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  • 2023.11.10

YOKOHAMA G FLOW.EXEが「3×3.EXE PREMIER」で2連覇できた理由…はじまりはアゼルバイジャン

YOKOHAMA G FLOW.EXEは、3人制グローバルプロリーグの優勝決定戦「3×3.EXE PREMIER 2023 PLAYOFFS」の女子カテゴリーを制し、史上初の2連覇を飾った。昨シーズンからメンバーが変わりながらも頂点に立ったチームの背景には、これまでと変わらぬバスケを「楽しむ」気持ちと、今春出場した女子3x3の世界最高峰「FIBA 3×3 Women’s Series」の経験がある。底抜けに明るいチームが、アゼルバイジャンで何を経験したのか……

優勝後の賑やかな囲み取材
 去る9月16日、17日に開催された「3×3.EXE PREMIER 2023 PLAYOFFS」を勝ち切って、史上初の2連覇を達成したYOKOHAMA G FLOW.EXE(以下 G FLOW)。矢上若菜(♯5 /168cm)、井齋沙耶(♯8 /176cm)、八木希沙(♯7 /165cm)、吉武忍(♯9 /170cm)の囲み取材は、実に賑やかだった。


 優勝の心境を聞こうと質問を投げかけると、「今の気持ちですか!レモンサワーが飲みたい(笑)」と早くも祝勝会モードに入ったコメントが飛んでくるほど。井齋が「去年は本当に何もできなかったので、今年は頑張ろうと思って頑張りました」と控えめなコメントをすれば、矢上、吉武、八木の声がそろう。「そんなことないよ!!!」と。春先から進化したプレーについて自信があったのかと問えば、矢上が「決まって当然だと思います。それだけ練習してきました」と話し、八木が「かますなーー」と合いの手をすかさず入れる。とにかく、息がぴったりな4人だった。

 そんなチームだからこそ、優勝に届いたのだろう。PLAYOFFSでは、予選でニュージーランドのSWISH.EXEを21-12で、タイのSHOOT IT DRAGONS.EXEを21-14で破って決勝へ進むと、レギュラーラウンドで苦戦したFLOWLISH GUNMA.EXEには21-10で快勝。吉武がMVPに選ばれ、彼女たちは3カ国18チームの頂点に立った。相手は髙橋芙由子ら主力選手が「Red Bull Half Court 2023 World Final」に出場したため、控え選手中心ではあったが付け入る隙を与えず、予選からサイズで上回る海外勢も撃破。選手が入れ替わったことでスタイルを変えて勝ち切った姿も、チャンピオンに相応しい。

 昨シーズンは、180㎝の李竹人と矢上の2メンゲームを軸に、八木と井齋がフォローするようなチームだったが、李が今春FLOWLISH GUNMAへ。そのため、G FLOWは機動力をいかす戦い方にモデルチェンジし、全員で攻撃も防御もやり切る意識が一層強くなった。リバウンやルーズボールなど球際でファイトし、シュート力をいかすほか、スリップやドライブに対する合わせのプレーを磨き上げた。

 とりわけ、今シーズンの成長を後押しする転機になった大会がある。今年6月12日、13日に出場した「FIBA 3×3 Women’s Series Shusha 2023」である。4月30日に栃木県宇都宮市で行われた「3×3 Women’s Challenge Utsunomiya」の優勝によって出場権を獲得し、彼女たちは人生初のアゼルバイジャンへ。女子3×3の世界最高峰のステージで手ごたえをつかみ、自分たちらしさを再認識した。

アゼルバイジャンの国際大会へ初参戦
 ナショナルチームやコマーシャルチームが出場するWomen’s Seriesの中で、G FLOWはゲストチームという枠で出場し、8チーム中6位に食い込んだ。大会を振り返ると、予選第1試合ではオランダに9-15で敗れたが、続くアゼルバイジャンには21-6でKO勝ち。予選ラストのハンガリーには10-21で敗れたが、決勝トーナメント初戦の準決勝進出決定戦ではドイツに16-22で善戦した。残り5分をきって5-15の劣勢から、八木、矢上の連続2ポイントシュートで盛り返し、スリップやドライブへの合わせのプレーで1点を積み上げて挽回。逆転勝ちには至らなかったが、アゼルバイジャンから帰国後、選手たちは手ごたえを明かし、その表情は明るかった。

「諦めないで最後まで1点を積み重ねたプレーができたことは、大会を通しての成長だと思います。スリップでノーマークを作ったり、オフボールから合わせたりしたプレーはとても良かったです。あのプレーを私たちの頭の中に入れて、相手がアジャストしてきたら次は違うやり方でその上を行けるようにやっていきたい」(矢上)

「最後に負けたけど、よく頑張ったと思います。1日目の3試合目、ハンガリー戦は最悪な負け方やったなって感じでした。みんなも気持ちが沈んで『これはやめよう』と言って切り替えて、話しをしました。ドイツはスイッチを使うチームだったので、スリップが途中から有効に効いているのを感じました。充実感を感じて終われたのは本当に良かったです」(八木)

 また、2022年にエジプトで開催された「Red Bull Half Court World Final」以来の国際大会で、彼女たちは海外で3×3をやる魅力を改めて感じた。サイズもフィジカルも違う中で、八木は「みんなで相手を見ながら攻め方や守り方を話して、それがコートで表現できるのが楽しい。5人制では簡単に海外へ行けないけど、去年に引き続いていま3×3の魅力に取り込まれてます」とコメント。異口同音に吉武も語った。

「国内では女子のチーム数が少ないので、どの大会でも同じ顔ぶれになりがちです。だから相手のプレーがある程度わかる中での勝敗になりますが、海外では限られた時間で相手のビデオを見る程度で、ほぼ分からない状態でやります。10分の中でチームで声を出し合って、試合にアジャストして『あそこはダメ』、『これはOK』みたいに4人で戦っていけるところは、3人制らしさが出ていると思っています」

私たちが本領を発揮するとき
 一方で、世界最高峰の舞台で彼女たちは、バスケを楽しむことと、勝つことのバランスを取る難しさも感じたという。4人はアゼルバイジャンにトレーナーも通訳も帯同スタッフもいない中で乗り込み、移動の途中にはバスが故障するトラブルにも見舞われた。戦前のプレーヤーズがミーティングにも参加したが、初じめてのWomen’s Seriesとあって大会の流れも探り探り。初戦のオランダ戦には緊張もあったそうだ。八木は「私たちらしさがなかったです。ボールを動かして人を動かしてというプレーのらしさもなかったし、いつもの元気良さもなかった。だから、アゼルバイジャン戦に向けては、もう一度私たちらしく戦おうぜ!と、確認しました」と話す。

 ただ、その甲斐もあってアゼルバイジャンにKO勝ちしたことで、矢上は「ハンガリー戦は勝たなきゃいけないという意識が強くなってしまった」とも明かす。その結果、チームはKO負け。「楽しむことを忘れてしまいました、勝つことと楽しむことのバランスが大切だと、そのとき感じました」と彼女は言う。そして、ドイツ戦は楽しむ気持ちを取り戻したからこそ、良い試合運びができた。吉武は改めてチームの強みをこう語った。

「自分たちはテンションが大事だと思っています。何となく試合に入っちゃうと負けるし、ただ頑張ろうじゃなくて、その中でも盛り上がらないと。とことん、ウェーーーみたな(笑)。やってこぜーー!みたいな感じです。そういうとき、本領を発揮するチームだと思っています」

2年連続2冠なるか…?
 そんなG FLOWは、PREMIERの2連覇後、初の公式戦となった「3×3 JAPAN TOUR 2023 EXTREME Round.11」に出場し、ラウンド優勝を飾った。それも八木、吉武、髙木優里の3人で。予選でXDを19-16、TOKYO DIMEを14-13で下し、決勝ではBEEFMANを19-11で撃破。今シーズンのWomen’s SeriesにDüsseldorf ZOOSとして参戦していた桂葵やAma Degbeonらを擁するチームを上回ったのだ。

 八木は試合後、「あまり大きな声では言えないんですけど、勝つと思っていなかったです(笑)……」と小声でまずひと言。急きょ、前夜に3人で出ることが決まったことを思えば、そう思うのも無理はないだろう。ただ、1人欠けても臨む意識は変わらなかったようだ。「3人だからこそできることをやって、いろいろと試しつつ“楽しんで”勝てたらいいねと言ってました。本当に勝てて、嬉しいです」と話した。

 G FLOWは、JAPAN TOURのツアー順位で上位だったため、この大会に出なくても11月11日、12日に開催されるFINALに出場できる見込みだったが、結果としてツアーランキング首位へ浮上。イレギュラーの中で勝ち切った経験は、チームの底上げになった。強敵相手に通用したコンビネーションについても、「アゼルバイジャンに行ってちょっと高い選手ではなく、190㎝ぐらいのかなり高い選手たちとやったので、いまそれがプレーの中でいきていると思います」と、八木はチームの進化を改めて感じていた。

 来る「3×3 JAPAN TOUR FINAL」でも国内外の大会で積んだ経験と、とことん楽しむメンタリティーで2連覇の可能性があるYOKOHAMA G FLOW.EXE。チャンピオンになったあかつきには、きっと賑やかな優勝コメントが聞けるに違いない。

【大会情報】
名称:三井不動産 3×3 JAPAN TOUR 2023 FINAL
日程:2023年11月11日(土)、12日(日)
場所:三井ショッピングパーク ららぽーと堺 
出場チーム:EXTREMEカテゴリーの累計ツアーポイント上位チーム。男子12チーム、女子6チーム

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YOKOHAMA G FLOW.EXEが「3x3.EXE PREMIER」で2連覇できた理由…はじまりはアゼルバイジャン

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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