サプライチェーンのつながりを広げ、気候変動と戦うナイキの手法
現代の全ての企業において、環境を配慮しながらもビジネスを成長させる方法を見つけることは、目標の一つとなっています。これは、経済的な問題を考えるときに、「このプロセスは人間にとって、そして地球環境にとって良いことなのか?」というような大きくて深い問題を同時に考えなくてはいけないことを意味します。
責任ある調達および生産(Responsible Sourcing and Manufacturing)を担当するVPのマリン・グラハムは次のように述べています。「この問題に『イエス』と答えるためには、ナイキはサプライチェーンの中でも強固かつ信頼ができる関係を作らなくてはいけません。」グラハムはこのために重要なつながりを作り広げていく取り組みを進めており、現在ではナイキの中でも規模が大きなフットウェアおよびアパレルサプライヤーの10社のリーダーとともに、ナイキ サプライヤー 気候 アクション プログラム(SCAP)のリードに関わっています。このグループが作られたきっかけは、サプライヤーと短期的、段階的な目標を掲げても気候変動への影響を回避できるほど排出を削減できることはないということでした。SCAPはナイキの中でも大手のサプライヤーと協力し、サプライチェーンの脱炭素化のための長期的計画を練り、成長とサステナビリティを目標にビジネス戦略を抜本的に見直しています。
サプライチェーンの強化を進めつつ、サステナブルに仕事を進めていくためにナイキがパートナーと長期的な関係を構築していることについて、グラハムが説明します。
内側から始まるつながり
私たちのチームは「持続的な生産と調達(sustainable manufacturing and sourcing)」と呼ばれていましたが、最近その名前を「責任ある調達(responsible sourcing)」に変える決断をしました。小さな変化に見えますが、とても重大な意味を持ちます。これは広範なサプライチェーン全体でサステナブルな仕事を実践することが、人に対しても地球に対しても責任ある行為であると認めることだからです。そして私たちの仕事を正しい言葉を使って説明することも、自分たちやパートナーに対しても重要です。
緊急性の認識を高めるつながり
気候変動はもうすでに主要なサプライヤーの一部にも影響を与えています。これはもう仮説でも想像上の未来の中で起こる混乱でもありません。すでに現実の目に見える出来事になっており、共通の対策が必要とされています。私たちは洪水、干ばつ、電力不足や停電などの問題を考察した上で、サプライヤーとの協力で、対応力を高めビジネスを持続させる方法を作り出してきています。まず最初に、私たちは気候変動への直接的影響を理解するために、指標についてパートナーたちと話し合いをしています。この中には、企業全体での排出指標、科学的根拠のある削減目標の設定を行い、それらを公表するなどの活動も含みます。次に、パートナーと集まり、生産方法からエネルギー調達の変更に関しても、気候変動対応の経験や、どのようなソリューションが効果的であったかなどを共有する学習や話し合いの機会を設けています。
ポジティブな波及効果を起こすつながり
ナイキの規模を生かせば、独自の方法で気候変動に対抗することもできます。規模という言葉から私の頭に浮かぶのは、サプライヤーで働き日々ナイキの製品を作ってくれている、数十カ国、100万人を超える労働者や広範なサプライチェーンです。ナイキと協力する生産パートナーは、それ自体が大企業です。多くが上場企業であり、ナイキが多くの顧客のうちの一つである場合もよくあります。私たちは、それぞれのサプライヤーがサステナビリティに関する活動において、リーダーシップを発揮してほしいと望んでいます。それにより、私たちが炭素排出を抑えるために行う活動を考える時に強く思うことは、私たちがサプライヤーのビジネスのやり方を変えてもらうことにより、サプライヤーのナイキに関する部分のみならず会社全体にも変化をもたらすことです。
現状に挑戦するつながり
私たちはサプライヤーとの関係の中で、現在のプランよりももっと大胆な未来の実現に向けて力を借りたいと望んでいます。その未来に向けたビジョンの中では、カーボンニュートラルと資源循環の実現を目標にしています。私たちは供給パートナーと一緒に大胆な計画を実行すること、そしてそれがサステナビリティに関するゴールとして業界トップに立つことができると信じています。未来の定めた時期までに達成することよりも、目標への道のりを歩むことと、その道のりに向かって懸命に努力をすることが大事だと考えます。