世界トップクラスのランナーが形作る ナイキ エイペックスとそれに続くレーシング シューズ
夏の太陽がリフトバレーに昇り始め、ランナーたちが集まりだします。
ケニア西部のエルドレット。粘土質の土、草地や岩地、舗装路など、さまざまな路面が広がるこの地の道やトレイルは、何世代にもわたって世界トップクラスのランナーを輩出してきました。この日も9人のランナーがローナ キプラガット スポーツア カデミーでの早朝のセッションに向けて準備をしていました。朝の光が陸上トラックに差し込む頃には、すでに練習は始まっています。
トラックの脇では、ナイキ ランニングの専門家チームが選手たちを注意深く見守っています。選手にはハーフマラソン世界記録保持者ジェイコブ・キプリモや、女子マラソン元世界記録保持者のブリジッド・コスゲイなどのトップアスリートも含まれます。
7月下旬の数日間、このアスリートたちは、特別に設定されたチャレンジで、マラソン2時間切りを初めて成し遂げたエリウド・キプチョゲや、女子1マイルの世界記録保持者であるフェイス・キピエゴンと共に、世界がまだ見たことのないシューズの試作品テストを行いました。過去のバージョンと比較し、彼らの意見を聞くために何千キロもの距離を旅してきた、プロダクト、スポーツマーケティング、パフォーマンスの専門家たちにフィードバックを共有します。

ケニアのトレーニング施設でナイキの最新シューズの試作品をテストする、世界記録保持者ブリジッド・コスゲイとペーサーチーム。
アスリートたちは最新シューズの試作品を着用し、忌憚のない意見を述べます。何が優れていて、どこがそうではないか、シューズが擦れたりズレたりする場所、柔らかすぎる、重すぎる等、どこを変えて欲しいかを伝えます。
これらは、時間をかけて築かれた信頼から生まれる率直な意見です。エリートランナー達は、ナイキのチームメンバーが、ただ新たなシューズを称賛してもらうために海を越えて約9,000マイルを旅してきたわけではないと分かっています。彼らの率直なフィードバックを求めており、それが何十年にもわたりナイキがレーシング シューズのスピードの限界を押し広げてきたのです。今日のアスリートの発言が今後のプロダクトを形作り、彼らの洞察がシューズをより良くするとアスリート達は理解しています。


現代のエリートランナーたちからのフィードバックが、ナイキのレーシング シューズを形作り、スピードの限界を押し広げるのに役立っています。
シカゴへの道
キプリモとコスゲイは、次のレースを間近に控えています。二人ともシカゴマラソンに向けて準備を進めており、ナイキの最新エリート スーパーシューズの試作品を手に入れることになっています。
ナイキのレース、トラック&フィールド開発ディレクターであるクリス・クックは次のように話します。「彼らはマラソンのトップアスリートです。ジェイコブはナイキ アスリートの中で男子マラソントップクラスのランナーで、ブリジッドは元世界記録保持者です。彼らが最も重要な場面で最高のパフォーマンスを発揮できるよう、必要なすべてを確実に提供したいと思っています。」
キプリモが最初に試作品に足を入れる時、チームは基準となる比較対象として、彼がすでにレースで履いたことのあるシューズを用意しました。彼は以前ナイキのプロダクトの専門家に対し、コーナーを曲がる際にシューズ内で足が動いてしまうことがあると話していたため、デザイナーたちは足がシューズの中でしっかり固定されるように改善し、弾みの良さやクッション性を犠牲にせずにシューズを軽くしようとしていました。
ナイキ スポーツ イノベーション スタジオのナイキ ランニング リードであるエリオット・ヒースは次のように話しています。「このシューズを出発点にし、これまでの経験をもとに、もっと良いシューズを作ることを目指しました。」

写真左:エリオット・ヒース / 右: ジェフリー・カムウォロル
キプリモが新しい試作品を着用する頃には、チームはすでに彼のフィードバックをもとに改良を始めており、新しいコンセプトを考案しました。彼の今の課題は、シカゴのレースを走るシューズを絞り込むことです。
キプリモはいくつかのバージョンを試しました。1つは彼が気に入ってはいるものの、足に違和感を感じるという実験的なクッショニング システムを搭載したものです。他にもいくつかのシューズが最終候補に残り、チームはそれらを翌朝のトレーニングのために準備しておきました。
コスゲイも同様のプロセスで、彼女のために作られた同じプロダクトのプロトタイプを試しました。重さ、フィット、構造の違うものを比較しながら、特に濡れた舗装路面で必要な安定性とグリップを失わずに軽量なものを探します。いくつかの有望な選択肢がある中、彼女はすべてを試すことに決めました。

ナイキで実施した一定条件下での試験結果において、ナイキ アルファフライ 3より最大40%多くのエネルギーリターンを発揮するレーシング シューズ ナイキ エイペックスを確認するマラソン ランナーのエリウド・キプチョゲ。



従来のレーシングシューズとは異なり、ナイキ エイペックスは、かかとと前足部のソール厚が40ミリのオフセットのない形状で、バランスの取れたサポートとライド感を実現しています。また、ナイキ エイペックスの2段になっているビジブル エア ズームは、エネルギーを圧縮・蓄積・リターンするよう設計されており、独特の推進力のある感覚を生み出しています。ナイキ エイペックスのアウトソールにも新技術が採用されています。GOATEKとファスト ショット アウトソールが戦略的に配置され、トラクションと耐久性を提供します。
翌朝、試作品を手に、キプリモとコスゲイはトラックへ向かい、キプリモは1,000mと400m走を繰り返し走る中でいくつかのシューズを何度も試し、コスゲイは12回の1,000m走で4足のシューズを試します。近くのキャンプでも、他のメンバーが同様にシューズを取り替えながら試し、走る間にもナイキ チームと意見を交換しています。
その後、マラソン ランナーのキプチョゲとの個別の試し履きでは、試作品の幅が広いことから、素材の一部を取り除くことが提案されましたが、すぐにナイキのチームメンバーがその提案を想定した別のバージョンのシューズを差し出しました。彼らは変化を予測しており、すでに変更を加えていたのです。
シューズを試着し、走り、フィードバックを提供するこのサイクルは、選手たちと共に過ごす1週間を通じて続けられ、各ラウンドごとにナイキ チームが試作品の仕上がり具合をより明確に把握できるようになっています。

ナイキのプロダクト デザイナーは時間をかけてアスリートとオープンな関係を築き、アスリートは開発プロセスの全段階で率直な意見を述べます。
軽さの追求
アスリートに合わせて調整したシューズを持ってケニアに到着する前から開発作業は始まっています。
ナイキのフットウェア開発担当のエリック・グリムバーグは、年初のロンドン マラソンでキプリモと共に過ごし、チームは彼のシューズについて、機能している点と改善すべき点を確認しました。彼はイノベーションの原動力となった会話を振り返ります。
グリムバーグは次のように話します。「とても良いフィードバックをもらったのですが、改善の余地もありました。私たちはすぐに、より軽量なバージョンを作るために何ができるか話し始めました。」
ナイキのチームは、シューズの持ち味のエネルギー リターンを失わずに軽量化する方法を模索しました。

ナイキのレーシング プロトタイプをロードでテストするジェイコブ・キプリモ。
そのための作業は、ほぼすべての要素を見直すことを意味します。
アウトソールを薄くし、フォームの密度を下げ、エア ユニットを囲むフィルムの厚さを薄めました。アッパーには、キピエゴンが1マイルを4分以内に走ることを目指した“Breaking4”で着用したスパイクのために開発された超軽量糸を使用しました。
これらの変更により、試作品は重量を約176グラムから約120グラムまで削る驚異的な軽量化が実現されました。また、変更のいくつかは予想外の効果をもたらしました。低密度のフォームは軽量化だけでなく、シューズを柔らかくしたのです。

チームに最新のナイキ エイペックスについての感想を語る、世界最速の女性マイルランナーであるフェイス・キピエゴン。
アスリートを知る
チームが測定できるものと、アスリートが実際に経験するものとの相互作用が、開発プロセスの中心です。数値も大切ですが、それをアスリートがどう感じるかが重要です。
エリオット・ヒースは次のように話しています。「パフォーマンス プロダクトを作るには常にアスリートのフィードバックとラボでのテスト結果をバランスよく活かすことが重要で、この2つが一致しているのが理想的です。アスリートによって評価される点があれば、それをさらに強化しようと努めます。アスリートが評価しないのであれば、私たちはその理由を分析します。」
クックによれば、ナイキがアスリートと長く関わるほど、その会話はより具体的になっていきます。チームがアスリートのニーズを知るにつれて、アスリートも自分の望みを、そしてそれを正確に表現する方法も学んでいきます。
クックは次のように話します。「アスリートと初めて会った時は、会話はとても短く終わることもあります。しかし、一緒にいくつもシューズを作っていく中で、アスリートたちは私たちが聞きたいことが何かを深く理解してくれるようになります。」

何時間もアスリートの話を聴き、試作を繰り返して完成したシューズは、まもなく世界中のレースコースに登場します。
ナイキチームは、それぞれのアスリートがどのように自分の感覚を説明するのか、どんな質問から良い答えを得られるのか、そして、何を重視しているのかを理解していきます。長い時間を経て、そのような知識は1人のアスリートや1足のシューズ以外にも活用されるようになります。
キプリモ自身のレースでの実績こそが、このプロセスの確かさを物語っています。例えば、彼がハーフマラソンの世界記録を樹立した際に着用していたシューズは、新しい「Alphafly 4」の開発に活かされました。つまり、エリート向けレーシングシューズから得られた知見が、より幅広いランナーに届けられるモデルへと受け継がれたのです。
ヒースは次のように話します。「彼にとっての過去が、他の人々の未来になります。」
今夏、ケニアの赤い土の上で改良を重ねた最新のレーシング シューズの試作品も同様です。何時間もアスリートの話を聴き、試作を繰り返した結果は、まもなく世界中のレースに登場し、素晴らしい力を持ったエリート選手が着用し、それから間もなくして自分の最速を目指す多くのランナーにも着用されることになります。













