躍ができる。鶴見は「今やっぱり(3×3の戦い方を)積み上げている最中なので、それを表現し続けられたことは一個の収穫なのかなと思います」と説く。
次なるA代表の戦いは、男女ともに6月の「FIBA 3×3 ワールドカップ 2026」へ。継続的な強化しか、結果を切り開く道はない。

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MVPが感じる3×3の可能性。「3対3こそが本当に美しい」
シンガポールに3×3アジアカップが移って5度目。競技レベル、各国代表の底上げ、会場の盛り上がりを含めて、年々右肩上がりだ。これに比例するように、アジアでFIBAが行う3×3の大会数は飛躍的に増え、今シーズンはアジアの開催数が最も多くなりそうだ。ロサンゼルスオリンピックには国別ランキングの上位国が自動的に出場権を与えられるが、その枠はアジアだけ「2枠」もある。それだけ、注目されているエリアなのだ。

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MVPたちもその熱気を肌で感じており、3×3に可能性を感じている様子。男子のLewisも、女子のWallaceも前向きな言葉ばかりだった。
「僕やチームメイトにとって5対5はこれからもずっとあるでしょうが、正直なところ、僕は3対3こそが僕のゲームです。本当に大好き。たった10分の試合の中に、本当にたくさんのことが詰まっている。多くの人が“バスケは美しいスポーツだ”と言いますが、私は“3対3こそが本当に美しい”と思います」(David Lewis)
「3×3の可能性はとてつもなく大きいですね。なんてエキサイティングな競技なんでしょう。アジアでは急速に広がっていますし、世界中で大きく成長しています。その一員になれて本当にラッキーですし、これからも拡大し続けていくでしょう。3×3には無限のチャンスがありますよね」(Kristy Wallace)

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そして、今大会の優勝によって、両チームは2028年のロサンゼルスオリンピック予選につながる「FIBA 3×3 チャンピオンズカップ 2027」への出場権を獲得した。母国のバスケットボールシーンにとっても、意味があるのだ。
Lewisは、ニュージーランドで3×3のプログラムを築き上げようと努力を重ねた中で「本当に大きな意味を持つと思います。私たちには、もう少しサポートが必要でそれが得られれば素晴らしいですね。チームメイトの多くが、それだけの価値があるからです」と声を弾ませる。Wallaceも「(2027年の)チャンピオンズカップやワールドカップへの出場権など、多くのチャンスをもたらしてくれます。ですから、この大会で優勝できたことは、私たちにとって本当に大きなことです。ラッキーにもそれを手に入れることができました」と語った。

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シンガポールで、アジアの3×3熱を一段と高めた「FIBA 3×3 アジアカップ」。大会は来年、モンゴル・ウランバートルに舞台を移すだけに、この地ではひと区切りだ。しかし、ライオンシティでは2027年に「FIBA 3×3 ワールドカップ」が初開催される。2025年のモンゴルでのワールドカップは凄まじい盛り上がりと聞くだけに、来年のビックトーナメントも楽しみなところ。開催国のシンガポールは今大会、女子代表が史上初の8強に進出し、昨年は男子がベスト8入り。力の入った大会作りになることは間違いないだろう。
これから本格化する3×3新シーズン。日本でも国際大会が目白押しだ。3×3の未来を創る上で、アジアは可能性にあふれた舞台なのである。

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●2026年に開催される日本での主な国際大会(予定)
・男子「FIBA 3×3 ワールドツアー 宇都宮オープナー」(4月25日・26日@二荒山神社)
・男子「FIBA 3×3 渋谷チャレンジャー」(4月18・19日@恵比寿ガーデンプレイス)
・男子「FIBA 3×3 上野原チャレンジャー」(山梨県 / 8月8日・9日)
・男子「FIBA 3×3 Gホールディングス 愛知チャレンジャー」(愛知・10月10日・11日)
・女子「FIBA 3×3 ウィメンズシリーズ東京」(8月1日・2日)
・女子「FIBA 3×3 ウィメンズシリーズ高崎」(8月29日・30日@高崎アリーナ)
・男女「第20回アジア競技大会」(愛知県・9月)|男女の3×3 U23代表チームが出場

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- 3x3の未来を創る――「FIBA 3×3 アジアカップ 2026」取材記vol.3
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TEXT by Hiroyuki Ohashi
PHOTO by ©FIBA




