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  • 2021.04.23

ジョーダンからシグネチャーを授けられたZ世代の怪物

リムから7.24m離れた3Pラインから放つショットがもつ戦略的な重要性が増し、1試合のうち半分近くのショットが3Pであることも珍しくなくなった現代のバスケットボール。そんな潮流の中、バスケットを強襲することのスリリングさと、その戦略的意義を再認識させてくれる選手がNBAを席巻している。それが、リム周りで過去最高レベルの支配力を発揮しているリーグ2年目、ザイオン・ウィリアムソンだ。

2019年ドラフト全体1位、鳴り物入りでニューオリーンズ・ペリカンズに加入。1年間しか在籍しなかったデューク大時代もザイオンのことを知らないNBAファンは皆無に等しく、SNSにYouTube、検索すれば出てくる彼のスラムダンクの数々。ここ数十年に1人の逸材だと評されていたザイオンは、ルーキーイヤーこそ怪我でプレーが制限され新人王を逃したが、2シーズン目の今季はすでにオールスターに選出。若干20歳でありながら、今まさにNBAの歴史を塗り替えようとしている。4月20日時点で記録している"平均26.8ppg FG成功率62%"をこのまま維持してシーズンを終えると平均26点以上達成と共に60%以上の成功率を残す史上初の選手となるのだ。

そんな数字を裏付けるように、リムを強襲するアビリティーは怪物級のアスリートが凌ぎを削るNBAにあっても突出しており、今シーズンに放った全873本のショットのうち、実に 739本がリムから半径1.5m以内。このエリアでのショット本数に関しては、次に多い過去2シーズンのリーグMVPプレーヤー、ミルウォーキー・バックスのヤニス・アデトクンボに300本近く差をつけていて、名実ともに"リム周りの覇者"であることは明確だ。

左利きのザイオンだが、ドライブを右から仕掛けても信じられない躍動感で空中に飛び上がり、長い滞空時間の間にディフェンダーをやり過ごすとボールを左手に持ち替えて結局ショットを決めてみせる。まるでマイケル・ジョーダンを彷彿とさせるような空中での所作でありながら体重は129kg… コート上で対峙する同じNBA選手ですらザイオンの規格外なサイズと運動能力の掛け合わせを理解しきれないという。大学での跳躍力測定で114cmを叩き出したザイオンが地面を踏み切るトルクは、もはやアニメのスーパーヒーロー並み。まさに、分かっていても止められない存在なのだ。

しかし、これまでも秀でた体格と跳躍力から"空飛ぶ冷蔵庫"や"スーパーマン"と形容されてきた支配的な選手たちが存在した。それでも、無限の可能性を秘めたZ世代を象徴するザイオンはその誰とも似ていると言いいきれない似て非なる者だ。なぜなら、ザイオンは比類無き肉体と運動能力を持ちながら一流ガードのようにディフェンスを切り裂き、翻弄するドリブルさばきとパス能力まで持ち合わせているからだ。世界最高峰のアスリートが集まるNBAにあっても前例がみつからない。もはや彼のプレー振りは人類という枠に収まり切らず、スペースジャムさながら宇宙規模のプレーを観ているようだ。

そんなザイオンだが、今シーズンさらなる進化を遂げている。それはペリカンズのゲームを見れば一目瞭然。なんと彼がこなすチーム内での役割はバスケットの近くでボールを受けるセンターやパワーフォワードではなく、試合を組み立てる"ポイントガード"に移っているのだ。人呼んで"ポイントザイオン"。

これまで完全無欠のオールラウンダーの象徴=レブロン・ジェームズが"ポイントフォワード"と表現されてきたが、唯一無二の存在に既存の表現は似つかわしくない。パスセンスに溢れバスケIQも高いザイオンは、元々ガードだった少年時代から培ってきたドリブルスキルを遺憾なく発揮。シーズンの経過とともに確実にオンリーワンへと変貌を遂げている。

そしてザイオンがまたひとつ新たな扉を開ける。1985年以来バスケットボール界の変革と最高峰の象徴となってきたジョーダン ブランドから自身初のシグネチャーシューズが、アパレルラインと共に4月23日、世界に発信されるのだ。

ジョーダン 3の履き心地をこの上なく好むザイオンの意向で、シュータンからすべての製作が始まったというザイオン 1。内側の縫い目を極力減らすことで靴紐を結んだ時の快適性に加えて、あたかもスポーツカーのコクピットに収まるかのようなフィット感も同時に可能にした機能性。はるか上空まで飛び上がった後の着地をしっかりとカバーする高いクッショニングと反発力をズームエアとマックスエアーで実現。それでいて規格外ポイントガードの俊敏性を損なわない作りは、ザイオンに憧れを抱く全てのプレーヤーのニーズを満たすだろう。

ザイオンが好むアニメのインスピレーションも落とし込み、象徴的に目に飛び込む大きな"Z"(ジー)。NBAまでの旅路を忘れないザイオンらしく家族や、中学、高校、大学や出身地へのオマージュも刻まれたデザインは彼の物語を体現しており、まさにジョーダン ブランド初のZ世代アスリートのシグネチャーモデルに相応しい。

NBAとジョーダン ブランドが新世代との橋渡しと期待を寄せるザイオンが、シグネチャーラインを携えて前人未到の道を切り拓くだろう。Zig Zag(ジグザグ)にディフェンスをなぎ倒しながら。

ジョーダンからシグネチャーを授けられたZ世代の怪物

TEXT by Chris Sasaki

JORDAN BRAND
Zion Williamson

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