FIBA 3×3 Asia Cup 2022 Report vol.1 ……アジアNo.1を目指す戦いがはじまる
タフな状況を乗り越えた男子代表
6月末から7月初めにかけて日本では最高気温35℃を越える猛暑日が9日間も続き、うだるような暑さに辛さを覚えたが、ここシンガポールの気候もなかなかの体感だ。気温こそ30度前後で済むが、湿度は80%を越える。汗が肌にまとわりつくようなじとっとした感じ。聞いてはいたが、慣れないとうっと……と声が出そうになった。
そんな東南アジアの国で、3×3のアジアNo.1を決める「FIBA 3×3 Asia Cup 2022」が7月6日よりはじまった。開催場所は同国のランドマークであるマリーナベイサンズ。出場国は歴代最多、男女合わせて53チームに及ぶ。3×3男女日本代表も出場をするが、今大会は参加希望チームが12チームを越えたため、本戦予選ラウンド参加のための予備予選を実施。女子は8日(金)からスタートする本戦へシードされたものの、男子は予備予選へ回るため、大会開幕日が初戦となった。
結果を先に触れると、男子は見事に2連勝を飾り、本戦予選ラウンド出場を決めた。初戦のマレーシアを21-10で圧倒し、続くイラクにも21-13で快勝。2戦連続のKO劇だった。
ただ、ここに至るまでに、男子代表は様々な出来事があった。出発前日の4日には急遽メンバーを変更へ。当初はYOSKこと齊藤洋介(UTSUNOMIYA BREX.EXE)がエントリー予定だったが、シンガポール渡航前に実施したPCR検査でYOSKに新型コロナウイルスの陽性反応が認められたため派遣を中止。日本バスケットボール協会は、予備登録されていた小松昌弘(#70)を急遽追加招集した。そして5日に日本から約6時間のフライトで移動し、夜のシューティングはできなかった。
さらに、コートに立てば冒頭の高音多湿な環境に晒され、マレーシア戦とイラク戦の試合間隔は実に約9時間も空いた。これだけの間延びするスケジュールに選手たちは少し難しさを口にしたが、落合知也(#91)、保岡龍斗(#23)、佐土原遼(#0)、小松の4人は、YOSKをはじめ多くの人々の思いを背負い、タフな状況にアジャスト。ディフェンスにフォーカスしてゲームに入り、主導権を握った。特に相手の2ポイントを許さないよう、状況に応じてスイッチを多用するなど、4連敗したワールドカップで目立ったミスを修正した姿がうかがえた。
「メダルを取るために必要な技術」保岡の一発
一方で、オフェンスに注目すると、2ポイントをチームで13本も決め切った。落合によれば、相手のディフェンスを見て2ポイントを打っていくことがゲームプランだったそうだ。「ワールドカップと違い2ポイントをたくさん打てるシチュエーションがあるので、思い切って全員で打っていこうと考えていました。このチームは全員シュートが上手いので武器にしたい」と話す。
そんな中、際立ったのが保岡だ。チーム成功13本のうち8本をメイク。先のワールドカップでは4戦で22本中3本しか決められなかっただけに、今大会に期するものがあった。彼は予備予選後、こう語った。
「東京オリンピックでは(2ポイントを)42%の確率で打つことができて、自信になりましたが、当時(の僕は3×3シーンで)は無名でした。だから、たぶん相手もスカウティングをしてない状態だったため、簡単に打てたのではないかと思っています。ただ、自分がオリンピックである程度の結果を残せたことで、ワールドカップでは相手のスカウティングや、プレッシャーも強かったです。やっぱりあのレベルで40%をコンスタントに決めなければいけない。日本がオリンピックなど国際大会でメダルを取るために必要な技術だと思っていますので、まずはしっかりとアジアで結果を残していきたいです」
本日8日からの本戦予選ラウンドでは、相手のレベルも一段と上がることが予想される。ワールドカップでぶち当たった壁を真の意味で乗り越えるためにも、そんなシチュエーションで保岡龍斗が持ち味を発揮する姿が望まれる。もちろん当の本人も「そこが課題であり使命」と、自分に言い聞かせる。1対1に強いディフェンス、ピック&ロールのユーザーとしてオフェンスをクリエイトするなど、彼がチームに貢献できる武器は多い。しかし、チームを勢いづかせ、ノックアウトトーナメント進出へ日本代表を導く一発を今日“も”決め切る結果が、彼に確かな自信をもたらすはずだ。
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TEXT by Hiroyuki Ohashi