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  • 2025.05.30

ZOOSのAOIが「ALLDAY SPRING 2025」のMVPに…心配の先にあったストリートの力

次世代に焦点を当てたチームで春2連覇

「良かったー!良かったです! 個人的にはすごいホッとしてます」

 ZOOSのAOI(桂葵)は、5on5 ストリートボールトーナメント「ALLDAY SPRING 2025」で“春”2連覇を飾って、胸をなでおろした。初優勝した昨春、NORIKA(今野紀花/デンソーアイリス所属)がMVPに選ばれた瞬間に大号泣した彼女の姿が思い出されるが、ことしは涙無しだ。5月17日、優勝セレモニーをひとしきり終えて現れた本人も「落ち着いていました」と笑う。今大会は、チームとしてもAOIにとっても、新しいチャレンジだった。

 ZOOSにとって2度目のALLDAYは、フレッシュな顔ぶれだった。AOIは「本当にいつも通り、これまでの繋がりの中で、私も思い入れを持って何か機会をシェアしたい人たちを呼びました」と話す中で、今回は次世代に焦点を当てた。「ヤングたちにすごく重きを置いて選んだメンバーなので(昨年と違って)また新しい形になった」と言う。

 コートに目向けると、AOIと同じミニバス出身だというKOKONA(阿部心愛/早稲田大学)とYUNA(阿部友愛/立教大学)の阿部姉妹をはじめ、大学の後輩にあたるMEI(橋本芽依/早稲田大学)の姿もあった。オフにワークアウトでお世話になっているKAGO BASKETBALL所属の選手たちや、昨年に続きSHIHO(磯野志歩/NCAA ディビジョン1インカーネイト・ワード大学)も合流して、RIHO(赤木里帆/富士通レッドウェーブ)やNATSUKU(砂川夏輝/2024-25 ウリ銀行)といった大人たちを「エッセンス」に次世代と一緒に、頂点まで登っていったのだ。


代々木の主役になって、みんなに伝えたこと

 一方で、今大会のMVPには他ならぬ“AOI”が選ばれた。チームは1回戦がシードされてQuarter Finalから登場して、初戦のTEAM LATTE戦(27-10)こそ快勝したが、Semifinalのrag-bag戦(29-21)、FinalのYOK ballers戦(25-17)は劣勢を強いられた。

 だが、そんな場面でチームをけん引したのが、AOIだった。Finalの後半には彼女が勝負どころで3連続得点をマークして、優勝を決定づけたビッグプレーをかましてみせた。代々木の主役になった心境は、大会を終えたあとのチームミーティングでもみんなに説いたという。

「本当に準決勝の火付け役も、決勝の勝負どころで決めきるところも、正直私でした。だからMVPだとは思っていたけど、去年は違いました。去年も今年も同じマインドセットで臨んでかましてやろうと思っていたけど、去年は私ではなかったんです。同じように準備しても(MVPを)持ってくときと、持っていかないときがあるけど、誰かがあのシュートを決めきったから勝ったという瞬間をみんなでシェアしていることが大事なんだと思います。だから、去年は違ったけど今年が私だったように、また今度はみんながMVPを獲るつもりで、主役はどんどん変わるから自分が勝負どころでやってやるという気持ちで臨んでほしいとミーティングで話しました」


大会前の心配。でも「ALLDAYの舞台が」……

 もっとも、強気なプレーでZOOSの優勝に貢献したAOIだったが、この日を迎えるまではちょっと心配もあったようだ。彼女は昨秋からこの春まで、トヨタ自動車アンテロープスに所属してWリーグに初挑戦。32歳のオールドルーキーとしてポジティブな学びを数多く得た中で、プレーヤーとしては難しい経験もした。これまで3×3を主戦場にチームの中心として活動してきた状況から、自らの役割が代わって「自分が攻めるタイミング、勝負感が正直すごい鈍っていました」と本音も聞かれた。

 だが、1年ぶりのALLDAYがAOIの持つボーラーとしての嗅覚を刺激したようだ彼女は「ALLDAYの舞台がもう一度(私の心を)燃やしてくれたというか、ここでやってやりたいなっていう私のアグレッシブな気持ちが出てきました」と話す。また、言葉を選びながら、AOIは20周年を迎えた大会の歴史を「知らないし、そこにいたわけではないので、そこに思いを発する、共感することはできないんですけど」と前置きした上で、女子ボーラーにとってのストリートを言葉にしてくれた。

「ALLDAYで感じられる“異質感”は他ではなかなか味わえるものじゃないと思います。みんなここに来ると、何者でも無くなる。公園バスケの延長だなって感じています。例えば本当に赤木が富士通の赤木に見えなかったし、早稲田の学生たちも別に学生ですからっていうふうに見えなかったと思います。相手チームもそうです。別にWリーグでやっているとか、やっていないとか、そういうのは関係なく本当に一人ひとりの選手が丸裸でバスケをしてるように感じていて、それはたぶんALLDAYだから実現されることだと思います。だからこそ、ここできっかけをつかむ人がいるんだろうと、改めてWリーグを経験してから一層思いました」


次はどこでどんなチャレンジを始めるのか

 ALLDAYを通して、チームの新しいチャレンジと、ボーラーとして大事なものを取り戻したAOI。大会が20年もボーラーたちがやりたいから続いてきたように、ZOOSの今後に向けても「自分たちが何をやりたいかを先に考えることが大事。どんな活動するにも人が先にあって、それにZOOSが応えていくという順番を大切にしたい」と彼女は語った。

 次はどこでどんなチャレンジを始めるのか。AOIのやりたいことはまだまだあるに違いない。


【プロフィール】AOI | 桂葵
1992年生まれ。桜花学園高校を経て、早稲田大へ進学して4年のインカレで優勝とMVPに。就職して一時バスケから離れるも、2018年に3×3で競技復帰。2022年にZOOSを立ち上げて、3×3国際ツアー大会「FIBA 3×3 ウィメンズシリーズ」に日独混成チームとして参戦して世界5位を記録するなど活躍。2024年秋にはトヨタ自動車アンテロープスに加入して、初めてWリーグでプレーもした。2025年度の3×3女子日本代表候補。身長は182cm。
Instagram @aoi_katsura (外部リンク)

ZOOSのAOIが「ALLDAY SPRING 2025」のMVPに…心配の先にあったストリートの力

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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