3×3 U18を経てトップレベルに挑戦中、ALBORADAが感じる成長と醍醐味
日本の3×3シーンの主役たちはいま、30歳を超える競技の先駆者たち。しかしその一方で、10代後半から競技に取り組み、3×3 U18日本選手権で優勝を経験した若き力も出てきた。誰もが認める結果こそまだ伴っていないが、選手としてチームとして成長を実感し、その醍醐味を彼らは知っている。
U18からカテゴリーを上げて
茨城県つくば市を拠点に小中高生の育成に力を入れるバスケットボールのクラブチームがある。名前はALBORADA(アルボラーダ)。“夜明け”を意味するスペイン語で、日本のバスケットボールに変革をもたらす、という意志を込めている。2016年の3×3.EXE PREMIER参入をきっかけに、国内シーンで着実に成長を遂げて、2020シーズンのロスターにはユース出身者が名を連ねる。10代から競技に取り組み、3×3 U18日本選手権の第2回大会(2016年3月)で3位、第4回大会(2017年12月)で4位、第3回大会(2017年3月)では優勝を飾った。そして3人制の国内トップランカーやBリーガーが居並ぶオープンカテゴリーへ挑戦のステージを上げて、彼らは楽しみなチームへ仕上がりつつある。
代表を務める中祖嘉人氏は「これまで5人制の地域リーグ参戦と、3×3の活動を同時平行で取り組みましたが、チーム編成やコンディショニングが大変でした。そのため、いまは3×3に集中しています」と内情を明かして、こう続けた。「選手たちとは小中学生の頃から一緒にやっています。だから、今後のキャリアを考えて、しっかりと育てたい気持ちがあります」。今シーズンの開幕以降、石渡優成(#24)、山本陸(#19)、#小澤崚(#13)、改田拓哉(#30)の4名で大会を転戦している。
アルボと出会えて「本当に良かった」
このように親心を持って中祖氏が接する選手たちのキャリアは興味深い。今回取り上げるのは、2017年3月の3×3 U18日本選手権の優勝メンバーである小澤崚と、そのMVPホルダーである改田拓哉。22歳の小澤は小学6年生で初めて中祖氏に出会うと、中高時代は部活に所属しながらも、ALBORADAのJr.ユースやユースチームの練習に参加した。現在は大学を一時休学してバスケに打ち込む。21歳の改田も小学5年生で練習会に参加して中学1年生からJr.ユースチームへ。「高校は進学したのですが、合わずに中退してアルボに来ました。そこから一筋でやっています」と生い立ちを明かしてくれた。「高校を辞めたことは今に思えば、自分が子どもだったと思います」と振り返るが、改めてバスケができる環境に巡り会えて「本当に良かった」と話す。
彼らがプレーヤーとして掲げている目標はそろって「プロ」になること。Bリーガーである。そういった意味で、ここでプレーすることはいつやって来るかわからないチャンスに向けて準備をする場であり、さらには気持ちをも奮い立たせる。「戦ったことのある選手がプロで活躍していると刺激になります(小澤)」、「やっぱり僕もBリーグの舞台に立ちたい気持ちになります(改田)」と、大きなモチベーションになっている。また2人が一緒にプレーしていた元ALBORADAの大友隆太郎は、現在、Bリーグ1部の滋賀レイクスターズの練習生。その姿について、「本当に頑張って欲しいです。3×3出身の選手として、本契約を勝ち取ってもらいたいです(改田)」と、後輩としてのエールも。実現されれば、彼らにとって道しるべになる。
3×3で彼らが成長を実感できたこと
では、3×3のオープンカテゴリーを戦う小澤と改田にとって、手応えはどのようなに感じているのだろうか。ここは実力を推し量る上でも格好の機会だ。小澤は「3×3の経験は大人と変わらないと思いますが、メンタルはまだ差があると感じます」としながら、こうも語った。「ユース時代は緊張して試合の入りに浮足立つこともありましたが、いまは割と少なくなってきました」。場数を踏むことで、動じなくなってきたと実感を持つ。さらにコロナ禍で思うような活動ができなかった期間を利用してフィジカルを鍛えた。「体が強くなったので、もう“いまのファウルでしょう”と思うことは少なくなりました」と、ひと回りタフになった。
また改田も次のように手応えを感じる。「僕は比較的早い段階から大人とプレーする機会がありました。昔はシュートが入るかどうかしか見ていなくて、結局は勝つことができなかった。でもフィジカルやディフェンスを鍛えて、だいぶ成長することができてました。やっと同じ土俵で戦えてきたという印象があります」。そしてゲームを進める上でも、ユース時代の「自分が1対1で点を取れば勝ててしまう、特に考えないバスケ」から、いまでは「頭を使って、簡単に点を取る」ように状況判断をしながら、バスケと向き合えるようになった。
中祖氏も3×3で成長した彼らをこう表現する。「一番変わったことは、自分で考える力とメンタリティー。そうなるようコーチングもしていますが、そこは変わったと思います」。ルール上、試合中は監督の指示を仰ぐことができないし、どんなに苦しくても自分たちだけで、ゲームを最後までやりきらなといけない。個々が考え、仲間と会話をしながら、コートで試して上手くいかなければ、また考える。3×3は選手を育てる「抜群の教材」となった。
今シーズン、彼らを大会で3度見たが、昨シーズンに比べれば、持ち味であるドライブとシュート力をゲームで最大限に発揮する姿、そして拮抗した展開や劣勢の局面でも焦らない様子がうかがえる。特に準Vに終わったがJAPAN TOUR 2020 EXTREME Round.1での戦いは印象的だった。当の本人たちは、「まだまだ勝負弱いです…(改田)」、「リードをしたときに気が緩んでしまう…(小澤)」と、課題が尽きないことも口にするが、できないことは伸びしろ。楽しみな存在であることは間違いない。
次世代へ伝えるならば、3×3の醍醐味
日本の3×3シーンの主役たちはいま、30歳を超える競技の先駆者たちだ。海外経験も豊富で頼もしい選手ばかり。ただ、将来の競技レベルや盛り上がりといった一層の発展を願えば、次世代の台頭は必要不可欠。2人ともプロになる目標はもちろんのこと、「MastersやChallengerに出ていきたい」と、ALBORADAとして3×3の高みに行く姿も描いている。
そして彼らが結果を出すことができれば、さらに下の世代が3人制に目を向けるきっかけにもなるだろう。特別に背が大きいわけでもなければ、身体能力がズバ抜けているわけでもない。だが正しい努力を重ねることで、第一線で対等に渡り合える。2人は競技の醍醐味を次のように感じている。
「3×3の知識を持つことができれば、5対5と比べて自分たちより相手が強くても戦える局面があります。そこで自分のプレーを出せたり、もしかたしら“勝てる”という感覚や、楽しさを感じとってもらえると良いですね。ルールや戦術を吸収して、ゲーム展開を考える癖をつければ、けっこう戦えるようになると思います(小澤)」
「5対5は実力差が出てしまいますが、3人制は21点または10分で終わるので、番狂わせを起こしやすいことが魅力です。1対1勝負と思われがちですが、戦術も細かい。5対5の場面をちょっと簡単にした感じです。小中学校で戦術をやるにしても、その場面でなにが起こっているか、よく理解できないこともあるでしょう。3×3はコートに6人しかいないので、状況も把握しやすい。5対5の感覚をつかむきっかけにもなると思います(改田)
ユースからオープンへ。3×3のステップを着実に上がるALBORADAの飛躍とその先にある結果を期待するとともに、同世代、さらには次世代がトライしてくる光景を待ち望みたい。どんなキャリアを持っていても、チャレンジこそが自らの成長を大きく後押ししてくれる。
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TEXT by Hiroyuki Ohashi