XDの「MOMOKO」…ALLDAY FALL 2024で頂点に輝いて
3×3の強豪がストリートで優勝…「まさか」
10月20日のYOYOGI PARK PLAYGROUNDで、 XD(クロスディー)のMOMOKOこと齊藤桃子が、興奮冷めやらぬ様子で「まさか、まさかだったので」と振り返った。なんせ、3×3を主戦場に戦う自分たちが、5on5ストリートボールトーナメント「ALLDAY FALL 2024」のウィメンズトーナメントを初制覇したからだ。
チームとしてこの日は初のALLDAYにして、数年ぶりの5人制試合だった。過去に3×3の国内主要大会を制した実力を持っているとは言え、頂点まで駆け上がるイメージは戦前、描けなかった。MOMOKOは冗談めかして「8秒あったねとか(笑)!本当に、初歩的なルールの確認からして」と話すほどだった。
それでも10月19日の初戦でLady Yokosukaに37-4で快勝すると、翌20日の準決勝では多数のWリーグ経験者を擁するゴ・カラクサを29-26で撃破。MOMOKOは「勝てると思っていなかったけど、今できることを一生懸命やって楽しんでやろうよと言ってたら、勝っちゃいました!そういうメンタリティで1日試合をさせてもらって、結果がついてきてびっくりです」と話した。決勝でも「ALLDAY 2024 SPRING」のウィメンズトーナメント準優勝のDifferntを28-16で破って、代々木に鮮烈な印象を残してみせた。
さらに、チームを後押しした存在も心強かった。彼女たちを応援しようと、一緒にバスケをする子どもたちが代々木に駆けつけていたのだ。「とても温かいホームで試合をしているみたいでした」とMOMOKOは話し、代々木のオーディエンスにも感動した。「他のチームを応援しに来ているのだろうと思いますが、シュートが決まったり、すごいプレーが出たりすると、みんなが盛り上がって、3人制にはない一体感を感じました。本当に良かったです!」と思い出す。
そんな代々木で、MOMOKOは“MVP”にもなった。3人制で見せるドライブや長距離砲の威力は、5人制でも健在。MVPの栄誉は「3×3日本選手権」や「3×3 JAPAN TOUR」で得ているだけに、これが3度目になるだろう。競技の違いを超えた活躍ができた自分に「良い歳なので、いつまで続けるんだろうと思うこともある」と前置きして、バスケットボールへの思いも改めて語ってくれた。
「みんなとバスケをしていると楽しいし、次はいつ試合があるの?と子どもたちが聞いてくれます。悩んだときも、楽しいという気持ちがあるから、まだバスケをやらせてもらっていて、きっとワクワクしなくなったら、わたしはスンといなくなると思うんです。でも本当にいまも楽しいし、バスケでつながりも生まれます。きょうも子どもたちと仲良くなって、小さな友だちがたくさんできて嬉しかったです」
MVPのMOMOKOがケガを乗り越えて思うこと
一方で、彼女はここ1年半ほど苦しんだ時期もあった。昨夏、3×3の試合中に膝を脱臼する大ケガを負い、今年1月に手術をしていたのだ。リハビリを経て、コートに戻ってきたのは今春。かつてのMOMOKOと言えば、XDの得点源としてボールを持てばガンガン仕掛けていくスタイルだったが、ケガから復帰後は仲間へプレーを任せる場面が増えてきた印象があった。
当の本人も「ケガをしたときも、私がやらなきゃと思い過ぎて」と明かす。それでもバスケができない間、チームメイトが練習や試合で頑張っている姿を見る内に、心境の変化があった。MOMOKOは「きっと自分がプレーしてる間、チームメイトが待ってくれていたと思うと、反省しました。わたしがやらなきゃと思わなくても、みんな力があるし、任せるところは任せた方がチームが絶対に上手くいくだろうと思って。自分がコートに戻ったときに、この気づきを生かしたかった」と振り返る。
だから、ALLDAYで見せたチームメイトの活躍はより嬉しかった。久しぶりの5人制でも違和感が無かったそうで「ディフェンスでスイッチしているし、カバーにしっかりと来てくれる。めっちゃチームだと思いました!頼もしい仲間たちです」と、彼女は話す。
3×3では、4人目としてほぼベンチに座る猪崎智子が決勝で試合を決定づけるコーナースリーを決めたプレーに「なんなら、MVPですね」と喜び、高橋優花がドライブからノールックパスを披露するプレーには「見たことがないです!」と驚いた。東京医療保健大学出身の矢島里都をはじめ、若手の活躍も心強く感じているため「私が(若手に)引き上げられている感じです」と話した。
そんな仲間と、ストリートボール史に名を刻んだMOMOKO。主戦場は3×3だが、ALLDAYに触れたいま、女子のストリートボールの未来に対して「一緒にバスケをやりたいと思ってくれる人が増えたときに、その受け皿にもなっていきたい」と意気込んだ。実現こそしなかったが、今大会に向けて他のチームからも誘われたそうで「(地方から)ALLDAYに出たいと思ってくれている子がいて、とても素敵だな」と話す。そして、次世代の姿も想像して、まだまだコートに立つ想いで、長い1日を締めくくった。
「自分たちができることは、バスケットボールを楽しむことですが、頑張って発信もしていきたいです。得意では無いんですけどね。だから(桂)葵ちゃんや、ZOOSのみんなはすごいと思います。海外であれだけ3×3を頑張って、日本に戻ってきて、葵ちゃんはWリーグにも挑戦して発信もしている。きょう応援してくれた子たちも、みんな知っているんですよ。子どもたちが知っているのって大事じゃないですか。子どもたちが大人になったら、ここでやりたいと思ってくれるようにバスケも発信も続けていきたいですね」
■プロフィール
MOMOKO | 齊藤桃子
1990年生まれの北海道出身。札幌山の手高校を経て、桐蔭横浜大学へ進学。卒業後、3×3ではSIMONを経て、XD(クロスディー)のエースとして活躍している。「3×3 JAPAN TOUR 2020 Extreme Limited」で優勝とMVPに選ばれ、2021年の「第6回 3×3日本選手権」も制してMVPに選出された。身長は167㎝。
- XDの「MOMOKO」…ALLDAY 2024 FALLで頂点に輝いて
-
TEXT by Hiroyuki Ohashi
PHOTO by Kasim Ericson
& ミッシー