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  • 2024.03.31

シンガポールで歓喜は生れるのか…FIBA 3×3 Asia Cup 2024 取材記 vol.1

 3度目のシンガポール開催を迎えた「FIBA 3×3 Asia Cup 2024」。マリーナベイ・サンズで初開催された2022年大会から3年で、アジアNo.1を決めるビックトーナメントは大きな成長を遂げている。同国のスポーツ施設が集積するSingapore Sports HubのOCBC Squareへ舞台を移し、2度目のことしは座席が増設され、大型ビジョンも1台から3台へ。何より、3×3に沸く観客の熱気がより大きくなった。2016年に宇都宮へ「FIBA 3×3 World Tour Masters」が上陸して盛り上がりを見せてきた過程が、いまシンガポールで起きている印象だ。

メダル獲得の決意…「頼もしい兄貴」を超える
 そんなAsia Cupで、3月30日に3×3男女日本代表が初戦を迎えた。まず男子のメンバーは、#2 斉藤諒馬(横河電機 / UTSUNOMIYA BREX.EXE)、#6 トーマス・ケネディ(茨城ロボッツ)、#23 保岡龍斗(秋田ノーザンハピネッツ / ALPHAS.EXE)、#91 落合知也(ALPHAS.EXE)の4人。2018年大会以来のメダル獲得が狙えるチームである。過去2年と違って移動日から試合日まで中3日。シンガポールと実践形式の練習も行い、例年以上に暑いと言われる同国の気候にも適応できる準備をしてきた。

 だが、初戦のオーストラリアには13-20で完敗。試合後、取材をリクエストした落合がミックスゾーンに現れるまで約10分と長いようにも感じられた。約4時間後にフィリピン戦を控える中、男子代表にとってこの負けは食らった雰囲気さえあった。落合はチームの立て直しに向けた心境について、言葉を絞り出した。

「国際試合だから、一杯いっぱいになってしまうのは分かりますが、残念だと思います。やり切って負けたわけではなく、やってきたことをチーム全員で出せていないので。そこを修正させるのが自分がチームに入っている理由だと思います。フィリピンに勝てば予選通過のチャンスが残っているので、切り替えなくちゃいけないのは事実。顔を上げて、全員で1からやりたいと思います」

 そして彼らはフィリピンを22-12で破って、1勝1敗のPool 2位で決勝トーナメント進出を決めた。ミックスゾーン横にあるスペースで試合後、選手やコーチ陣がハイタッチをするなど喜び合っていた姿が印象的だった。しっかりと反省をした上で“オレたちはできる”と再確認するようにも感じられた。

 その中の一人、保岡は1点勝負が難しいオーストラリア戦を終えて「少しセルフィシュな2ポイントを打ち過ぎた」という反省もあって、「自分のせいで負けた」という思いがあったそうだ。それでも初戦からの切り替えにあたり、落合からの言葉も手助けになったと明かした。

「落合さんは自分を信用してくれています。お前が悪かったとも言われていません。ただ、オーストラリア戦ではペイントタッチが全然無かったから、フィリピン戦では増やしていくけど、お前のシュートは絶対に忘れるなよと言ってくれました。そういうリーダーシップは10年間も3×3の最前線で戦ってきた人だと感じましたし、その言葉があると自分も助けられました。頼もしい兄貴だと思います」

 さらに、金メダル獲得に向けた意気込みも保岡は語った。準々決勝ではイラン、その先も勝ち上がりが想定される相手は2年前に彼も屈した経験のあるニュージーランド、さらにオーストラリアだ。必勝を誓うのはもちろん、3×3代表として今度は自分が歴史を作る一人になる。落合をリスペクトしているからこそ、その照れ隠しもニュアンスを含めた、彼なりの決意だった。

「落合さんが獲った銅メダルが、(フル代表の)最高成績ですよね。そこを超えない限りずっと(代表に)いるのかなと思います(笑)。良い意味で僕らがあの人を超えて『もう(代表は)いいよ』と言われるぐらいにしたい。ベスト8からはタフな試合が予想されますが、自分たちはできますし、最後にオーストラリアにもう1回チャレンジして良い成績を収めたい。シンガポールの出発前にも言いましたが、ここはゴールではありませんが、勝たないと向こう(=パリ五輪予選)で結果を残せないと思います。結果を大事に戦っていきます」

女子代表に自信…頂点へ「私たちにはできる力がある」
 一方で、女子は予選Poolを2連勝で突破。#9 千葉歩(東京羽田ヴィッキーズ)、#12 古木梨子(東京医療保健大学 / トヨタ自動車 アンテロープス)、#13 金田愛奈(シャンソン化粧品 シャンソンVマジック)、#77 栗林未和(東京羽田ヴィッキーズ)の4人で、初めて挑んだ公式戦とは思えないほどの力を見せた。

 初戦でイランに17-16で競り勝つと、第2戦では延長戦の末、タイに19-16で勝利。初代表の古木は得意のピック&ロールや体格をいかした力強いドライブが光り、栗林の高さはアドバンテージになった。金田もイラン戦こそやや迷いが見受けられたが、タイ戦ではアグレッシブに、そして延長戦で試合を決める2ポイントシュートを射抜いた。千葉はシュート力のみならず、チームのまとめ役のように振る舞う姿が随所に見られる。お互いの強みをいかし、支え合って勝ち切る姿は、過去2年のアジアカップへ出場したチームと比べてよりはっきりと感じられた。

 その千葉によると、チームは「まだ集まってやっと1週間経ったぐらい」とのこと。それでも「みんながそれぞれ良いところ悪いところ毎試合振り返ったり、年齢関係なく話し合えているので、短い期間でここまでまとまっていると思います。きょう勝ち切れたのはすごく嬉しい」とコメント。苦しい試合を制した経験は「すごく自信になる」と、手ごたえもつかんでいる。

 また、イラン戦を勝ち切った要因のひとつは、終盤のタイムアウトとも言えるだろう。15-11から17-15と2点差に詰められた残り36秒で、千葉はタイムアウトのジェスチャーをレフェリーに示した。メンバーが違えど、昨年のアジアカップでは終盤、劣勢の中でタイムアウトを取り切れず、ずるずると時間が過ぎて準々決勝敗退に終わった光景があっただけに、良い判断だった。他にも、交代のときにスコアボードに目をやっているようにも見えた。きっと5年前の3×3経験が活きているはず。そう思ったが、彼女からはチームとしての準備が奏功していることがうかがえた。

「ミーティングで、コーチから常に選手同士で話して、相手のファウルと時間を見てやろうという指示がありました。それをすごい言い続けてくださったことが、試合で活きたと思います」

 そして、2勝を飾ってのベスト8入りで、視界が開けてきたようだ。「ここまで来たからには、優勝を目指して頑張りたいし、私たちにはできる力があると思います。みんなで話し合って、決勝トーナメントに向けて良い準備をしたい」

 準々決勝の相手は、昨年の準優勝国であるニュージーランド。5人制の宇都宮ブレックスで活躍するアイザック・フォトゥの妹、ガブリエラを擁するなど、体格に勝るアジアの実力国だ。頂点に近づくためにも、まずはそんな大きな山を乗り越えて、再び歓喜を作る姿に期待したい。

【日程】
3月31日(日)
男子決勝トーナメント
13:20~準々決勝 イラン
17:00~準決勝(負ければ19:55~3位決定戦へ)
20:45~決勝

女子決勝トーナメント
13:45~準々決勝 ニュージーランド
16:35~準決勝(負ければ19:30~3位決定戦へ)
20:20~決勝

【ライブ配信】
準々決勝(12:20~/外部リンク

準決勝(15:15~/外部リンク

3位決定戦、決勝(19:30~/外部リンク

シンガポールで歓喜は生れるのか…FIBA 3x3 Asia Cup 2024 取材記 vol.1

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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