共創の先にあるストリートボール。TOKYO STREETBALL CLASSICを終えてballaholicのTANAが語ったこと

大学生vsストリートのスペシャルゲームとして2016年にはじまった「TOKYO STREETBALL CLASSIC」が、今年2月の開催で10回目を数えた。節目の大会に立ったボーラーや大学生は、何を思ったのか。そしてballaholicディレクターのTANAからは、先行販売を迎えたアシックスとのコラボレーションモデル・UNPRE ARS LOW 3 -STREETMOVE Vol.0-を起点に、ストリートボールのこれからも明かされた。キーワードは共創である。(取材日:2026年2月11日)



TSCに対して。10年前を知るKK、初の村田桂次郎は…
2016年1月に日本体育大学で初開催された「TOKYO STREETBALL CLASSIC」(以下TSC)。大学バスケの魅力を発信するCSParkと、ストリートボールブランドのballaholicがタッグを組んで、大学生vsストリートによる1日限りのスペシャルゲームとして、はじまった。大学生だった岡本飛竜(現島根スサノオマジック)が会場をどよめかせた1on1は、今も名場面のひとつである。
そんなTSCは、ことし丸10年を迎えた。2022年より場所を大田区総合体育館へ移し、2025年より2DAYS開催に。10回目の今回は2月10日、11日の2日間にわたって賑わった。

とりわけメインゲームに注目すると、78-70でストリートに軍配が上がる。大学生は3クォーターまでリードしていたが、最後の10分でまくられる結果に。コートに立った村田桂次郎(日本大学/182cm)は試合後、悔しそうだった。想像以上の雰囲気に緊張もあって「全然うまくいかなかった」と明かす。DAY1ではNAOKIとの1on1に敗れて「寝れなかった」とも話す。意気込んだDAY2も、結果以上に自分を表現できなかった。1対1の場面で「やられた後にやり返すところで、一番盛り上がるところで決めきれなかったのが悔しかった」と振り返った。

一方で、ストリートは4クォーターにKKが際立った。オルワペルミ・ジェラマイア(天理大学/200cm)の上から3ポイントを射抜くなど、持ち前の勝負強い1on1でボールを持てば何かやってくれるだろうと、ワクワクさせられた。10年前を知るKKも、いまやストリートシーンを代表するボーラーに。TSCに対して「(大学生にとっては)ストリートで新しい発見も絶対にあると思う。そこで(ボーラーとマッチアップして)相互作用で何かできたらめちゃめちゃ良いなと思います」と語り、今後に向けても彼らしくコメント。「勝ち負けも大事ですけど、自分はどれだけ見に来てくれてる人を魅了できるかにフォーカスしてるので、今後も続けていきたい」と誓った。


TANAが感じた節目のゲーム…「あと一段も二段も」
そして、メインゲームを終えてballaholicディレクターのTANAへインタビューに向かった。TSCの振り返りを皮切りに、アシックスとのコラボレーションモデルの開発背景から、ストリートボールシーンでのあり方まで余すところなくうかがった。

―― 10回目のTSCが、無事に終わりました。お客さんもたくさん入ってましたね。
そうですね。もちろん、それはシューズの先行販売によるものもあるだろうし、ただ今回のシューズのコンセプトにも関係する話になるんですけど、Bリーグも盛り上がりを見せてきて、世界的にも育成がすごい状況になってきているじゃないですか。

そうなったときにストリートでやる意味、ストリートの存在意義、そういった見る人も含めて、ここ数年僕らも苦しみがありました。昔はストリートの世界、わかりやすく言うと、ストリートならではのクリエイティブなドリブルとか、歴史をたどるとクロスオーバーやシャムゴットもストリートで生まれたわけですよ。
でも、スキルが進化してみんなが当たり前にできる状況になってきたとき、ここでストリートが持つ魅力は何なのか。そこを僕らが作らないといけない。あのドリブルをつきたいと思わせるプレーがストリートにあふれているのが理想です。そういう初期衝動を行動へすぐに移せるのがストリートだと思うし、そういう感情を奮い立たせるものをもっとストリートで作り出したいという思いがあります。
だから、今日で言えば本当はもっとあと一段も二段も、鳥肌が立つような空間をイメージしていました。ところどころで “わっ!”という声が起きましたけど、あれがもっと起きても良かったし、もっとエネルギッシュな表現があっても良かったかなと思っています。

―― 試合は、最後にストリートがまくった展開にはなりましたね。
ゲームは勝敗があるからストーリーが生まれるじゃないですか。でも、僕はそれ以上の価値をどう生み出すか。子どもたちがあれだけ見ている中で、たったワンプレーでオレもあんなプレーをしたいと言って、人生が変わる可能性だってあると思います。今回のTEAM CSParkの中には、大学であまり試合へ出てない子もいたりするんですよ。絶対にプレーは面白いのに。
だから、そんな子たちはこの機会で開花して欲しいし、CSParkもその思いを持って、好きに表現していいんだよと言う。ストリート側も引っ張ってあげなきゃいけないと思うんです。
試合で熱狂は生まれるけど、それをさらに凌駕するようなプレーがもっと生まれれば、すごいことになるだろうと思います。これは、ballaholicが目指している世界ではありますね。

―― 日本大学の村田選手は「一番盛り上がるところで決めきれなかったのが悔しかった」と言ってましたよ。「リベンジできる機会があったらしたい」とも。
村田くんは國學院大學久我山高校の出身で、特別指定選手で青森ワッツも経験し、いまは日本大学ですけど、大学だとあまり試合に出られていないと聞いています。だから、注目していたんです。彼の雰囲気ですかね。内面は今日に懸けていたものがある気がして。彼がワンプレーでも自分のイメージを超えるようなものが生まれたときに、自分のバスケが変わってくるんじゃないかと期待していました。
もちろん今日、彼はうまくいってないけど、勝ち負けより表現できたかどうかで悔しがっているのはすごく嬉しいです。結局、自分が何でバスケをしているのか。この悔しさを糧にまた練習から情熱を燃やして、活躍してほしいですね。


根本から問い直したコラボシューズのコンセプト
――でも本当、TSCはストリートと学生が交錯する大会ですよね。今年はアシックスとのコラボレーションシューズのお披露目の場になりました。TANAさんとしても大事な大会だと思います。
TOKYO STREETBALL CLASSICは、ストリートボーラーたちの最高峰の舞台を作ろうと思ったのが、誕生のきっかけでした。(岡本)飛竜や馬場(雄大)くんなど当時の大学生たちも共鳴して、面白いぞと思ってくれて。毎年ね、TSCに向けて僕らも一大イベントになって、販売もやって。いま会場は大変な状況だと思います…(笑)。
でも、僕らアウトナンバーの心掛けとして予測できることに収めるよりも、チャレンジできる余白がある方が面白いことが生まれると考えています。毎回、フルパワーを注いでいるんですよ。

――今回のコラボシューズも、フルパワーをつぎ込んだと思います。初めて素材選定から携わったそうですね。
これまではアシックスさんから提案いただいたモデルを、コラボシューズとして仕様をすり合わせながら作っていました。
でも、僕らの目標はゼロからシューズを出すことで、今回はそれに対して一歩踏み出せました。アシックスさんの中で開発途中のインラインを見せてくれたので、僕らが開発できる部分が大きかったんです。なのでいろいろとご無理も伝えて、アッパーの素材と形状はUNPRE ARS LOW 3と全然違うんですよ。

――見た目から違うなと、まず思いました!
シューズサイドにあるアシックスロゴも透明なパーツで半分を覆う技術が大変と聞いています。インラインと並べて、見た目が違うシューズをアシックスさんと一緒に作れたことが、大きな収穫です。履いたときのフィット感やグリップの調整もしていますし、エナメル素材も使いました。
カラーリングは2色で、ブラックは僕らも作ったことがなかったし、理想は街履きもできて、プレーグラウンドに行ったら紐を結んでプレーして、そのまま帰れるシューズです。リフレクターラインも大胆に入れています。もう一色は落ち着いたカラーの中に、初期衝動の要素を入れたくて、シューズの内側だけにイエローのグラデーションを入れました。

――改めて、シューズのコンセプトにはどんな思いを込めたのでしょうか。
僕らがゼロから作りたいシューズってなんだ?という根本的なところから考えました。最初の話に戻るんですけど、バスケットボールやりてえってなったときに、やれる場がストリートだとしたら、僕らがストリートの世界をどう面白くしていくか。それはストリートで見た動きを真似したい。みんな最初はそうだと思うんですよ。その世界をストリートが作っていくことで、彼らがバスケ人生でいろんな土俵でチャレンジすることに繋がると思うんです。
まずは「あんなプレーをしたい!」という世界を僕らが作っていくことに意味があるという思いから、今回「STREETMOVE」というテーマで、シューズを設計しました。

そのグラフィックも新たに作ったんですよ。「STREET」の文字の中に「MOVE」が隠れていて。イメージとしてはいろいろな要素が集まって、形になっていく感じ。真ん中にある丸いデザインはボールも丸いし、ストリートボールに付随していろんなものが生まれていく姿をイメージしました。
ストリートには新たなクリエイティブが生まれていく世界があると信じています。だからこそ今の時代のさまざまな進化とともに、ストリートの大切な部分を、コラボシューズやballaholicのボーラーたちを通じて広め、共鳴する人を増やしていけたらという思いで作っていました。


共創・共鳴…これからのストリートボールのあり方は?
――この10年でバスケットボールシーンが変わってきた中で、これからballaholicはアシックスとともにどうありたいですか。
アシックスはとても大きくて影響力のあるブランドですけど、僕らは一緒にやることで違う価値を作り出したいと思っています。僕が部活でバスケをやっていた頃、アシックスとストリートはどう考えても、一番離れたところにあったと思うんです。でも、そのイメージは、僕らだから壊すことができると思っています。

プロダクトを身に着けてもらうことで、その方のバスケットボールライフに彩りを与えるというか、ワクワクするものを添えられたら良いなという思いでやっていきたいです。
ただ、バスケットボールシーンもストリートボールシーンも時代とともに価値観やあり方は変わっていく。どう受け入れて、どう問い続けていくか。昔だったら「これが正解だ」というような1つの視点からのメッセージを発信できました。

でも今は若い子たちの考え方、僕らの見てきたストリートを知らない子たちとも向き合いながら、ストリートの魅力を伝えつつ、彼らとさらに面白いものを生み出していく世界を一緒に“共創”していかないといけない。そのために自分自身も、何にワクワクするのかを問い続けながら、いろいろな価値観を受け入れてやっていこうと思っています。


――いま、世の中的に、大手企業とスタートアップや中小企業が組んで新しい価値を生み出す“共創”の考えをよく聞きますよね。バスケシーンでも同じ考え方が出てきているんだと、いまTANAさんの言葉から感じました。
“共創”や“共鳴”は、僕の頭の中にある最近のワードです。ともに創っていくとはどういうことなのか。ストリートは、それを実践できる場だと思うんですよ。あっちのステージでは無理だけど、ストリートだったらやっていいし、誰が見てなくたってやれる場のはずです。その感情やワクワクを持つ人同士が共鳴したら、さらに面白いものができるでしょう。

今日で言えば、大学生は大学生のプレースタイルで、ストリートは「これがやりたくてやってんだ」というものがゲームや、ワンプレーのマッチアップで共鳴したとき、1人だけじゃ生まれない空間ができると思います。それは2人が共創してできたものかもしれないし、観客の歓声まで含めた空間そのものが共創なのかもしれない。
共鳴の先にあるものが共創で、それをどんどん積み重ねていくことがストリートボールの世界をより面白くして、想像できないところまで持っていける気がしています。

―― ちなみに、これから海外に行かれるそうですね。どこに行くのですか。
LAです。NBAオールスターがあるじゃないですか。でも、オールスターを見に行くわけではなく、あっちでベニスボールとかバスケに関わるいろんな人たちと集まるんです。TSCとコラボシューズの販売があるから、早々に一度は行くのを断っていたんですけどね。
でも、年末年始に個人で海外へ行ったとき、自分自身やストリートボール、アウトナンバーとしての考え方を問い直しながら、今までと違う何かを感じました。世界に出てみないと分からないことがある、と改めて実感したんです。

そこで、LAがあるなと思って、うちのグローバルチームのJIZOと、ボーラーのRYOと行ってきます。共創・共鳴という観点でballaholicを面白くしていく、世界で何かをやるなら、海外に出ていくしかないじゃないですか。バスケットボールで面白いことをやっている彼らが集まる場所で、当たり前にいるような存在として、バスケのことなら俺らもいるし、お前らもいるよねみたいな。
そんな、日常の中にバスケットボールの楽しみ方を持つ人が集まる関係の中にこそ、お互いのワクワクが共鳴して、共創できるんじゃないかと思っていますし、そういう機会を作っていきたいですね。



- 共創の先にあるストリートボール。TOKYO STREETBALL CLASSICを終えてballaholicのTANAが語ったこと
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TEXT by Hiroyuki Ohashi
PHOTO by TANA




