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  • 2025.08.26

八村塁が語る「覚悟」。 ジョーダンブランド旗艦店でトークショーが開催される

東京・渋谷で日本が誇るNBAプレーヤーの登場を、ファンや子どもたちがいまか、いまかと待っていた。彼が登場する方向を見て、椅子に座った中学生のバスケットボールプレーヤーたちがそわそわしている様子も。入ってきた瞬間、大きな拍手と歓声に包まれた――


マイケル・ジョーダンとの会話

 8月22日に、ジョーダンブランドの旗艦店「World of Flight Tokyo Shibuya」で、NBAロサンゼルス・レイカーズ所属の八村塁によるトークショーが開催された。つい先日まで名古屋でBLACK SAMURAI 2025 THE CAMPを開催するなど、4年ぶりの公式帰国で精力的な活動を見せていた中、この日はファンや次世代のバスケットボールプレーヤーに対してジョーダンブランドや自身のキャリアについて語った。

 MCを務めた長澤壮太郎氏が、まず八村に対してWorld of Flight Tokyo Shibuyaの印象を尋ねると「本当にジョーダンブランドがある中に日本の文化も入っている。両方がミックスされたすごい良いストアだなと思います」と話した。1ヶ月前にはブランドのワークショップに参加してマイケル・ジョーダンと会話したことも明かし「ジョーダンブランドでありながら、個々の持ち味をどんどん出して欲しい」という言葉をもらったという。ブランドとして選手とのコミュニケーションを大事にしているそうで、八村はバスケットボールを広めてきたマイケル・ジョーダンの想いを受け止め、ブランドの一員として「責任」と「誇り」をいつも持っているとも話した。

 また、シューズへのこだわりについて「機能」と「デザイン」を挙げた。彼は「怪我をしないようなサポート性を一番大事にしている。そして軽くて動きやすいシューズ」と語るとともに、日本だけでなく「お父さんの国のアフリカ(ベナン)のデザイン」や「僕が好きないぬのデザイン」も要素として取り込み、ブランド側とのコミュニケーションを通じて理想的なシューズを作り上げているという。


NBAでキャリアを重ねる中で身につけたこと

 そして、キャリアの話題に及ぶと、2019年にNBA入りして7シーズン目を終えたいま、八村は「オフコート」での取り組みの重要性を説いた。NBAの平均的なキャリアが4~5シーズンと言われる中で「体のケア」「リカバリーの仕方」「食事」など「細かいことがキャリアの長さを決める」と強調する。

 また、苦労しながらも3シーズンほどで身につけたのが「完璧なオンとオフ切り替え」だった。「試合で勝とうが負けようが、いいプレーをしようが悪いプレーをしようが、試合が終わった瞬間は全部忘れます」と彼は言う。長距離移動を伴い、スケジュールもタフな中で、NBAという世界最高峰の舞台で戦い抜く背景には、配信には映らない部分で彼の大きな努力があったのだ。

 さらに、ロサンゼルス・レイカーズという名門チームでプレーすることについて「すごい重みがあって」と、八村は率直に明かした。選手同士でも話すことがあるそうで、彼は「例えば今までやってきたプレーがあっても、レイカーズに入るとできない傾向が多い」として、名門のプレッシャーを受けたチームメイトがいた様子を説く。

 そんな中で、八村は「残れない人たちが多い中で僕も残ってきた方だと思うんですけど」と控えめに語ると、MCの長澤氏がすぐに「残ってきた方じゃないです!」「残ってます!主力です」と突っ込む場面も。思わず八村も「残ってます!?」と笑みがこぼれて「今ではもうレイカーズにいるのが3番目に長い人です。そこも踏まえて、ここまでやってきたんだなと思います」と、自負心をにじませながら語った。


次世代へアドバイス…「それこそ“覚悟”ですね」

 また、トークショーのラストパートでは、世界で戦うために重要な要素も語られる中で、八村選手は真っ先に「英語」を挙げた。野球を例にして、間が取れるスポーツではないことから通訳を入れてコミュニケーションができないだけに、バスケットボールは「コミュニケーションが本当に大事なスポーツ」と指摘。ゴンザガ大学に進学してから英語を本格的に学ぶ過程が「一番苦労したところ」と振り返って、彼は「カルチャーショックもありますし、そういうのも含めて日本から行く人で英語が最初からできる人はアドバンテージになります。河村(勇輝)君とかを見ても、英語は苦労してるのかなと思いますので、しっかり学んだほうがいいですね」と説いた。

 さらに、会場には中高生や大学生といった次世代のバスケットボールプレーヤーも集まり、八村に質問できるQ&Aセッションの時間も設けられた。多数の選手から質問が寄せられる中、アメリカで開催されたバスケキャンプに参加してボールがもらえずに悔しい想いをした選手が「アメリカに行ってどのようにボールがもらえるようになりましたか」と質問。それに対して八村は「英語ができるかな?それがやっぱり大きいのね」と投げかけた。ここでも語学の重要性を示して、チームメイトと信頼関係を結び、自分を表現するためにも「英語力を上げてどんどんコート上でコート外でもコミュニケーションしていくことが信頼関係となって大事になってくる」と話した。

 また、八村自身が中学生時代にNBAを目指したときどのように目標を立て、勉強と両立したのか質問がされると、本人は思わず「僕、勉強がダメでした」と苦笑い。それでも「その代わりにバスケを真剣にやっていました。本当にそれこそ“覚悟”ですね」と回答。「覚悟」の2文字は、彼がSNSやメディアなどを通じて幾度も発信しており、やはり最も伝えたいことであると改めて感じる場面だった。こうも話している。

「覚悟があれば嫌いな勉強や英語、食べ物でも食べようと思います。そういうところは自分でもバスケのためなら、バスケがそれほど好きだから、自分で嫌なこともやる。それが自分の身になるんです。目標を立てるときも、自分の好きではなく、何をやったら本当に自分が良くなるかを考えながらやっていました」


塁の取り組みはこれからも続く

 そんな八村塁がファンや次世代の前で熱く語ったトークショーは、約45分ほどであっという間にエンディングを迎えた。この日、ファンはレーカーズで活躍する漢の魅力を知る機会になり、次世代にとっては世界で戦う選手からバスケットボールへの向き合い方や、夢を叶えるヒントを得たはずだ。彼の言葉を結びとして、今秋NBAの舞台で一段とチャレンジする姿を楽しみにしたい。

「いまジョーダンブランドの一員としてやっていて、日本で、素晴らしいストアでトークショーをやることができて、すごく嬉しいです。日本のバスケはいま微妙なところにいて自分も自覚している中で、日本のファンの皆さんや子どもたちが来てくれて僕の話を聞いてくださることによって、どれだけ僕が子どもたちにきっかけを与えたり、夢を与えたりできるか。大人の方にもモチベーションを持ってもらえると良いなと思います。僕がどういうふうにしてここまでやってきたのかを皆さんにシェアできたら良いなと思ってるので、どんどんやっていきたいと思っています。これからも応援よろしくお願いします」

八村塁が語る「覚悟」。 ジョーダンブランド旗艦店でトークショーが開催される

TEXT by Hiroyuki Ohashi
PHOTO by Nobuhiro Fukami

八村塁 Instagram

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