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  • 2023.08.14

佐々木クリスのQuai 54体験記 -後編-

The Biggest Tournament from Streetball to the World

7月1日土曜日は翌日曜日の準決勝進出チームを決める戦いに加えて、Jordan Brandのスーパースター、ルカ・ドンチッチ、ジェイソン・テイタム、ザイオン・ウィリアムソンと新たにファミリーに加わったギャビー・ウィリアムズが審査員席に座るという豪華絢爛なダンクコンテストが行われた。ザイオンが引き立て役としてコートに立ち、世界的なダンカーPiotr Graboがザイオンを飛び越える一幕がハイライト。さらに2022年NBA JAPAN GAMES サタデーナイトに登場してくれたTyler Currieも難易度の高いダンクを連発して観客は総立ち。プロのダンカーたちの矜恃は確実にパリをロックしていた。

7月2日日曜日のメインは男女ファイナル4。男女決勝は華やかなダンスパフォーマンスから幕を開け、さきほどパフォーマンスを見せたばかりのダンサーと選手が一緒にセンターサークルで踊りを披露する選手紹介はめちゃくちゃ楽しかった。「なんでみんなこんなに踊れるの?」ってくらい陽気なスタイルで、会場から歓声が湧いていた。メインイベントに近づくにつれ、さながら祭りのようにフードエリアの列も長くなった。客席で食べるパイナップルの実だけを切り抜いて皮の部分にカットフルーツを盛りつけたデザートは見た目にも爽やかで夏空に映える。隣には女子の決勝を観に来たのか15、16歳くらいの少女が一人で座り、後ろにも仲間連れのキッズたちがお菓子を食べながら観戦。小学生、中学生位と思われるキッズたちの多さに、このQuai 54というプレイグラウンドがロールモデルや目標の一つともなっているのが分かり感激した。

©Jordan Brand

そんなQuai 54の肝心のプレースタイルは、普段からNBAや国際大会など見続けている僕としてもレベルの高さが感じられたし、ピック&ロールの連携なども非常にダイナミックだった。それもそのはず、男子トーナメントで7度の優勝を果たしているフランスの強豪チームLa Fusionにはフランス代表のグーション・ヤブセレもメンバーの一人としてコートに立ち、非凡なセンスとバスケ IQを披露していた。会場で出会った自分と同じく今回が初のQuai54観戦だというアメリカのメディアの方は「やっぱりガードのボールハンドリング、プレーの華やかさはニューヨークが上だな」と指摘していたが、Quai54のゲーム内容が色褪せて見えることは決してなかった。男子は史上初アフリカを代表する3チームが準決勝に進出。なんとNBAとFIBAが共同で運営するBasketball Africa League(BAL) セレクトチームまで出場していたから驚きだ。

©Jordan Brand

今も夢と機会を与え続けるマイケル・ジョーダンという存在

そんなBALセレクトチームですらQuai 54では準決勝で敗退。改めてトーナメントのレベルの高さが伺えたことは言うまでもないが、BALセレクトチームに逆転勝利を収め、決勝に進出したエリート コンゴでプレーする若干二十歳のマルコに会場で少しだけ話を聞くこともできた。マルコは決して得意ではない英語で「普段はドイツでプレーしていて、今回が初出場。ここは世界で最高のストリートボールイベントさ。元NBAプレーヤーを含む大物選手も出場する大会。出場できて光栄」と思いを笑顔で届けてくれた。他にも3人ほどインタビューを試みたが、みな親切な笑顔ではあったが英語が苦手という理由でカメラの前にはなかなか立ってはくれなかった。それでもマルコは付け加えた。「Jordan Brandのようなビッグブランドが、バスケットボール、ストリートボールを通じでHood(経済的に恵まれない地域)の人々を後押ししてくれるのは善いことだと思う。小さくて貧しいコミュニティから来ていても人々を結びつけ、ハピネスを与えてくれる」とコミュニティに対するJordan Brandの貢献についても非常に好意的に語ってくれたのが印象的だった。

既に書いた通りQuai 54はパリの名だたるランドマークと隣り合わせの好立地で毎年、よりパワフルに世界へとメッセージを発信している。2003年の初開催からJordan Brandがサポートを始める2006年まで時間は掛からなかったが、関係者に聞くとさらに大きな分岐点となったのはどうやら2014年。かのマイケル・ジョーダン自身が会場を訪れ、そこから行政のバックアップも加速したそうだ。するとQuai 54の開催場所も自ずと、より多くの人々の目に留まる場所へと移っていく事になる。どんなにバスケのレベルが上がり、盛り上がっていても、行政からの後押しがないと、やはりこれだけの規模で開催することはできないはず。この環境は世界中でも比類なきものだろう。東京渋谷区の代々木公園で行われているALLDAYトーナメントなども素晴らしいロケーションではあるが、東京タワーの真下、芝公園に準備した特設コートで2日間合計1万人を集める難しさを思うとQuai 54は計り知れない成功だ。

2003年に引退してはや20年が経とうとしている。現役のキャリアで見せてきた数々のクラッチショットと同様に、マイケル・ジョーダン本人がパリの街を訪れて大会に顔を見せることで、彼はまたゲームウィナーとなった。バスケットボールに音楽、そしてカルチャーが織りなす特別なトーナメント Quai 54は唯一無二の存在としてこれからもその名前を世界に轟かせることだろう。これからも未来の有望なバスケットボール選手がここから新たに羽ばたいていくのだ。



佐々木クリスのQUAI 54体験記 -後編-

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