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  • 2026.04.04

積み上げる――「FIBA 3×3 アジアカップ 2026」取材記vol.1


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4月1日より、シンガポールで3×3アジアNo.1を決める「FIBA 3×3 アジアカップ 2026」が行われている。2022年の初開催から数えて5度目、会場をマリーナベイサンズから同国のスポーツ施設が集積するカラン(旧シンガポール・スポーツハブ)に移してから4度目。年々、3×3で熱狂が生まれるアジア屈指の舞台になった。



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女子シンガポールが初の勝利、初の8強入り

3日の本戦予選DAY1の最終戦には、開催国の女子シンガポールが登場。2022年の初出場以来、アジアカップでは全敗だったものの、チャイニーズ・タイペイとの戦いに挑み、19-16で待望の初勝利をマーク。史上初の決勝トーナメント進出を決めた。2023年よりセルビアから元3×3クラブ世界一になった経験を持つ者をコーチに招き、代表チームは国際大会へ出場するなど強化に着手。ファンの声援は年を追うごとに大きくなり、太鼓まで飛び出し、完全なホームコートをセット。積み重ねが結実した。ライオン・シティ(=シンガポールの愛称)が誇るエース・Jermaine Lim Jia Ying(#27)はハードワークが実って迎えた待望の瞬間に「ただ、本当に嬉しいですね」と切り出し、喜びをかみしめた。

「ここ数ヶ月、あるいはここ数年、自分たちより大きい相手、小さい相手、速い相手など、多くの強敵と何度も対戦してきました。だから、これまでの努力が本当に実を結んだと実感しています」


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チームで崩し、個で打開。継続的な取り組みの証

そんなシンガポール、チャイニーズ・タイペイを破って本戦予選プールCを1位突破した3×3女子日本代表も積み上げを感じさせる戦いぶりだった。

昨年5月より前田有香ヘッドコーチのもと、これまでの個を中心に戦うスタイルから転換。ピック&ロールやスリップ、オフボールの選手も連動するなど、チームで崩す戦いを磨いてきた。鶴見彩(#5 / 165cm / MAURICE LACROIX)、野口さくら(#13 / 182cm / アイシン ウィングス)、高橋未来(#7 / 169cm / アイシン ウィングス)、花島百香(#8 / 178cm / ENEOSサンフラワーズ)の4人は、今大会が初の公式戦になったが、非常にまとまりがあった。

21-11で快勝したシンガポール戦では、1点に直結するキーアシストを7本も記録。うち6本は鶴見が供給源であり、ペイントエリアで効率よく得点を取るため、チームで訓練し、パスの受け手と出し手の相互理解ができた証とも言えるだろう。


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そして、チームとしての伸びしろを感じたのが、14-11で振り切ったチャイニーズ・タイペイ戦。序盤、2ポイントシュートを多投するも決まらず、ペイントエリアで1点を狙うパスも通らず、2-6と劣勢の展開に。ところが、残り6分43秒で訪れた最初のTVタイムアウト明け直後、野口がボールを受けるや、すぐに1on1で得点を奪い、花島もドライブで続く。ただ、個一辺倒でなく、その後は再びチームで崩す場面も見られ、粘る相手を退けた。

チームと個の共存は、3×3を戦う上で大事な視点だ。そのバランスを取るには選手たちのコミュニケーション、信頼が必要になる。前田HCは就任以来、チームオフェンスを説きながらも「個の1対1もなければ勝てない」と代表メンバーへ説いていたそうで、当然「3×3の戦いをやり始めたとき、自分の1対1のタイミングはいつなのかと結構迷ったりしていました」と振り返る。


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ただ、そんな中でチームで議論し、ベストな戦い方を積み上げるのが3×3で勝っていく過程である。前田氏は「去年、最初に出場したウーマンズシリーズのウランバートル大会が結構それで、自分のプレーもできないし、チームとしてもやらなきゃいけない。その中でもがきながらやったら、結果的に(ワールドカップを経て戦った7月の)ジャカルタ大会での優勝になりました」とも明かす。

今代表でも、選手たちとコミュニケーションを重ねたほか、前田HCは「選手も結構質問してくれてました。3×3のならではの戦い方に加えて、これって良いんですか?とか、ここ行って良かったですという意見がすごく出てくる」と変化も実感。話したぶんだけお互い理解が深まれば、信頼も生まれ、新たな気づきやアイデアが生まれる。昨年ワールドカップを経験している高橋未来も、メンバーが変わりながらも代表チームとしての積み上げを感じていた。その言葉はポジティブだ。

「今までやってた3対3とは全然違います。本格的な3対3というか、そういうのがちょっとずつ分かってきて、何が狙いどころなのかも分かってきました。本当、試合を重ねるたびにできるようになったことも増えたし、できなかったことも明確になってきたと思います」



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「一個になろうとしなくても一個になれるようなチーム」(野口)

そして、積み上げ真っ最中の代表をまとめるのが、鶴見彩である。当の本人は「ポテンシャルある人たちなので、もうそこは何も言わずにポイントだけ自分がリードするべきところだけ、声を掛けるようにしてるんです」と、自己評価はあくまでも控え目だ。シンガポール戦を終えて「プレーのところだとここ1本、今日も点数が縮まった場面があったので、そこでどこで攻めるか。こっちのファウルがかさんでるときにどういうディフェンスをしなきゃいけないのか。そういうところはちゃんとガイドできたかなと思います」と、役割に徹する彼女の良さがうかがえた。

それでも、周囲から見てもその存在は大きいようだ。もちろんチームとして彼女だけに頼っているわけではないが、前田ヘッドコーチは鶴見効果を説く。

「彩が中心になってプレーも作るし、チームが困ったときは彩が率先して声を掛けているところは、彩自身の成長にも繋がるし、その辺は経験がある分(若い選手も)絶対頼っていいと思います。でも、それだけじゃなくてみんなもやるっていうところにはなってるので、彩の役割が多いと思うんですが、それはチームにとってプラスにはなっていると思います」


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さらに、後輩たちにとっても頼れる先輩である。野口は「彩さんがしっかりチームを引っ張ってくれています。3×3をずっとやっているのもあって、しっかり意識、プレーの細かいところを落とし込んでくれているので、そこはすごいチームが一つになれてる要因だと思う」とコメント。加えて「全員がみんな本当に良い人で、何か一個になろうとしなくても一個になれるようなチームだなと思います」と、いまの状況を明かす。抽象的だが、3×3で結果を残すチームにありがちな表現で、良い兆しである。

また、高橋もチャイニーズ・タイペイ戦は持ち味の2ポイントシュートが決まらなかったが、打ち続けて、試合終盤に鶴見からのパスを受けてからリードを広げる1本をヒット。先輩から打っていいぞと思わせるパスに見えたが、これもチームの信頼があってこその展開と言えるだろう。高橋は「他の選手がそのまま打っていいよと言ってくれたり、自分の2ポイントのセットプレーを最後まで続けてくれたから、ちゃんと最後まで打ち切れたというのが強いです」と振り返った。きっと、次につながるショットになったはずだ。

たった2試合、されど2試合。予選からさらにどうチームが積み上がっていくか。決勝トーナメントは金メダルへの大きな挑戦になるが、1試合でも多く試合をやってほしいところ。2028年のロサンゼルスオリンピック出場を目指す上でも、ゲームは1試合でも多く経験したい。そのためにも、準々決勝は是が非でもまず勝ちたい。



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タイは日本と、どう戦うのか。大黒柱は「秘密にしておいていいかな(笑)」

では、その相手はどこになるのか。近年、成長を遂げているタイである。2023年にはベスト8で日本を下し、去年のアジアカップで3連覇したオーストラリアにも食らいついた。今大会のメンバーは昨年から変わっている中、継続してメンバー入りしたSupavadee Kunchuan(#8 / 178cm)を大黒柱に、3×3.EXE PREMIER PLAYOFFSで昨秋リーグ初優勝を飾った選手たちも入れて、チームバスケットを展開している。

本戦予選プールAを2位で通過したあと、Kunchuanはミックスゾーンで2試合を総括。チーム状況を考えると、彼女たちも積み上げの過程にいると感じさせられた。


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「1試合目から、だんだんほぐれていく感覚がありました。というのも、このチームは今年、新しいチームで、練習も試合もそんなに多くできていなかったので。試合を重ねるごとに少しずつほぐれていって、どんどん良くなっている感じがします」

そして、Kunchuanに次戦の日本戦を尋ねると、その印象を「一番素早くて、一番スキルフルなチーム」とコメント。日本に勝つための、キーポイントまで突っ込んで聞いてみると「秘密にしておいていいかな」と笑わせながらも、ちょっとだけ策を明かした。答え合わせは、5日の準々決勝で分かるはずだ。
「トランジションをたくさん使いたいと思っています。ディフェンスからオフェンスへ素早く切り替えて、クイックショットを打つことです。ご存知の通り、日本はとても速い。だから、すべてのプレーで細心の注意を払わなければなりません。確実にやることが大事です」



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【日程|女子代表】
4月5日(日) 決勝トーナメント
準々決勝 16:45 日本 vs タイ
準決勝  19:00 →敗れた場合は20:40より3位決定戦へ
決勝   21:40

■ライブ配信
FIBA 3×3 公式 YouTube(予定)

五輪を目指す第一歩。男女の3x3日本代表が「FIBA 3x3 アジアカップ 2026」の初戦へ

TEXT by Hiroyuki Ohashi
PHOTO by ©FIBA

JBA 3x3 OFFICIAL

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