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  • 2023.03.23

Future Bound Classic 2023 Report

「Future Bound Classic」は、卒業を間近に控えた高校3年生が、気の置けない”地元”の旧友たちと一日限りのチームを組み、トーナメント戦を戦うイベントだ。

7回目の開催を数える今回は、東京、埼玉、千葉、神奈川、山梨、大阪、広島、福岡から高校生たちが集結。昨年の無観客開催から一転し、商業施設のオープンスペースで開催された今年は、轟流維、城戸賢心ら福岡第一高の主力を中心に構成されたTEAM FUKUOKAが優勝し、城戸がMVPを獲得した。

筆者はこのイベントを毎年とても楽しみにしている。FBCに集った選手たちは、高校バスケの試合会場では見られないものをたくさん見せてくれるからだ。

アイソレーションから1対1を繰り返したり、トリックプレーを披露したり、観客を煽ったり……。「高校バスケ」という枠や「監督」「チームルール」といった枷を外した彼らは、自分らしいやり方で自己を表現し、全身から「バスケが楽しい」という思いをほとばしらせる。

今年の高校3年生は、コロナ禍によって大会やイベントの中止、無観客試合などを当たり前に受け入れてきた世代。日本バスケ界屈指の注目を集めるはずの高校バスケで、他者の目を浴びる機会をあまり得てこなかった上に、今回のプレーグラウンドは体育館ではなく様々な人の目を集めるオープンスペース。緊張、戸惑い、照れなどを感じさせる選手が例年以上に多い印象を受けた。

FBCオーガナイザーのBANG LEEは「イベント前のブリーフィングで『ファールと怪我以外は何をしても良いけれど、自分のプレイに責任を持って挑戦して欲しい』って煽ったんですけどね」と言い、続けた。

「今日出場した選手の多くはプロを目指してると思うけれど、プロになるならいろんな人に『面白い』って思わせて、ファンをつけるスキルはすごい大切だと思う。親とか仲間とか、地元の人が応援してくれるのは当たり前。それ以外の人や、一見さんに面白いと思ってもらうにはどうすればいい? みたいなことを考えるきっかけとして、この場を使ってもらえていたらいいなと思います」

もちろん、自分らしさを発揮できた選手もいる。全国大会未出場の無名ながら、勝負強い1対1や3ポイントシュートを何度も成功させ、この日もっとも強烈なインパクトを与えたTEAM TOKYOの石川裕大(帝京高)や、何度も自らの1対1を要求し、観客を煽るパフォーマンスを見せたTEAM OSAKAの小田晟(中部大第一高)。BANG LEEは「高校でやっていなかったプレーに積極的に挑戦していた」と、TEAM FUKUOKAのムスタファ・ンバァイ(福岡第一高)の名前も挙げた。

BANG LEEは「誰にでもDAY1はある」と言った。大学での4年間、そしてその先を見据えている彼らのバスケットボールジャーニーはまだ始まったばかり。この日、選手たちが出会った小さな種が、いつか大きな花を咲かせる日を楽しみにしたい。

城戸賢心(TEAM FUKUOKA/福岡第一高→早稲田大)
3年間一緒にやってきた仲間と、最後にプレーする場所をもらって楽しい一日になりました。こういうイベントに出るのは初めてですけど、すごく楽しかったですし、「やられたらやり返す」という強い気持ちを持って戦わないと上のステージでは通用しないのかなと考えさせられました。MVPはムスタファ(・ンバァイ、福岡第一高)だと思ってたので驚きました。おいしいところをもらった感じです(笑)。

轟流維(TEAM FUKUOKA/福岡第一高→東海大)
最初はシュートが入らなくってどうしようって感じだったんですけど、最後のほうは入ったのでよかったです(笑)。ストリートっぽいイベントは映像ではちょこちょこ見てたけれど、実際に出るのは初めて。TEAM SAITAMAとの試合で、大学でチームメイトになるルーニー慧(正智深谷高)と中川知定真(東海大付属諏訪高)と対戦できたのが楽しかったです。

石川裕大(TEAM TOKYO/帝京高→留学予定)
自分は全国大会に出られなかったので、このイベントで全国のうまい人たちとプレーできるのが本当に楽しみでした。特に、決勝で轟くんとマッチアップできたのはうれしかったですし、めちゃくちゃうまかったです。いろんな人に「ストリートバスケが好きなの?」って言われたんですけど、実はやったことも見たことも全然なくて、とにかく小さいときからNBAを見ていたくらい。今回みたいなイベントに出るのも初めてだったんですけど、そこでしっかり自分のプレーを見せられたことは自信にしたいです。

坂本康成(TEAM TOKYO/中部大第一高→筑波大)
ストリートバスケを経験するのは今日が初めて。いつもと環境が違ってやりにくさやプレッシャーも感じましたが、楽しかったし、すごくいい経験になりました。一試合目ではチームメイトの晟(小田晟)とマッチアップしました。晟が部活とは違う感じで、すごく楽しそうにやってたので、なんというか…複雑な気持ちになりました(笑)。また機会があったらこういうイベントに出て、今日できなかったストリートっぽいプレーとか、煽り合いみたいなことをやってみたいです。

小澤飛悠(TEAM YAMANASHI/中部大第一高→日本体育大)
ストリートバスケはあまり見たことがなかったけれど、TSC(TOKYO STREETBALL CLASSIC=ストリートバスケ選手と大学バスケ選手のエキシビジョンマッチ)を見ておもしろそうだなと思ったので、今日はわくわくしました。チームのメンバーは、山梨のジュニアオールスターで一緒にやったメンバー。僕は高校で山梨を離れたので、久しぶりにみんなで集まれて本当に楽しかったです。

小田晟(TEAM OSAKA/中部大第一高→大東文化大)
中3のときにSOMECITYのエキシビジョンに出させてもらって以来、ストリートバスケが大好きで、FBCもずっと出たいと思っていたので、誘ってもらったときは「やった!」って思いました。康成とマッチアップしたときは「やったるで!」ってめっちゃ気合が入ってたんですけど、思ったより仕掛けてこなかったですね。たぶん僕にちょっとビビってたんだと思います(笑)。こういうイベントは自分の力を試す場所だと思ってるので、本当に思い切りプレーさせてもらいました。会場の盛り上がりも含めて本当に楽しかったです。

中川知定真(TEAM SAITAMA/東海大付属諏訪高→東海大)
こないだのTSCに出たくらいで、ストリートバスケの経験はないんですけど、率直に楽しかったです。そして、オフの期間に、観客と一緒に会場の雰囲気を作り、観客を楽しませるバスケを経験できたのが、すごくよかったと思います。ストリートで大切にされている「観客を巻き込む姿勢」って、たぶん、学生バスケでもそんなに変わらないと思うんです。ストリートは魅せるプレーで、学生バスケはルーズボールやリバウンドのバチバチの争いで、みたいに。ストリートで学んだことを生かしながら、大学でも観客を巻き込めるようなプレーをしつつ、チームの勝利のためにがんばりたいです。

Future Bound Classic 2023 Report

TEXT by Miho Awokie

https://futureboundclassic.com/

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