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  • 2022.08.17

3×3日本ランキング1位の大学生・窪田真優……3×3は「5人制とは別に輝ける場所」

女子の3×3日本ランキングで#31 窪田真優(桐蔭横浜大学4年生)が1位に(8/1時点)――。今年2月の大会をきっかけに彼女は、3×3日本代表として世界を転戦するまで頭角を現した。7月のアジアカップで初のA代表を経験し、ネーションズリーグではU23代表としてしびれるような活躍。かつて「個人技で魅せるバスケット」だとイメージしていた3×3は、いま彼女にとって「5人制とは別に輝ける場所」になった。

3×3デビュー戦は代々木
 さかのぼること今年2月19日。代々木第二体育館で開催された「3×3 Next College Monsters Festival 2022」が、窪田真優の3×3デビュー戦だった。この大会は、日本バスケットボール協会が主催し、関東大学バスケットボール連盟と関東大学女子バスケットボール連盟が主管した、大学生世代の3×3競技者拡大に向けたテストイベント。当時、桐蔭横浜大学3年生の彼女は、キレのあるドライブを武器に、存在感を放った。

 窪田はオリンピック競技になる前から3×3をなんとなく知っていたそうだが、そのイメージは「個人技で魅せるバスケット」。それが、桜花学園高校の先輩である山本麻衣と、馬瓜ステファニーが出場した東京オリンピックを見たことで、5人制のような「競争感がすごい出る」バスケットにとらえ方が変わったという。「チャンスがあればやりたい」と思う中でのMonsters Festivalに出場が叶った。

 残念ながらチームは準々決勝で敗れたものの、初めての3×3に窪田は「やっていて、すごく楽しかった」と充実感を覚えた。もちろん5人制は好きだが、新たなバスケットボールと出会って、またプレーしたいという意欲的なコメントも寄せられた。次に、どこかの大会へ出てきたら、会場を沸かせてくれそうだと思わずにはいられなかった。

初の国際大会……「緊張しやすい」けれども
 そんな期待感を、窪田は程なくして優に超えていく。彼女は4月に3x3U23代表候補として、「第19回アジア競技大会 (2022杭州)」(コロナ禍のため大会は来年9月へ延期)へ向けた強化と選手選考を兼ねた合宿に参加。6月には「FIBA 3×3 WORLD CUP」に向けたA代表の候補選手となり、大会前のオーストリア遠征に帯同した。山本麻衣や、馬瓜ステファニーといった1年前に3×3のイメージを変えてくれた先輩たちと代表活動をともにしたのだ。

 7月8日には、シンガポールで開催された「FIBA 3×3 ASIA CUP」の代表メンバーに選出され、遂にコートへ。迎えた予選プール初戦のインドネシア戦では、代々木で見せたような積極的なプレーを遺憾なく披露した。

 日本はこの試合、序盤にリードを許したが、窪田の2ポイントやドライブで流れを呼び込んで17-15の逆転勝ち。5得点4アシストを記録し、初の国際大会とは思えない堂々としたプレーだった。特に、2ポイントを決めた場面について彼女は「(シュートは)打たないと入らないです。ボールを持っている人しかシュートは打てないので、チャンスがあれば入る、入らないにしろ、自信を持って打とうと思っていました。(2ポイントが)入って自分も(波に)乗れたというか、気持ちが楽になって良かったです」とコメント。ただ、緊張を感じさせなかったプレーについては、意外にもこう語った。

 「(実は)結構、緊張しやすいタイプです。大学のチームでは本当に試合前はガチガチになってしまいますが、3人制はこの音楽や(会場の)雰囲気でリラックスできて、良い感じのワクワクした緊張感でプレーができています。それは3×3をやる上で、自分にとって良いことだと思いました」

 さらに、Monsters Festivalから、代表にまで駆け上がった気持ちを次のように明かしてくれた。

 「ずっと3×3で日本代表になりたいと思っていたわけではなかったのですが、あの代々木の試合をきっかけに、5人制とは別に輝ける場所ができました。これは自分にとって、とてもプラスなことです。本当に代表メンバーに選ばれたことは嬉しいですし、大会が行われていることに感謝したいと思います」

悔しさは残るが「自分の良さ」を出せた大会に
 そして、窪田の持ち味は大会の随所で発揮された。間宮誠 戦術コーチが戦前、彼女の良さを「ハンドラーとして切り崩していける力」と「2ポイントのシュート力」と話していたが、その言葉通りの活躍ぶりだ。
 
 初戦から3位決定戦までの5試合で積み上げた得点は22得点。これはチーム最多となる25得点を記録した#32永田萌絵 (デンソー アイリス)に次ぐものだった。ドライブのみならず、2ポイントも17本中6本(成功率35.3%)の成功を数えた。これは本選に限ると、12カ国全選手の中で一番の成功本数でもあったのだ。初日のミックスゾーンで「ボールを持っている人しかシュートは打てないので、チャンスがあれば入る、入らないにしろ、自信をもって打とう」という彼女の言葉も思い起こされる。しっかりと打ち切った結果なのだ。

 もちろん、ターンオーバーが目立ったり、ディフェンスの圧力に負けたりする場面はあった。そして「結果を残せなかったことが、一番悔しいです」と、メダルを逃した落胆もあった。チームは予選プールでインドネシア戦に続き、シンガポールを11-3で破って2連勝し、準々決勝ではスリランカに22-3で快勝。だが、準決勝で中国に15-20で敗れ、3位決定戦ではインドネシアに17-21とリベンジを許してしまった。

 それでも彼女はシンガポールでの5試合に胸を張った。「私の周りの方々は“結果より楽しく真優らしくやって来い”と言ってくれて、自分の良さを(アジアカップで)出せました。楽しかったことに変わりはありません」とコメント。さらに、コートにいる「3人の力が絶対的に必要になる」中で、3×3ならではの全員で得点を取るやりがいや喜びも、改めて実感した。3人制の面白さや醍醐味、敗れた悔しさを含めて、競技への意欲は高まったという。

 「今回、仮に優勝をしていたら気持ちがどうなっていたのか分からないのですが、今は悔しい気持ちがあります。最後の3位決定戦で大事なところで、私はミスを連発してしまいました。ここで終わりたくないという気持ちが、正直あります。これからアンダーカテゴリー(の大会に出場するメンバーに)も入っているので、そこで挽回をしていきたいですし、またA代表にもレベルアップして選ばれたら、この悔しさを晴らしたいと思います」

「5人制とは別に輝ける場所」で一番輝くところへ
 「挽回」の思いは早速、7月25日から31日までマレーシアのペナンで開催された「FIBA 3×3 NATIONS LEAGUE 2022 ASIA」で強く感じられた。3x3U23日本代表として、#2 奥山理々嘉(ENEOSサンフラワーズ)、#6 今野紀花(ルイビル大学)、#10 舘山萌菜(白鷗大学)、#14 伊森可琳(東京医療保健大学)とともに出場した窪田は、6大会中5大会に出場して、3度の優勝に大きく貢献。特に3度のゲームウィナーショットにはしびれた。

 第2戦の決勝(中国戦 ○21-19)で左コーナーから、第3戦は予選(モンゴル戦○14-12)で右45度から、それぞれ試合を決める2ポイントをメイク。続く決勝(中国戦○18-16)でも延長戦の末に試合をクロージングする2ポイントを含めて、一人で15得点をたたき出した。シュートを決めきった直後に見せる、勝利をかみしめるガッツボーズは実に印象的だ。

 ただ残念ながら、チームは最終第6戦の決勝で中国を19-17で破ったが、6大会を通じた獲得ポイントで総合優勝に届かず2位に。それでも連日の配信を通じて、若き選手たちの活躍に沸き、窪田真優の名前を覚えた方もいるのではないだろうか。オーストリアから本格的にはじまった3×3挑戦によって、彼女は最新の3×3日本ランキングで1位に浮上(8/1時点)。「5人制とは別に輝ける場所」で、一番輝くところまで駆け上がった。

 最後に、窪田の次なる舞台に目を向けておきたい。3人制で目覚ましい活躍を見せたが、大学4年生の彼女にとって、9月3日からはじまる関東大学1部のリーグ戦も大事な舞台だ。これまで3人制の経験を、5人制の飛躍につなげたWリーグやBリーグの先輩たちが数多くいる。桐蔭横浜大学でさらに成長を遂げ、両競技の違いを越えて活躍する存在へ…。そんな姿を楽しみにしたい。

3x3日本ランキング1位の大学生・窪田真優……3x3は「5人制とは別に輝ける場所」

TEXT by Hiroyuki Ohashi

【第72回関東大学女子バスケットボールリーグ戦対戦表8月8日(月)現在】-関東大学女子バスケットボール連盟(外部リンク)

桐蔭横浜大学女子バスケットボール部 Instagram(外部リンク)

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