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  • 2023.04.01

「FIBA 3×3 Asia Cup 2023」取材記vol.1……まさか奇跡が起こるんじゃないかと思ったけど

 3×3女子日本代表が3月31日の「FIBA 3×3 Asia Cup 2023」の予選ラウンドで2連勝を飾った。大会初戦となったチャイニーズタイペイ戦を15-10で下し、開催国のシンガポールも15-5で抑え込み、Pool B1位で4月2日のの決勝トーナメント進出を決めた。2戦合計で2ポイントシュートが1本も決まらなかったが、ディフェンスで我慢の末に勝ち切ったのだ。現地は30度前後の気温と、80~90%ぐらいの湿度につつまれる、タフな環境であるが、最後まで足を動かし続けていた。

 その一方で、3×3男子日本代表は予選ラウンドで2連敗。大会初戦となったニュージーランド戦に10-21で敗れ、続くオーストラリア戦も13-21で力尽きた。
 
 戦前からサイズで不利な状況が明白だっただけに、スピーディーな展開から2ポイントシュートを決め、コンビネーションプレーで1点を取りきる。そんな21点KO勝ちに持ち込むパターンに、ハマって欲しいと思いながら戦況を見守った。

 ニュージーランド戦の開始早々、改田拓哉 (♯2/176cm/TSUKUBA ALBORADA)と落合知也(♯91/195cm/ALPHAS.EXE)が息のあったプレーを見せ、その落合は高い位置でボールをもらい、スペースに仲西佑起 (♯24/190cm/NINJA AIRS.EXE)が飛び込んでシュートを決める。去年のAsia Cupでは、ボールの受け手は小松昌弘で、A代表で落合の得点を改田がアシストするのも、初めてのシーン。立ち上がりの様子を少し見るだけで、新しい代表チームになったと改めて印象づけられた。

 1回目のTVタイムアウト以降、改田の2ポイントシュートがついに成功して8-7と勝ち越し。この流れに、小澤崚 (♯4/176cm/TSUKUBA ALBORADA/SAITAMA ALPHAS)の当たりが来れば、チームは勢いづくと思った。

 が、ここからニュージーランドはオフェンスリバウンドから得点を重ねる。日本が成功させたい2ポイントシュートも終盤、2本を射抜き、終わってみれば、11点差で2分19秒を残してKO負けだった。

 続く、オーストラリアとの第2戦。相手は、ニュージーランドとの直接対決を21-13で制していただけに、日本は決勝トーナメントへ進むために、奇跡を起こす必要があった。この一戦に勝ち、3チームが1勝1敗という状況を作った上で、平均得点でPool Bの2位以上に入るべく、オーストラリアに22-9など大差でKO勝ちするシナリオである。

 過去3度のアジアNo.1に輝く強豪に対して、平均身長で約15cm以上のディスアドバンテージもある中、奇跡が起こるとは想像できなかったが、4人は体を張ったディフェンスでロースコアゲームに持ち込んだ。タフショットに追い込み、ポストアップするビックマンに対しても、手を真っ直ぐに上げ、体の正面で相手とコンタクトするディフェンスで粘りに粘った。序盤こそファウルを重ねてしまったものの、笛が極力鳴らないよう、落合や中祖嘉人戦術コーチらが、ジャッジの基準を前日、仲西にアドバイスした光景も蘇ってくる。改田、小澤もミスマッチになりながらも踏ん張った。小澤はディフェンスについて「高い位置からスイッチするにしても、ディープシールをやられない。高い位置からプレッシャーをかけてやろうとした」と明かす。

 さらに、小澤がステップバックから2ポイントシュートを射抜き、改田もドライブでフィニッシュ。2人のプレーに会場の歓声もひときわ大きくなった。残り5分を切って5-5の互角。まさか奇跡が起こるんじゃないかと思った。

 が、やっぱり2ポイントシュートが来ない。「焦るな」という声がスタンドから聞こえたような気もしたが、オーストラリアに対してディフェンスで耐えつつ、オフェンスの精度も高く遂行するのは並大抵のことではない。残り4分25秒で9個目のファウルを犯し、Andrew Steelに2本のフリースローをそろえられて、勝ち越しを許す。さらに、高さで押し切られ、2ポイントシュートも被弾。小澤、落合も2ポイントシュートを決めるなどしたが、KO負けを喫した。

 結局、日本が決めた2ポイントシュートは2戦合計で37本中4本の成功にとどまった。ニュージーランド戦で15本中1本、オーストラリア戦でアテンプトこそ増えたが22本中3本だった。

 小澤は試合後、敗因を「コンディションをそれぞれが調整できなくてスマートにプレーできなかったところが、たぶん大きかった」と感じていた。そして、タフな環境によって「しっかりと考えられなかったり、自分で一生懸命になってしまい、目の前のディフェンスと戦うので一杯になり、スクリーンに気付かなかった場面が多かった」とも語った。

 そして2ポイントシュートについては「コートにアジャストできず、リードされた後はシュートも焦って、速い展開で打ってしまった。自分のタイミングで打てず、入らなかったのが原因だと思う」と唇をかんだ。

 もちろん、4人はアンダーサイズながら互角の時間帯を作り、我慢を重ねて、ワンチャン勝てる期待も抱かせてくれた。特に、オーストラリア戦は、このまま日本へ手ぶらで帰るわけにいかないと思っていたはず。その気持ちは、十分に伝わってきた。


 ただ、今回3×3を主戦場に戦う4人で臨むからこそ、落合が「より結果が求められる」と強調していた言葉も思い起こされる。2017年にAsia Cupになってから、5度目を数える今大会で初めて、決勝トーナメントに進めなかった事実を、重く受け止めてしまった。

【大会日程】
 女子日本代表
  4/2 (日)
  12:40~準々決勝 vs.タイ
  17:25~準決勝(敗れた場合は19:30~3位決定戦)
  20:20~決勝

 

詳細は大会公式サイト(英語/外部リンク)へ

【LIVE配信】
 4/2 準々決勝

 4/2 準決勝、決勝

【日本代表情報】

JBA3x3OFFICIAL Instagram(外部リンク)

「FIBA 3×3 Asia Cup 2023」取材記vol.1……まさか奇跡が起こるんじゃないかと思ったけど

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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