• COLUMN
  • 2017.08.18

ALLDAYとダイバーシティ

「外国人助っ人」という言葉はALLDAYには無縁だ。性別・年齢・人種・国籍・キャリア一切不問。様々なバックグラウンドの選手が出場するALLDAYは、東京のスポーツシーン、そしてストリートカルチャーの中で最もダイバーシティ(多様性)を体現しているイベントの一つといえるだろう。

国籍に関しては、アメリカ、カナダ、フランス、イタリア、スペイン、ドイツ、イギリス、スウェーデン、スイス、インド、中国、韓国、フィリピン、オーストラリア…個人的に把握しているだけでもこれだけ世界中から選手が参加している。中国からALLDAYのために来日したチームや在日米軍基地などチーム単位で出場する場合もあるが、様々な国籍が入り混じったチームも多い。また、観戦無料で代々木公園というアクセスの良さもあり、観客も国際色豊かだ。

そんなALLDAYで特に人種・国籍のダイバーシティを大事にしたい理由は二つある。

日本のバスケのレベルアップのために

一つは、単純に現在国内最高レベルと言われるトーナメントをさらに高いレベルにしたいから。そのために何かを制限する理由はない。ALLDAYで日本人選手たちがたくさんの海外出身の選手と対戦したり、同じチームで試合を経験することにより、まずはストリート(草の根)でレベルアップさせていき、最終的には日本バスケ全体のレベルアップにつなげたい。

ストリートにはそこでしか学べないものがある。海外、特にストリートの環境が整っているアメリカで育った選手のゴール下での体の使い方や球際の強さは、個人やチームの練習で習うことは難しい。シーズンスポーツではない日本の部活の年間の練習時間とアメリカの練習時間を比べたらはるかに日本の方が長いが、その分アメリカではストリートで毎日ゲームをでき、AAUと呼ばれる高校生のためのクラブチームの試合や地域のリーグも無数にある。中高生でも大人相手にプレイするのが当たり前だ。そのときのチームによって自分に求められる役割も変わってくるので自然とどんな環境でも自分の力を発揮できるようになる。

ALLDAYでプレイするアメリカ人プレーヤーは、一部のプロを除けばアメリカのストリートにいる普通のプレーヤーたち。彼らは日本人と比べて特別に上手いわけではないが、ALLDAYでは彼らよりも練習を積んでいるはずの日本人チームが負けてしまうシーンをよく見る。特に日本人選手には、日本にいながらALLDAYで体感できるそういう貴重な実戦経験を通じてレベルアップしてほしいと思っている。

ダイバーシティを体験する場として

いきなり個人的な話になるが、僕がアメリカで様々なストリートトーナメントやリーグを経験する中でいつも感じたのは、どのイベントも地域に対して貢献したいという気持ちが強い、ということだ。例えば、NBAフェニックス・サンズが主宰する「SUNS NITE HOOPS」は、犯罪が起きやすい夜に試合を行うことで若者のエネルギーをバスケに向けさせることを狙ったリーグだ。U24の参加者の多くは何かしらのトラブルを起こして保護観察処分中の若者だ。

リーグでの試合は保護観察処分で義務付けられる地域貢献活動としてカウントされるので、バスケを楽しみながらライフスキルを学ぶことができる。試合前には体育館隣の教室で様々なライフスキルを学ぶワークショップへの出席が必須で、遅刻や欠席をすると試合ではプレイさせてもらえない。このリーグに僕が誘われたときに言われたのが、リーグにダイバーシティがほしい、ということだった。アジア人は僕一人で、様々な人種・国籍の選手が参加することは、問題児たちがライフスキルを学んで人として成長することに対して大きな意味があると考えたようだ。

日本でも最近ダイバーシティという言葉が注目され始めているが、オリンピックを控えたこの東京の中心地で、ストリートボールを通じて様々な文化をバックグラウンドに持つ人たちが交流できるこのようなイベントがあることは地域にとって大きな意義があると思っている。

まだALLDAYを体験したことがないひとは、選手としてでも、観客としてでも、この東京でも数少ないユニークなストリートボールトーナメントをぜひ体験してほしい!

TEXT/Jiro Ikeda

ALLDAYとダイバーシティ

TEXT/Jiro Ikeda

RELATED COLUMN

MOST POPULAR