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  • 2020.10.14

今季始動のNEWチームがTOKYO DIMEを破って初優勝、「Play Hard」なHIU ZEROCKETS

コロナ禍の2020シーズンに始動した新チーム、HIU ZEROCKETSがTOKYO DIMEとの息詰まる攻防を制して優勝を飾った。4人の選手たちと、ストリート界隈で知られた存在ながら、意外にも3×3は初めてというGM兼テクニカルアドバイザーが「Play Hard」に、強豪を破ったトーナメントを振り返りたい。

世界基準が取り入れられた環境で
10月10日に東京・新木場で『F1 Tournament』の第5戦となるEast TOKYO ROUNDが開催された。今大会の舞台は倉庫をリノベーションしたバスケットコートである『F1 studio』にセット。フロアやショットクロックは昨秋の3×3クラブ世界No.1決定戦・FIBA 3×3 World Tour Utsunomiya Finalで使用されたものが採用されている。グランドオープンを今冬に控えた中、世界基準が取り入れられた環境に、ツアーラウンド最多となる12チームが集結した。

その顔ぶれは3×3 JAPAN TOURで2度のラウンド優勝を飾っているTOKYO DIMEを筆頭に、KOTO PHOENIXやALBORADAといった今シーズンも勢力的な活動を行うチームが登場した一方で、これから経験を積んでいくメンツも多数参戦。2020シーズンから始動したHIU ZEROCKETSや、秋田県能代市から生まれた新チーム・NOSHIRO STEELERS、設立2シーズン目となる新潟のSANJO BEATERSらが参戦した。そして12チームが3チームずつの予選POOLに割り振られ、各POOLの1位同士が準決勝、続く決勝で頂点を目指した。

ZEROCKETS「メンタルを崩さず」初V
大会の模様を振り返ると、予選を突破したチームはすべてPOOLを無敗で勝ち上がった。まず準決勝第1試合ではHIU ZEROCKETSとWILDBALL 3×3が対戦。残り4分をきって14-13と拮抗した展開になったが、HIU ZEROCKETSが佐藤マクファーレン優樹(#24)やフォファナ ママドゥ(#19)の得点で21-16と引き離して決勝へ。続く第2試合ではTOKYO DIMEが高さをいかしながら、3人で出場したALBORADAに21-16でKO勝ちを収めた。

そしてラウンドファイナルは公式戦で両者はじめてのマッチアップを迎えた。試合はHIU ZEROCKETSが日影カイル(#66)やフォファナのドライブで仕掛けるが、TOKYO DIMEは205㎝の岩下達郎(#20)を起点に、鈴木慶太(#7)が2ポイントシュートやドライブを決めて、中盤に入ってリードを奪う。

しかし、HIU ZEROCKETSは佐藤による2本の2ポイントシュートで15-15の同点へ追いつくと、残り3分を切ってからは198cmのWorth Smith(#1)がインサイドの攻防で競り勝つなど、殊勲の活躍で勝ち越しに成功する。残り1分を切って相手に20-20と並ばれるが、最後はSmithがファウルを獲得して、冷静にフリースローをメイク。この4人が組んだ初の公式戦で、初優勝を見事やってのけた。大会後、チームリーダーを務める佐藤は次のように振り返った。

「(3×3.EXE)PREMIERで実績と経験があるチームと戦うことは、すごくタフでした。僕たちはまだ1年目のチームですが、それでも厳しいシチュエーションでメンタルを崩さずに、勝てたことが大きな収穫だと思います。DIMEに勝てたことは少し自信にはなりますが、まだまだです。もっと良い展開にできたと思いますし、彼らも落合(知也)選手がいないのでフルメンバーではありません。勝利に喜びつつ、でも満足はしていませんね。ここからさらにチームを磨いていきます。練習あるのみです」

初3×3のGMがチームへもたらしたもの
また今大会のコートサイドには、同チームのGM兼テクニカルアドバイザーを務める池田二郎(以下JIRO)氏の姿もあった。選手としてアメリカでプレーしたキャリアを持ち、代々木のビックトーナメント・ALLDAYのコミッショナーを務めるなどバスケやストリート界隈では知られた存在だ。意外にも3×3に携わることは今回はじめてというが、ラウンドを制覇した選手たちへ常々、強いハートでゲームに臨むことを強調。「Play Hardにやること。チームがはじまって運動量とディフェンスは、どんな相手でも負けないようにしようと、伝え続けました」と明かしてくれた。

さらにひと際目を引いたWorth Smithをチームに誘ったのも彼だった。現在27歳。学生時代はNCAAのDivision1でプレーした経験を持つ。ドリブル、パス、シュートで基礎がしっかりとしており、なによりゲームを通してメンタルにムラがない。チームのために献身的な姿が印象的だった。

もともとSmithはTEAM YOKOSUKAの一員としてALLDAYに参戦。2年前の夏に、NBAのスーパースターであるラッセル・ウェストブルックが『RUSSELL WESTBROOK 2018 WHY NOT TOUR』でALLDAYへやってきたとき、コーチとして臨んだJIROにエキシビションゲームのALLDAY選抜として、彼はピックアップされている。Bリーガー選抜との一戦から月日が経ち、2人は再び共闘へ至ったわけだ。「いままで米軍の横須賀基地にいたのですが、それを上がるということでした。僕のチームジョインと彼のタイミングが重なって、声を掛けています。チームへ入ってくれて、とても良かったです」と、勝利に貢献した様子を喜んでいた。現在、Smithは日本でBリーグ入りを目指して、ワークアウトに努めて活動しているという。今後も名前を覚えておきたい一人である。

FINALへ残すはOITA ROUNDのみ
全6戦のツアーラウンドは、これで5戦が終了。KANAGAWA ROUNDのBEEFMANを皮切りに、TOKYO ROUNDでSolviento Kamakura、CHIBA ROUNDでTOKYO LEDONIARS、KYOTO ROUNDでNINJA AIRS、TOKUSHIMA ROUNDでBOORINSが、それぞれ優勝を決めている。そしてこの日、日本のトップチームを相手に、最後まで集中力を切らずに戦い抜いたHIU ZEROCKETSの優勝は、国内シーンにインパクトを与えたと言っていいだろう。

いよいよFINAL(10/24)に向けた大会はあと1つ。OITA ROUND(10/17)を残すだけとなった。コロナ禍で3×3の大会が少ない中、九州エリアで開催される貴重な真剣勝負の機会。東京で開催される大一番へ向けて、その切符を勝ち取るチームはどこになるのか。アツいゲームを最後まで期待したい。

今季始動のNEWチームがTOKYO DIMEを破って初優勝、「Play Hard」なHIU ZEROCKETS

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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