「渋谷とホノルル、バスケで繋がる」 — 姉妹都市提携の締結で実現した大学女子バスケの新たな交流の形
6月8日(土)に渋谷区内の体育館にて、NCAA(全米大学体育協会)ディビジョン1のビッグウエストカンファレンスに所属するハワイ大学女子バスケットボール部(以下、ハワイ大)と、関東大学女子バスケットボール連盟に所属する強豪の東京医療保健大学(以下、東京医療保健大)がエキシビジョンゲームにて初対戦を果たした。
ハワイ大は6月4日(火)から10日間のJapan Tourを実施し、初来日。期間中はエキシビジョンゲームに加え、日本文化に触れるという形で東京都内や関西各地を観光し、チームは多くの刺激を受けたのである。Japan Tourの一環で開催された今回のゲーム、ハワイ大とは本来ゆかりのない渋谷区という場所で開催されたのには、バスケットボールとは別の大きな理由があった。
–姉妹都市提携によって、渋谷で実現した両校の初対戦
さまざまな民族や文化が共存し、「マラマハワイ(おもいやり)」をスローガンとしているホノルル市。そして、「ちがいをちからに 変える街」を基本構想に掲げ、ダイバーシティ&インクルージョンを推進している渋谷区。
都市としての基本的な考え方が実は近い、渋谷区とホノルル市。共通点も多く、交流を深めることで友好関係が深まっていくのではないか。両者のトップ同士はもちろんのこと、議会同士でもアメリカ合衆国ハワイ州観光局の支援のもと、水面下で継続的な会話が続けられていた。会話を続けていく中で、5月31日(金)に渋谷区とホノルル市は、姉妹都市提携に関する協定を締結したのである。
この提携の中では観光やビジネスはもちろんのこと、文化やスポーツなど様々な面において、双方がお互いの持ち合わせている知識や経験などを共有していく。そして、両者が都市として発展していくために事業連携などを模索することを期待していく趣旨の内容となっている。
姉妹都市となって記念すべき初のイベントが、今回のエキシビジョンゲーム。そして、同日早い時間帯に別会場で実施された、渋谷区のユース世代の選手を集めてのバスケットボールクリニックだった。
ハワイ大と東京医療保健大とのエキシビジョンゲームは夕方からスタート。会場には日本在住のハワイワンコミュニティの方々が詰めかけ、ハワイ大の選手たちには大きな声援が送られていた。
–最終盤まで緊迫したゲームは東京医療保健大が勝利
ゲーム序盤はお互いにシュートが決まらずに我慢の展開になるものの、徐々に硬さも取れてきて、スピーディーな展開でゲームは進行。ハワイ大はインサイド陣の高さを武器にリバウンドとペイントエリアの強さを見せつける。一方の東京医療保健大はソリッドなオールコートディフェンスで相手のターンオーバーを誘い、そこから得点を重ねていき、ゲームの主導権を握る。前半は東京医療保健大が3点リードで終了した。
後半に入ると、東京医療保健大のチームディフェンスがより冴え渡り、一時は点差を二桁まで広げた。しかし、高さで上回るハワイ大も徐々に追い上げ、4クォーターの残り2分で点差を1点差まで縮める。まるで公式戦だと思わせるような白熱した展開に、会場のボルテージは最高潮に。それでも東京医療保健大はラストオフェンスで華麗な3ポイントシュートをリングに沈め、ハワイ大の猛追を退けた。68-64のスコアで、記念すべき両者の初対戦は、東京医療保健大に軍配が上がったのである。
試合後にはハワイ大の面々から、ハワイを代表する首飾り「ククイレイ」が東京医療保健大の一人一人にプレゼント。その瞬間にお互いが笑顔になり、最後は両大学揃って記念撮影を行って、非常に和やかムードの中で初対戦は終了したのである。
–お互いが新たな刺激を受けたエキシビジョンゲーム
試合後、ハワイ大を率いるローラ・ビーマン ヘッドコーチは今回の対戦を振り返って相手のスタイルに感銘を受け、非常に印象に残ったと答えてくれた。
「東京医療保健大のプレーの速さと激しさ、そしてペースはとても良く、大好きになりました。選手たちは非常に勤勉で、しっかりとしたファンダメンタルを持っている。エナジーも素晴らしいし、チームとしてプレーを作っている。非常に参考になったので、我々も見習って浸透させていきたいです」
一方、このゲームにて攻守両面でチームを牽引して活躍を見せた、U-19日本代表に選出された経験もある東京医療保健大の大脇晴。自身の夢でもある「オリンピックでコートに立つ」という夢に向けて、非常に良い経験になったとゲームを振り返った。
「相手のフィジカルが非常に強く、リバウンドに行くタイミングも良くて、非常に勉強になりました。今、強化している3ポイントシュートが入らずに課題が残りましたが、ドライブからのプレーは結構通用したかなと思います。今回の経験をプラスにして、自分の夢に進んでいきたいです」
–バスケットボールを通して強めていきたい「渋谷とホノルル」の絆
ビーマン自身は人生初の来日で日本の印象を聞くと、最初に2回「Amazing」と繰り返し、興奮しながら言葉を続けた。
「このツアーは18ヶ月前から計画されていて、正式に日本に行けると分かった際には本当に興奮しました。同時に渋谷区をはじめ、関わった全ての関係者に感謝の気持ちでいっぱいでした。日本はどこに行っても情熱に溢れていて、楽しくて素晴らしいし、いい人たちばかり。本当に日本に行ったことない人は行くべきだし、この美しい国を絶対に体験すべきです」
続けて、今後のことについても言及する中で、今回来日して抱いた自身の想いも口にしたのである。
「この関係性を、今後も継続的に育てていきたいです。毎年、日本とハワイを交互にゲームを実施するために動こうと思います。渋谷区とはもちろん、日本のバスケットボールとの関係性を強化し続けることができれば、素晴らしいと自分自身は感じています。また私は引退する前までに、日本人選手をチームに迎え入れて一緒に戦いたいし、コーチングをしたい。誰か、我々のチームに来てほしいです」
そして、大脇に対しても今後のハワイ大との関係性について聞くと「こういう海外とのチームとの対戦は私たちにとってもレベルアップにもなるので大切です。大学やチームの監督に頼んで、ハワイ大で今度は試合がしたい。実現すれば人生初のハワイ、綺麗な海があるイメージがあるので、その海に入ってみたいです(笑)」と満面の笑顔を見せて、話してくれた。
渋谷区とホノルル市の姉妹都市提携を機に実現した、アメリカとのカレッジバスケットボールの交流。これがより広がり、様々なカテゴリで、そして様々な形で実現することを願いたい。
- 「渋谷とホノルル、バスケで繋がる」 -- 姉妹都市提携の締結で実現した大学女子バスケの新たな交流の形
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TEXT by Tomikazu Narukami