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  • 2025.03.30

心揺さぶられた3×3男子代表の躍動。新たな歴史は刻めるのか…「FIBA 3×3 Asia Cup 2025」取材記 vol.2

 2年前の春。シンガポールで開催された「FIBA 3×3 Asia Cup 2023」で3×3男子日本代表は惨敗した。ニュージーランドに10-21、オーストラリアに13-21で屈して最終順位は12位。いずれも相手は前年度の準優勝チームと、優勝チームだった。試合後、2戦合計で2Pシュートが2本しか入らなかった #13 小澤崚は「まだまだ自分が力不足だった」と話し、#24 仲西佑起も「相手が強かったと感じた部分と、もっとやりようはあったなという悔しさの部分が大きいです」と振り返っていた。歯が立たなかったのだ。

 そんな2人を知っているだけに、3月29日の本戦予選、当時と同じ会場で小澤(ALPHAS/177㎝)、仲西(UTSUNOMIYA BREX/191㎝)が活躍して、初代表の#7 出羽崚一(SHINAGAWACC WILDCATS/190㎝)、#15 井後健矢(SAGAMIHARA PROCESS / HIU ZEROCKETS/198㎝)とともに2連勝した姿に心揺さぶられるものがあった。前回準優勝のイランを21-17で破り、同優勝のオーストラリアも21-16で撃破。2ポイントシュートと機動力を武器に、真っ向勝負で勝ち切った価値は大きい。むしろ、ここまでの戦いができるのかと驚かされたベストゲームを2つ並べた。

 イラン戦後にミックスゾーンにやってきた小澤は試合を振り返って「緊張をしつつも、集中していたので、その両方が結構噛み合って、良い状態で試合へ臨めたのが良かった」とコメント。あれから2年で、彼は日本を勝利に導ける選手に成長していた。それも7本の2Pシュートを含む1試合20得点をマーク。FIBAによると、3×3の1試合個人得点としては新記録だという。

 そしてオーストラリア戦に向けて「相手のフィジカルレベルはもっと上がってくるのですが、それでも俺たちのやるべきことは変わらないです。絶対通用する部分があるので、そこを中心に攻めて勝ちたい」と言い切った。

 彼の言葉は、Asia Cupで過去4度の王者との一戦で現実になった。それも日本が主導権を握ってだ。開始早々に鮮やかなパッシングから仲西が持ち込んだレイアップは、♯11 Alex Higgins-Titsha(アレックス・ハギナ-ティシャ/200㎝)にチェイスダウンブロックを食らったが、小澤がドライブをねじ込むなど4-1で先行。出羽も彼らしいスピードに乗ったしなやかなドライブを決めた。

 そして5-2から仲西が決めた3連続得点は試合の流れを引き寄せるビックプレーだった。うち2本は彼の代名詞であるダイブからの得点。当の本人は「1試合目の一発目でブロックを食らって、オーストラリア戦で2発目を食らってちょっと心がしんどかった」と明かしたが、「やっぱり僕がダイブをやらないと勝てないし、どうやったらできるかとイラン戦後に考えて、それをオーストラリア戦でできたのがすごい良かった」と話す。弱気にならずに戦う姿に、タフになった彼の成長を感じた。

 また、小澤の2Pシュートを止めようとブリッツ気味に圧をかけるオーストラリアに対して仲西だけでなく、井後のダイブも効いた。アウトサイド一辺倒ではなく、良い状況判断からペイントに落ちて得点を奪うプレーは、3×3をメインに活動する選手たちだからこそ代表レベルでも発揮される。仲西は「あれは偶然ではなく、スクリーンをディフェンスに当て、崚が出てきた2人のディフェンスを引き付けてくれたおかげで、彼とダイバーのどちらかがシュートまで持っていけるので、すごい良かった」と説いた。

 さらに、今回の4人は体の線が細くてペイントエリアで苦戦すると思ったが、それも杞憂だった。仲西が#7 Dillon Stith (ディロン・スティス/201㎝)からターンオーバー誘う場面には思わずうなってしまった。彼は「前を取って、裏を取って、ボールマンに対してプレッシャーをかけて。チームの戦術通り、みんなでディフェンスができたおかげ」と言う。中祖嘉人コーチとともに攻防両面で準備した成果が実を結んだのだ。

 仲西から寄せられた「中祖さんの言うプランを信じて、1試合目は崚がすごく頑張ってくれて、2試合目はチームのみんなでやりたいことができて勝てました。自信にもなるし嬉しかった」という振り返りが、いまチームが結束しているかを示す証である。きっと、いまシンガポールにいる男子代表に勇気づけられる3×3の現場でプレーする選手たちも多いだろう。仲西は言う。

「5人制のプロの選手とかすごい人たちがたくさんいる中で、経験とチーム力できょうは2勝という結果が出ました。今後(の3×3シーン)に繋がれば嬉しいですし、また決勝トーナメントで頑張ることが僕たちにとっても良いことになると思うので頑張りたいです」

 ちなみに、日本の強さは他の国も一目置くレベルである。3×3アジアランキング1位のモンゴル代表、#5 Anand Ariunbold(アナンド・アリウンボルト/196cm)に聞いてみると、こんな印象を語った。

「リョウ オザワがきょう20点を取りましたよね。めちゃくちゃシュートが入って、日本は強いチームだと思います。若いチームですか?(崚が一番若くて、他の3人は30歳から32歳の選手であると伝えると)日本、めちゃくちゃすごかったです」

 ただ、大会はまだ折り返しだ。きょう30日の決勝トーナメントが大一番。好ゲームをしても結果に結びつかない過去は幾度もあった。昨年の春、宇都宮での出来事が思い出される。パリ五輪予選に臨み、モンゴル、エジプトを破りながらも、フランスに敗れて決勝トーナメントにすら進めなかった苦い記憶だ。胸の内は読めなかったが、中祖コーチへオーストラリア戦後、選手に懸ける言葉は何かと尋ねると、こう明かした。

「全員が目標は最初からメダルです。そのためにももう一度リセットをして、また明日(=30日)良いリスタートが切れるように頑張りたいと思います」

 3×3男子代表が7年ぶりに、シンガポールで新たな歴史を刻めるのか。体格に優れ、能力の高いオーストラリアやニュージーランド、モンゴル、中国らが近年、男子のメダル常連国だったが、その中に今大会のスタイルで日本が割って入れば、アジアでの3×3において戦いで一石を投じることになるだろう。


 いま、日本への注目は増しているはずだ。2018年のAsia Cupで銅メダルを獲ったメンバーたちからも、エールが届いた。積んできた3×3の経験を、結果に結びつけるまで最後の大仕事に取り掛かる時間だ。

「僕たちの時は、最終日も試合ができる!試合するなら3試合やろうぜって言ってました。メダル獲りましょう」(野呂竜比人

「まずはベスト4、そしてメダル獲得を期待しています」(小松昌弘

「論より証拠。自分のために、応援してる皆のために、日本のために、カルチャーのために、2018年の記録を越えて新しい時代を切り拓いて欲しい。期待してます!」(鈴木慶太

「いよいよ今日決勝トーナメントで、こんな事言うとプレッシャーになるからアレですが、今大会他国を見ても金メダルを狙えると思う。

オリンピックでしか注目されないこの3×3を変えるには、まずはこのアジアカップでの結果が必要。そうなれば3×3の環境も良くなっていくと思うし、個人それぞれに必ず返ってくる。

チームとは違う日の丸を背負う代表特有の重圧があると思いますが、それも含めて大いに楽しんでください。

小澤は、普段のトレーニングから練習まで真摯に向き合ってる成果が結びついてて嬉しく思う。

ただ、まだまだ満足しないでとことん突き抜けて帰ってこーい!!英語のインタビューは必ず受けなさい!世界に顔を売るチャンス!チームみんなで応援してるぞ!」(落合知也

■試合日程(※日本時間)
3月30日(日) 決勝トーナメント
準々決勝
16:45 女子日本 vs.韓国
17:35 男子日本 vs.シンガポール
準決勝
19:25 女子日本 vs.モンゴル or フィリピンの勝者
20:15 男子日本 vs.中国 or カタールの勝者
→勝った場合は決勝へ、敗れた場合は3位決定戦へ
決勝
20:40~男女3位決定戦
21:40~男女決勝

>>詳細はこちら(リンクは外部サイト/FIBA.com)

■ライブ配信
【Quarter-Finals】
バスケットボール FIBA 3×3 アジアカップ2025|3月30日(日)14:30〜 LIVE配信

【Finals】
バスケットボール FIBA 3×3 アジアカップ2025|3月30日(日)19:00〜 LIVE配信

心揺さぶれた3x3男子代表の躍動。新たな歴史は刻まれるのか…「FIBA 3×3 Asia Cup 2025」取材記 vol.2

TEXT by Hiroyuki Ohashi



PHOTO by FIBA3x3

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