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  • 2024.08.31

3×3の本格上陸から10周年…持続可能なチームの鍵を探る【後編】

ALPHAS 3×3 BASKETBALL(以下ALPHAS)と、B-LAB MIYAZAKIが国内ツアー大会「3×3 Super Circuit」のレギュラーラウンドを誘致したのは、今回が2回目。ともにチームとしての歴史は浅いが、3×3に対して意欲的だ。ALPHASはご存知の通り、越谷から世界を目指す強豪チームだが、地元・越谷へしっかりと目を向けている。元3×3プレーヤーの猪崎大介氏が立ち上げたB-LAB MIYAZAKIも新興チームであるが、宮崎を拠点に普及へ力を注ぐ。これらの活動からも、持続的な活動をするための鍵を探りたい(所属選手など記載の情報は今年2月末時点)。

ALPHAS、地元連盟とタッグを組んで
「まずは越谷市立北体育館で開催して、ホームの雰囲気を出せたのが一番良かったです。継続的に皆さんに3×3を知ってもらうために、越谷でまた大会を開催できればと考えています」

 ALPHAS 3×3 BASKETBALLでセールスマネージャーを務める浅井英明氏は、1月8日の越谷ラウンドを笑顔で振り返った。誘致大会は2023年12月のアルファーズコート開催に続き、2度目。当時は、チームの応援グッズを持参したファンを入場無料にしていたが、ことしの盛り上がりはそれを大きく超える盛況ぶりだった。自然と応援の声が出る会場に落合も「めちゃくちゃ後押しになりました」と話していた。

 そして、誘致大会の舞台を確保するために、地元の協力は欠かせなかった。浅井氏は言う。

「越谷バスケットボール連盟さまのお力を借りました。連盟さまも越谷で3人制を定着させたいという意向をお持ちで、せっかくだから一緒にやりましょうとお話をさせていただきました。今日は隣りで3×3のU12カテゴリーの大会も開催しました。僕の役目の中には3人制の普及もあります。子どもたちみんなに3×3を知ってもらって、楽しさを感じて欲しいですね」

地域の課題や競技力向上のために
 また、浅井氏は越谷バスケットボール連盟と会話をする中で、チームが別のカタチで地域の役に立てるのではないかと感じている。昨今の少子化や、教育現場の働き方改革に伴う部活動の地域移行の話題を例に挙げて、「子どもが(放課後に)行ける場所を、僕らが整えてあげられれば、よりこれから(3x3に触れる機会が)増えていくんだろうと思います」とコメント。過去には5人制のアルファーズに携わっていた経験もあって「選手のセカンドキャリアにも役立つ」と考えており、「3×3シーンをもっと大きくするために、動いています」と語っていた。

 ちなみに、埼玉県では令和5年度に、“休日の部活動地域移行に係る「埼玉県新たな地域クラブ活動実証事業」”という取り組みを行っている。これは、埼玉県で地域クラブ活動を段階的に整備・充実することにより、中学校部活動や習い事に加えて、子どもたちが多様なスポーツ・文化芸術活動を自ら選択できる環境整備を進めることを目的に、事業者を募って実証実験を行ったもの。5人制のアルファーズはその事業者のひとつであった。

 県や市教育委員会と連携し、越谷市スポーツ振興課の協力を得て、昨秋からことし1月にかけて、越谷市北部の中学校4校の男女バスケットボール部員の希望者に対して、計6度の指導を実施している。チームのプロコーチ陣が、その担い手になった。一連の実証事業で課題も浮き彫りになったようだが、教育現場が抱える問題を、プロスポーツチームが解決できるならば、それも地域貢献のひとつ。全国にある3×3チームも、各地でそういった関わり方を模索していきたい。

 また視点を変えると、地域での3×3実施は審判育成の一助にもなる。3x3は大会数がむかしに比べて増えているとは言え、5人制に比べれば審判が笛を吹く機会が限られている。そんな中で、国内トップレベルの選手たちが集う「3×3 Super Circuit」の開催は、良い機会だ。落合は「試合は審判の皆さんと選手たちで作っていくものです。もっと3×3の試合を埼玉県でしないといけないなと思いました。試合の機会が増えれば、お互いの経験値が増えていくと思います」と語った。

 3x3は選手たちが、世界大会を目指して日夜トレーニングに励む一方で、競技力の向上と普及のためには審判の存在も必要不可欠。プロチームが競技発展のために、できることは試合に勝つことだけではない。

西日本の興行現場…選手発掘の打開策
 一方で、西日本の誘致大会はどんな様子なのか。B-LAB MIYAZAKIの誘致大会として開催された宮崎ラウンドは、今回が2度目。昨年の綾町体育館から、宮崎駅前にある商業施設「アミュプラザみやざき」に会場を移したのが、大きな変化だ。猪崎氏は「駅前、町の中心部に会場を持ってこれたのが一番大きな変化です。そこにたくさんのスポンサー様よりご賛同をいただきました」と話す。

 さらに、今回興行をする上で別大会の興行経験も大きな力になった。チームは、西日本初の地元密着3×3リーグ「3x3UNITED」に2023シーズンに初めて参戦。レギュラーラウンド開催はリーグ所属のチームが興行権を持ち回り、ホームタウンで大会を行う仕組みであるが、その経験が活きたそうだ。


 
 特に、現場を担う人材確保の側面である。猪崎氏は「現場スタッフやテーブルオフィシャル、審判の協力は、運営の鍵です。競技レベルが増すごとに重責にもなります。その方々とのやり取りは、UNITED でホームゲームを開催した経験を今大会で活かすことができたと思っています」と明かした。

  ただ、普及の観点からはまだまだ課題もありそうだ。出場する選手たちの新規参入が進まないようだ。「3×3 Super Circuit」の西日本エリアのレギュラーラウンドを取り仕切った松岡健太郎氏は「一般のチームの普及が進まない」と頭を悩ます。彼は、「3x3UNITED」の事務局運営もサポートしているだけに、その状況は切実。3x3.EXE PREMIERなどのプロリーグ参戦チームは積極的にエントリーする一方で、アマチュアチームは尻込みして辞退するチームもあるという。「3x3UNITED」は門戸を広げようと、本戦の前日にオープン参加形式の予選会を設けているが、まだ道半ばだという。

 それでも、宮崎ラウンドでは3×3のプロやアマチュア選手に混じって、昨冬の「第10回 3×3 U18日本選手権大会」に出場した若い選手たちがEXPLORERS BOYSとしてエントリーするという姿もあった。彼らは、地元のバスケ有力高校に通う選手たちで、鹿児島の3×3チーム・EXPLORERS KAGOSHIMAがチームを結成。選手を増やす打開策として、この取り組みはひとつモデルになると松岡氏は感じている。

「EXPLORERS KAGOSHIMAが高校生のチームを作る活動は、若い選手たちが3×3をプレーする種まきになると思います。大人の一般層から発掘する考えもありましたが、学生層が出られる大会を定期的に開催し、3人制に触れて社会人になったときに戻ってきてくる流れが作れたらいいなと思います。時間はかかるかもしれませんが、3×3をやる人をもっと増やせるように、今年はより一層考えていきます」
    
「町で大会が盛り上がるよう一緒にやっていきたい」
 日本で3×3が本格的に始まったのが、2014年。3×3.EXE PREMIERが7チームによるプロリーグを立ち上げたのが、その起源と言っていいだろう。翌2015年には日本バスケットボール協会による3x3日本選手権が第1回大会を迎えた。2017年に東京オリンピックでの正式種目化が決まり、2021年には本大会で男女の3x3日本代表が活躍。その知名度は全国へ波及した。PREMIER以外にもリーグ戦やツアー大会が立ち上がり、チームが活動できる場が広がったことも、競技の発展に寄与している。

 しかし、そんな競技シーンも10周年を迎えた。今後も、いまのようにチームが誕生しては、消滅するような状況を続けてならない。他のプロスポーツに比べて参入障壁が低く、「〇〇から世界へ」や「オリンピアンの輩出」など、さまざまなチームが目標を掲げてる中、どれだけのチームが競技と向き合い、本拠地を置く地域から必要とされる存在になれているのか。継続的な活動を通して、チームにファンがつき、スポンサーがつき、売上が積み上がっているのか。改めて、見つめ直してもいいのではないだろうか。

 そして、大会主催者としても、3×3でチャレンジしようとするクラブを全力で応援している。「3×3 Super Circuit」の東日本エリアを主に取り仕切った岡田慧氏は、「誘致してくれたチームに対して、もっとサポートができたと思います。今回、ZOZOさんや、アンダーアーマーさんから支援をいただく中で僕らも大会の露出方法やブランディングで学びがありました。今後、興行をやるチームに役立つ知見も得られたので、誘致大会チームの街で大会が盛り上がるよう一緒にやっていきたいと思います」と語った。 

 次の10年先、20年先に向けた3×3シーンを作るための節目の1年になりそうな、2024シーズン。全国にある3×3チームがコート内外でどんな取り組みを見せるのか。持続可能な活動に向けて試行錯誤は続くかもしれないが、きっとその先に魅力的なチームが生まれるはずだ。

【大会情報】
国内ツアー大会「3×3 Super Circuit」のスピンオフ大会「3×3 Summer Tournament 2024 supported by Arch」が9月1日に武蔵野の森総合スポーツプラザで開催される。

今大会は、参加資格、予選大会一切無しの1dayトーナメント。男子優勝チームには10月に中国で開かれる国際大会「FIBA 3×3 Yichang Challenger 2024」の出場権が与えられる。世界大会まで最短距離の一戦について、大会公式Instagramで最新情報を発信中だ。

>>大会公式SNSはこちら(リンクは外部サイト)

3x3の本格上陸から10周年…持続可能なチームの鍵を探る【後編】

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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