世界へつなぐ覚悟と、街に残す覚悟——3×3が渋谷で交差した日

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2月某日、渋谷区内で「FIBA 3×3 SHIBUYA CHALLENGER 2026」の開催記者会見が開かれた。大会は4月18日(土)・19日(日)の2日間、恵比寿ガーデンプレイス・センター広場で開催される。
登壇したのは、トライクロス代表の鄭竜基、一般社団法人渋谷未来デザイン事務局長の長田新子、渋谷区長の長谷部健、FIBA 3×3 Head of Operationsのマクシミリアン・グラス、そして会場協力を担うサッポロ不動産開発の富岡良之。

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日本に3×3の国際大会がなかったわけではない。宇都宮では、上位大会であるFIBA 3×3 World Tour Utsunomiya Mastersが幾度となく開催され、日本は世界最高峰の大会を運営できる国であることを示してきた。
だからこそ、今回の「FIBA 3×3 SHIBUYA CHALLENGER 2026」は、単なる“日本初”という話ではない。焦点は別にある。
トップリーグの延長線ではなく、チーム主導で育ててきたリーグが、自ら世界への導線を引いたこと。そして、その挑戦を“渋谷という都市”が受け止めたことだ。

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「チームに世界を還元する」——リーグの覚悟
トライクロスを率いる鄭竜基は、かつて3×3.EXE PREMIER、国内トップリーグに参加していたチームオーナーでもある。リーグの現場を知り、トップダウンの仕組みも理解している。そのうえで、あえて別の道を選んだ。
「僕らが3、4年リーグをやってきた中で、チームに“必ず世界につながるんだよ”という決定的なものを作るフェーズに来たと思った」
12チームで始まったリーグは、いま男子だけで約30チーム。来季は50チーム規模を視野に入れる。ディビジョン制を整え、入れ替え戦を導入し、競技力は確実に上がってきた。だが、国内完結では足りない。
「これだけ一緒にやってきたチームに、僕らが直接還元できるものは何かと考えたときに、世界大会を誘致するしかないと思った」
マスターズではなくチャレンジャーを選んだのも戦略だ。チャレンジャーは“挑戦者の入口”。リーグ保有枠を活用し、成績上位チームに出場権を与える。さらに一部スロットを海外とのエクスチェンジに活用することで、日本チームが国外へ出ていく機会も設計する。
「トップとして名乗るなら、そこを目指している覚悟を見せないといけない」
ボトムアップで築いてきたリーグが、自ら世界への導線を引く。その象徴が渋谷チャレンジャーだ。
課題も、隠さない。囲み取材で、鄭氏は正直に語った。
「リーグ安定化が大変で、メディア露出や巻き込みは正直、手をつけられていなかった」
競技力向上は想定通り進んだ。一方で、集客や一般層への浸透は課題として残る。だからこそ、今回の渋谷開催には意味がある。“ただ試合をやる”のではなく、街を巻き込む。それはリーグの弱点を突破する実験でもある。

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「15平方キロメートルの運動場」——渋谷区の視点
会見で長谷部健渋谷区区長はこう語った。
「渋谷区は“15平方キロメートルの運動場”というコンセプトを掲げています」
渋谷は巨大スタジアムの街ではない。だが、国立競技場、代々木体育館、東京体育館とトップ競技施設が隣接する都市でもある。そして区として強調するのは、「する」だけでなく「見る」スポーツ文化だ。
「世界のトップのプレーを、この場所で見られる。それはすごく意味がある」
さらに、選手が小学校を訪問し、地域と交流する取り組みも予定されている。都市空間を使った国際大会は、単なるイベント誘致ではなく、都市政策の一環でもある。

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「都市に根を生やす」——未来デザインの文脈
共催に名を連ねる一般社団法人渋谷未来デザインの長田新子は、より都市寄りの視点を示す。
「一過性ではなく、都市に根付くレガシーを残したい」
恵比寿は、都心の洗練とローカルコミュニティが交差する場所だ。学校、商店街、住宅地が隣接するこのエリアで、3×3はどう溶け込むか。今回の設計は徹底している。
選手の移動は徒歩圏。食事は商店街の店舗を活用。会場周辺5つの公園でアーバンスポーツ体験型スタンプラリーを実施。
「最後に3×3がある、という導線にしたい」
主役は“会場”ではなく“街”。その思想を明確に表していた。

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FIBAが見る、日本と渋谷
会見に出席したFIBA 3×3 Head of Operations、マクシミリアン・グラスも、日本の位置づけをこう語った。
「日本はすべてのアセットを持っている。選手、イベント、フェデレーション。あとは実行するだけだ」
そして渋谷については、
「徒歩10分で全てが完結する。選手が街に可視化される。これは特別だ」
3×3は20m×20mで成立する競技だ。アリーナを必要としない。そのコンパクトさは、密集都市と相性がいい。渋谷は、3×3の思想そのものに近い。

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受け入れる力と、踏み出す力
宇都宮が示してきたのは、“世界を迎え入れる力”。渋谷が示そうとしているのは、“世界へ踏み出す力”。
どちらが上でも下でもない。性質が違う。
トップダウンで築かれた舞台と、ボトムアップで引かれた導線。その両輪が揃ったとき、競技は拡張する。
「失敗しても前に転びたい」
鄭氏の言葉は、今回のチャレンジャーの本質を象徴していた。完成形ではない。課題も多い。だが、踏み出す。
そしてそれを、渋谷という都市が受け止める。世界へつなぐ覚悟と、街に残す覚悟。
その二つが交差したとき、日本の3×3は確実に新しい段階へ入ったと言える。4月、恵比寿で起きるのは、単なる国際大会ではない。都市とリーグが共に挑む、次のフェーズのはじまりに違いないだろう。

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- FIBA 3x3 SHIBUYA CHALLENGER 2026













