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  • 2026.03.25

髙橋芙由子と落合知也…3×3と5人制を行き来する先駆者たちから感じられること

3×3バスケットボールの国内主要タイトルのひとつ「3×3日本選手権大会」は、例年2月あるいは3月開催が定番であるため、3人制と5人制を兼務する選手たちが出場した事例は少なかった。しかし、11度目の今大会、横浜BUNTAIのコートにはWリーグでプレーする髙橋芙由子と、Bリーグで戦い続ける落合知也の姿があった。2人ともチームの初優勝にも貢献。5人制とは似て非なるバスケットボールを行き来する先駆者たちの姿から競技シーンが学ぶことは多い。


「私が頑張る意味」…女子初のWリーグと3×3の行き来する髙橋芙由子

「もう銀メダルは……。集め過ぎたので、そろそろ金メダルを獲れるように」と話していたのは、FLOWLISH GUNMAの髙橋芙由子(#3 / 163cm)だ。2月21日に初日を迎えた「第11回3×3日本選手権大会」の初戦と準々決勝を突破したあと、2日目の準決勝と決勝に向けた意気込みを聞いたときのことだった。振り返れば、チームも彼女もタイトルが懸かった大一番ではシルバーコレクターだったのだ。

3×3日本選手権では昨年、決勝で延長戦の末に敗れ、2024年には3×3 JAPAN TOUR FINALや3×3.EXE PREMIERのプレーオフでも2位だった。髙橋個人にフォーカスすれば、昨春シンガポールで開催されたFIBA 3×3 アジアカップ 2025でも決勝でオーストラリアに敗戦。大会ベスト3に選ばれ、準優勝できた喜びよりも、ミックスゾーンで開口一番に「めっちゃ悔しい」と話した姿が思い出される。

22日の準決勝、givers相手にファウルが込む苦しい展開を強いられたが、21-14で勝ち切り、決勝ではUENOHARA SUNRISEに21-12で快勝。196㎝のサイシャ・グランアレン(#77)の高さが際立つ中、ビッグマンがインサイドにいることでシュート力のある髙橋や横井美沙(#1 / 170cm)、合わせの上手い井齋沙耶(#8 / 176cm)も活きた。表彰式を終えて、髙橋に金メダルを手にした感想を尋ねると「獲れました……」という安堵した言葉が印象深い。もう今回ばかりは、絶対に勝ちたかったのだ。

また、チーム結成4年目にして、初の選手権V。二人三脚でチームをけん引してきた横井とともにタイトルを獲れたことも、髙橋にとって意味が大きかった。「彼女あっての自分だと思っているぐらい、彼女に生かされてここまで来ています。彼女にタイトルを獲らせたいという気持ちがすごく強くて」と語った。横井は奇しくも落合知也と同い年。最前線でプレーし続ける2人を見て、髙橋は「その人たちの背中を見て、しっかり追っかけていきたい」とも話す。

さらに、2日目で印象的だったシーンがもう一つあった。髙橋が所属するWリーグ・三菱電機コアラーズの吉田亜沙美らチームメイトたちが応援に来ていたことだ。昨年9月に、髙橋はコアラーズでキャリア初のWリーグ入り。それも5人制に専念するのではなく、3×3と掛け持ちして両方のゲームに出場するやり方だった。本人曰く、そのやり方を一言で言えばやはり「大変」とのこと。自分でコントロールできる部分が多いコンディションなどの体よりも「気持ちや頭の切り替えがすごく難しい」と振り返る。

ただ、シーズンを終えたばかりの5人制のチームメイトが、わざわざ3×3の応援に来ていた光景を見ると、髙橋がコアラーズでも受け入れられ、良い貢献ができていたのだと感じられた。2つのバスケットボールを行き来して信頼を勝ち取るのは、誰だってできるものではない。本人からも、両立をしていく気概を感じた。

「やっぱり私しか今、そういう選手がいない。私が頑張る意味だと思います。今シーズンは探り探りで、いろいろなことにチャレンジする年になったと思うんです。ここからシーズンの区切りを迎えると思うんですけど、3人制で結果を残すことはもちろん、5人制もしっかりチームにもっとフィットして結果を残していけるようにしたいと思っています」


小澤崚、鈴木颯が見た、Bリーグも3人制もやり続ける落合知也の姿

一方で、5人制と3×3を行き来するSHINAGAWA CITY.EXEの落合知也にとっても、3×3日本選手権の優勝はキャリア初だった。選手権には2015年の第1回大会から出場し、黎明期より競技シーンをけん引。これまで3×3.EXE PREMIERのシーズン優勝や、東京オリンピック2020でも日の丸を背負っていたが、意外にも選手権だけ頂点に立っていなかった。

大会そのものが5人制のシーズンと重なることもあって、出場が難しい事情もあったが、本人は「気にしていなかったと言えば嘘になります」と明かす。落合も両競技を行き来する苦労のひとつを「気持ちを作るのも大変」と話す。さらに、今大会に入る前、木曜日と金曜日にはB3・しながわシティバスケットボールクラブでレギュラーシーズンの試合に出場し、それ以前は肉離れもしていたという。コンディションはかなりタフだったのだ。

それでも、5人制も3人制も両方やるのは落合のキャリアにおける一環した「チャレンジ」だ。彼は「自分が(3×3日本選手権に)出て、決勝まで来て、勝てなかったことが多かったんで、絶対に今回は勝ちたいと思って本当に強い気持ちを持って臨みました」と明かす。

そしてチームは、初日の2試合を快勝し、2日目の準決勝ではNARA GREAT BUDDHERSを20-14で下し、決勝ではUTSUNOMIYA BREX.EXEに18-17で競り勝ち、初優勝を飾った。小澤崚(#13 / 177cm)やドゥサン・サマルジッチ(#10 / 193cm)、鈴木颯(#2 / 183cm)が得点を担う中、落合は体を張って相手の外国籍選手を止め、スクリーナーやアシスト役で味方の得点を引き出した。試合後には若い選手たちを称え、世界で戦う自負もにじませている。

「小澤はうちのチームのエース、日本のエースとしてやってるし、颯もすごく成長してくれました。アイツは練習中にめっちゃ怒るんですけど、試合中のパフォーマンスはめっちゃ良くなるというアニメの主人公みたいな活躍をします。荒削りなところはしっかりと教えて、良い3×3プレイヤーになってほしいと思ってます。デュカ(=サマルジッチの愛称)も万能でいろんなことができますよね」

「ただ、僕らは個がすごい選手ばかりかと言えば、そうじゃない。今回も本当にディフェンスやリバウンドから絶対に頑張ろうと。サイズがなくてもやれるところを見せてやろうというのがテーマでしたし、何よりも日本人が世界で活躍するための3×3スタイルを常に意識してやっています。それが結果に結びついたのが、すごく良かったですね」

そんなベテランの姿から学ぶことも多いようだ。チームメイトになって1年と少し経つ鈴木は、準決勝でジェフリー・パーマー、決勝でグリフィン・ビュワーを止めた落合のプレーを勝因に挙げて「チームに優勝を持ってくることに対して、数値に出ないプレーを率先してやってくれる。敢えて言いますが(泥臭いプレーに徹する)良い大人がいるからこそです。僕はこのチームを選んで良かったと思います」とコメント。クラブ、代表で共闘機会の多い小澤も落合の“人を活かすプレー”や“体を張るプレー”を「見習わないといけない」と話すとともに、ベテランの姿から自分に最も足りないところを感じていた。

「僕はシュートを決めてやっとチームを盛り上げることができるけど、落合さんは常にどんな状況でもチームを鼓舞して、良い方向に持っていくことができる。そこは本当に一番見習っていかないといけない部分だし、成長していかなきゃいけないと思います」


危機感が叫ばれる現場で、求められる選手像

5人制と3人制の競技の垣根を越えて奮闘する、髙橋芙由子と落合知也。3×3シーンの立場から見れば、本人の覚悟と努力、5人制側の理解や後押しが無ければ実現しないキャリアであるが、今大会は両選手ともにチームへ優勝をもたらし、ファンや仲間の前で活躍する姿を示すという掛け持ちする選手としてのあり方を改めて体現してみせた。

もちろん、3×3の未来を思えば、5人制をやらずとも飯が食える選手を輩出する環境が望まれるが、それ以前にプロバスケットボール選手として結果にコミットし、広くチームメイトやファンから愛されるプレーヤーにならなければいけない。10年前と比べて、いまや国内には複数のリーグ、ツアーが存在し、選手の数は飛躍的に増え、能力・スキルの高い選手も大幅に増えた。だが、その拡張に比例して心技体のそろった選手も増えているかといえば、まだまだ一握りだろう。

3×3日本選手権では、危機感が叫ばれる3人制の現場で求められる選手像を、改めて示したように感じられた。

髙橋芙由子と落合知也…3x3と5人制を行き来する先駆者たちから感じられること

TEXT by Hiroyuki Ohashi

JBA 3x3 OFFICIAL

髙橋芙由子

落合知也

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