3×3アメリカ代表のMIAMIが2024開幕戦で優勝…次の主役は誰か?宇都宮でパリオリンピック出場を懸けて
3×3クラブ世界No.1を決めるツアー大会の開幕戦「FIBA 3×3 World Tour Utsunomiya Opener 2024」(Opener)が、4月27日28日に栃木県宇都宮市の二荒山神社バンバ広場で開催された。昨シーズンの世界ランク上位チームへ出場資格が与えられる中、ことしはツアー2連覇中のセルビア・UB(ウーブ)を筆頭に世界ランクTOP10が勢ぞろい。日本からも開催都市枠としてUTSUNOMIYA(UTSUNOMIYA BREX.EXE)が本戦予選から出場。SAITAMA(ALPHAS.EXE)もSHINAGAWA(SHINAGAWA CC WILDCATS.EXE)、HIRATSUKA(SHONAN SEASIDE.EXE)との予備予選を突破して、世界最高峰に挑んだ。
ことしは、夏のパリオリンピックに向けていち早く準備をしているチームも多かっただけに、開幕戦のレベルが非常に高かった印象だ。そんな中、アメリカのMIAMI(マイアミ)がOpenerの主役になった。世界ランク2位の強豪は27日の本戦予選で同10位のSANJUAN(サン・ファン)と同7位のRAUDONDVARIS(ラウドンドヴァリス)を破り、28日の決勝トーナメントへ。
準々決勝では同4位のVIENNA(ヴィエナ)を19-13で破り、準決勝ではAMSTERDAM(アムステルダム)に18-17の劇的勝利で決勝へ進出。UBとの頂上決戦を大接戦の末に21-20で制した。2016年から続く宇都宮での世界戦はセルビア勢が主役であり続けただけに、アメリカ勢の優勝は初めて。World Tourのシーズン初戦においても、彼らの勝利は史上初めてだった。新たな歴史が、宇都宮で生れたのだ。
目標は金メダル…開幕戦は五輪への「大きな土台」
その歴史を作ったメンバーは#1 Bryce Wills(ブライス・ウィルス)、#5 Jimmer Fredette(ジマー・フレデッテ)、#6 Canyon Barry(キャニオン・バリー)、#7 Dylan Travis(ディラン・トラヴィス)の4人。Willsを除く3人がパリ五輪に出場する3×3アメリカ代表の正選手であり、22歳のWillsも控えとしてチームを支えている。彼らはスプリングフィールドでの合宿や試合を経て宇都宮へ。カレッジバスケの元スター選手でNBAプレーヤーだったFredetteは、準決勝と決勝で試合を決めるショットを放つなど、MVPに選出。ただ、彼だけの活躍で勝ったのではない。選手たちの言葉を聞くと、優勝までの苦労や、チームワークの良さがうかがい知れた。良い選手がそろい、3×3に向き合った証である。
「大変な一週間でした。月曜日(4/22)と火曜日に試合をして、木曜日に宇都宮へ到着して週末に試合をしたんだ。でも、みんな本当に一生懸命プレーしてくれたし、僕らは落ち着いていた。最後に2、3本シュートを決めて接戦に持ち込めば、どんな試合でも勝ち進むことができると分かっていたし、幸運にも実現しました」(Jimmer Fredette)
「ジマーの言うように、このトーナメントを表現する言葉は“冷静さ”だと思う。僕らは何度か負けそうになったけど、ハードにプレーしなければ負けは起こらないし、DT(=Dylan Travis)を誇りに思っている。彼が私たちにハードな試合を乗り越えさせてくれた。宇都宮は美しい街で、素晴らしい食事を楽しみ、素晴らしい人たちに囲まれて勝利を手にするのはいつだって嬉しいね」(Canyon Barry)
「クレイジーな1週間だった。僕たちはスプリングフィールド(の大会)で優勝したけど、6日間のハードな代表合宿に加え、今大会のために世界を飛び回って日本へ来て練習してから試合に臨んだんだ。ブライスは22歳の若さで、初めてのマスターズ(=Opener)だったけど、素晴らしいプレーを見せてくれた。本当に誇りに思うよ」(Dylan Travis)
「みんな経験しているけど、僕にとっては初めてのマスターズでした。だから、すべてを受け入れて、できる限り経験を積んで、(欠場した)カリーム(Kareem Maddox)のために頑張ろうと思っていました。カリームがいないとしても、チームとしてパリでの金メダルを目指している。僕は(他の)選手たちに可能な限り準備をさせようと、プッシュし続けてトレーニングを前進させられるようにしている。だから、何が起こっても最善を尽くし続けることができるんだ」(Bryce Wills)
2021年の東京オリンピックには、オーストリアでの最終予選で敗れたため、出場を逃したアメリカ。あれから3年が立ち、五輪の出場権を確保したいま、彼らの目標はパリでのゴールドメダルだ。Barryは「開幕戦はオリンピックに向けた大きな土台となるもので、パリが提供するすべてを楽しみにしている」とコメント。バスケットボールの母国は、3×3で最高の結果を引き寄せようと好発進した。
UTSUNOMIYAに生れた歓喜…あと押しした圧倒的なホーム
また、UTSUNOMIYAも今大会、歴史をひとつ刻んだ。王者UBに完敗して最終順位こそ12チーム中6位だったが、本戦予選ではAMSTERDAMに19-21で敗れたものの、世界6位のPARTIZAN(パルチザン)戦で奮起。#5 Petar Sucur(ペター・シュチュール)が決勝点をねじ込み、21-19で勝利をもぎ取った。2016年に宇都宮での世界戦に初めて出場して以来、今回が5度目。何度も“良い試合”で終わった過去があっただけに、地元でヨーロッパの強豪に初めて勝ち切った意味は大きい。Sucurの大絶叫ののち、#1 齊藤洋介(YOSK)、#3 仲西祐起、#6 Teodor Atanasov(テオドール・アテナソフ)の4人で歓喜の輪が生れた光景は、きっと語り継がれるだろう。
そして、記憶に残る勝利をもぎ取った力は、ファンの声援あってこそだ。「GO BREX」のコールが何度も起こり、YOSKのシュートが決まって17-16の勝ち越し後に訪れたPARTIZANのフリースローでは大ブーイング。2本とも相手は失敗に追い込まれた。20-19でリードして迎えた終盤のタイムアウトでも、「レッツゴー!栃木!」の声が会場を包む。まさに2016年から続く二荒山神社の特設コートはことし、ブレックスアリーナのような圧倒的なホームコートになったのだ。
初めてOpenerに出場した仲西も「本当にすごい心強かって、試合が止まった場面でもすごいホームを感じられて、すごい力がありました」とコメント。YOSKも、その雰囲気に感動した。「特に自分が2ポイントを決めたときの歓声は忘れないです。あの力強い声援が自分を奮い立たせてくれる。スポーツ選手をやってて、一番幸せです。自分たちの力だけだと格上相手には足りないので、本当に200%ぐらいの力を出すためにも、是非あと押しをお願いしたい」と、明かしていた。
そんな彼らの今シーズンの目標は、世界大会での優勝。それもYOSKは「必ず優勝したい」と言い切った。ファンの声援を胸に、宇都宮からはじまる海外転戦がどんな結末になるのか。大きな期待を抱かせるOpenerでの戦いだった。
OpenerからUOQT2へ…モンゴルやオランダなど続々
一方で、宇都宮からはじまる戦いは、ワールドツアーだけではない。Openerに続いて5月3日(金)から3日間の日程で、パリオリンピックの予選大会「FIBA 3×3 Universality Olympic Qualifying Tournament 2」(UOQT2)が開催される。男女各8チームが出場する中、優勝チームだけがパリ行きの切符を獲得する。男女の3×3日本代表も開催国枠として出場するほか、Openerで戦った選手たちも母国を背負って登場する。
OpenerへULAANBAATAR(ウランバートル)として出場した#5 Delgernyam Davaasambuu(デルガーニャム・ダヴァーサンブー)と、#6 Dulguun Enkhbat(ダルグン・エンクバット)の2人はモンゴル代表としてUOQT2へ。男子日本代表と予選Pool Bで対戦する。バスケ熱の高まる同国を背負っているだけに、気合も十分だろう。Openerには出場していなかったが、エースで日本と縁のあるAnand Ariunboldも「オリンピックは僕の夢でもあるし、モンゴル人たちの夢。(2017年に3×3でアジア)1位になってから、スポーツの中でバスケットボールはみんなが見ている」と明かしていたほど。パリオリンピックの出場となれば、それは悲願である。
さらに、もう片方の予選Pool Aでは、優勝候補と目されるオランダ代表をAMSTERDAMの選手が兼務。同国の5人制代表を引退して3人制へ転向した#6 Worthy de Jong(ワーシー・デ・ヨング)や、東京2020オリンピックに出場した#8 Arvin Slagter(アーヴィン・スラグター)、#1 Jan Driessen(ジャン・ドレッセン)が名を連ねる。RAUDONDVARISの#3 Evaldas Džiaugys(エヴァルダス・ジオジス)や#7 Aurelijus Pukelis(アウレリウス・プケリス)もリトアニア代表として出場予定だ。
プエルトリコのエース…予選突破への思い
さらに荒削りながらダークホースになりうるプエルトリコには、SAN JUAN(サン・ファン)の4人がロスター入り。♯3 Antonio Ralat(アントニオ・エラー)をはじめ、#5 Leandro Allende(レアンドロ・アジェンデ)、#6 Luis Cuascut(ルイス・クアスカット)、#7 Adrian Ocasio(エイドリアン・オカシオ)がいる。 Openerで強豪RAUDONDVARIS戦の逆転勝ちは印象深く、準々決勝でも世界5位のRiffa(リファー)に21-18で食い下がった。
そのRAUDONDVARIS戦で勝利の立役者になったRalatは、同国のNo.1プレーヤーだ。2014年に中国・北京で開催されたユースオリンピックで17歳で出場したのが、3×3との出会いだったという。その後、2022年に母国で行われた国際大会に、SAN JUANの対戦チームとして出場していた姿が、代表コーチの目に止まって昨年よりチーム入り。「3×3が大好きだし、これからもずっとプレーしたいと思っている」と、Ralatは声を弾ませる。選手たちは兄弟のような間柄で「全員が仲良くなれるエゴのない性格」とのこと。「情熱を持って(機動力をいかして)素早くプレーし、全員が強いハートを持ってより高いレベルでプレーするのが、私たちの特徴」とも話す。大一番への思いも明かしてくれた。
「厳しい大会になることは分かっています。だから毎試合、自分たちのゲームに持っていかなければならない。だから、相手チームをスカウティングし、可能な限り最高の準備をして、自分たちにハードなプレーを表現できる最高のチャンスを与えたいと思います。そして願わくば、夢にまで見たパリ五輪の予選突破を成し遂げたい。昨年から。みんなオリンピックに出るためにこのプロセスを始めたんだ。全力を尽くして、神のご加護があるようにしたい」
パリへ続く歴史が紡がれる3日間
3×3シーンの名場面が何度も生まれきた宇都宮には、試合時間10分、21点KOルールもあるスリリングなバスケットボールで成功を目指す選手たちが世界中からやってくる。彼ら彼女らが激突する3日間では、とんでもないドラマが待っているはずだ。男女の3×3日本代表の歓喜に最も期待しているのは言うまでも無いが、月日をかけてチームで3×3と向き合い、世界トップレベルで努力を重ねてきたライバルを超えるのはたやすいことではない。
だからこそ、会場となるライトキューブ宇都宮を日本の圧倒的なホームコートにどれだけできるか。リバウンド、ルーズボール、フリースローなど勝負の別れ目になる局面で選手たちの背中を押すのは、ファンの大きな声援になる。Opener、もっと言えば昨夏の沖縄アリーナが、そのパワーを証明済みだ。
パリへ続く歴史が紡がれる3日間が、もう間もなくはじまる。
【UOQT2開催概要】
FIBA 3×3 Universality Olympic Qualifying Tournament 2(UOQT2)
・日時:2024年5月3日(金・祝)~5月5日(日)
・場所:ライトキューブ宇都宮(大ホール)、宮みらいライトヒル
・詳細:詳細:(リンクは外部リンク/FIBA 3×3)
・チケット、イベント情報等はこちら
>>(リンクは外部リンク/大会公式)
・主な放送予定
BS松竹東急(BS260ch・全国無料放送/当日の大会ハイライト)
5/3(金)、4(土)23:30~24:30、5/5(日)23:00~24:00
【3×3日本代表の大会日程(予定)】
DAY1 5/3(金・祝)
17:05 予選A 女子vs.オーストリア(23 Asia Cup 優勝)
19:45 予選B 男子vs.モンゴル(23 Asia Cup 優勝)
20:35 予選A 女子vs.ドイツ(23 World Cup 5位)
DAY2 5/4(土)
17:05 予選B 男子vs.エジプト(23 Africa Cup 優勝)
19:20 予選A 女子vs.ブラジル(23 AmeriCup 2位)
20:35 予選B 男子vs.フランス(パリ五輪開催国)
—男女ともに予選2位以上でDAY3へ—
DAY3 5/5(日)
17:20 女子 準決勝 2試合
18:20 男子 準決勝 2試合
19:20 女子 決勝
19:45 男子 決勝
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TEXT by Hiroyuki Ohashi