「FIBA 3×3 Asia Cup 2023」取材記vol.2……もう最終日。吉報をシンガポールから届けたい
いよいよ「FIBA 3×3 Asia Cup 2023」は本日4月2日、最終日を迎える。3月29日の深夜に現地入りしてから、あっという間だった。飛行機とターミナルをつなぐボーディングブリッジを歩いたときに、もわっとした湿気の多さを感じて、約8ヶ月ぶりにシンガポールへ降り立った実感を得た。ただ、春の日本に浸った体を東南アジアの気候に慣らさないといけない。30度前後の気温で、湿度も半端ない。選手たちにとっては、なおさらハードなプレー環境である。
そんな中、3×3女子日本代表は12時40分より、決勝トーナメント初戦となる準々決勝・タイ戦に挑む。振り返れば、3月31日の予選ラウンドはPool Bを1位で突破したが、苦しい2試合だった。気候やコートコンディションにアジャストを求められるだけでなく、全員が初めての3人制A代表戦であり、準備期間は日本と現地で計5日間のみ。チームを作りながら、勝利を手にすることが求められた。
2試合を通じて、チームの強さが現れているのはディフェンス。相手の実力はやや劣るとは言え、チャイニーズタイペイ戦では10失点、シンガポール戦では5失点に封じた。長谷川誠ヘッドコーチ曰く、国内での代表合宿は「ディフェンス練習」に時間を割いていたとのこと。一定の成果が出ていると言っていいだろう。
一方で、オフェンスは発展途上だ。2ポイントシュートが当たらず、20本を放ちいまだ成功は無い。チームでボールを回す展開ができる時間帯もあれば、1対1が目立つ場面もあり、ムラがある。それでも選手たちは、個々の持ち味を発揮して、チームに貢献中だ。
現在、日本の得点王とリバウンド王は、早稲田大学の♯1 江村優有 (160cm)だ。12得点、18リバウンドを数え、ドライブは9本をマークする。そして、チームに勢いを与えたのは、ENEOSサンフラワーズの♯17 三田七南 (179cm)のように映った。特にチャイニーズタイペイ戦はチームトップとなる7得点11リバウンドを挙げた。本人曰く、立ち上がりから仕掛けたドライブは意識して入ったそうだ。
そんな三田の果敢なアタックは、サンフラワーズの先輩である昨夏の3×3 Asia Cup代表を務めた中田珠未を彷彿とさせた。当時、中田は、その約2週間前に「FIBA 3×3 World Cup」へ出場していたが、専らチームでの役割はリバウンドやスクリーンなど味方をいかすプレーだった。しかし、Asia Cupではそれに加えてペイントアタックでチームをけん引。本人は「ワールドカップしか経験していないけど、自分の中で大きな経験でした。自分の数少ない知識を新しく入った大学生に伝えることもできました」と、大会を終えて話していた。
そんな中田の経験は、三田が3×3に取り組む上で助けになっているようだ。「去年、3×3を始めたばかりなので、ファウルの使い方や行かせていいシュート、時間と得点とファウルの関係性などを中田さんへ結構聞きましたね」と三田は明かしてくれた。Wリーグを主戦場とする選手が、チームの中に3×3を相談できる先輩を持つ。これは、3×3女子日本代表が積んできたレガシーなんだと思った。
一方で、チームに欠かせない貢献をしているのが、アイシン ウィングス所属の2人である。
その一人、♯20 山口奈々花 (180cm)は昨年、江村と三田と一緒に、23歳以下の国別対抗戦「FIBA 3×3 Nations League 2022 – U21 Asia」で優勝を経験した持ち主。当時は「初めてで何も知らずに目の前の試合を全力でやっていた」そうだが、今回の代表活動ではまた新たな気持ちで臨めている。「合宿もしているので、タイムアウトやファウル(の使い方)、ゲームの進め方など、3×3特有のところをしっかりと学んで、プレーができている」と、競技理解が深く進んでいるようだ。
予選ラウンドでは得点こそ無いものの、球際で奮闘中の山口。「リバウンドとディフェンスはどんな状況でも変わらずできるので、意識してやりたい」と、言葉に力を込めていた。
もう一人の♯24 近藤京 (170cm)は、3×3の全カテゴリーを通して初の代表入り。本人も「びっくりです(笑)。嬉しかったけど、3×3は初めてなので、できないことが多くて不安もたくさんあった」と話す。それでもシンガポール戦ではドライブが光り、1ポイントシュートを6本中5本と確率よく決めた。まだ手探りなようであるが、決勝トーナメントを見据えて、近藤は成長を誓う。
「ドライブの判断がまだ全然できておらず、その瞬間で“行く”と決めて、昨日(予選ラウンド)の試合はアタックができました。たぶん強い相手になるにつれて、それができなくなるので、ちゃんとディフェンスを見ながら、自分の持ち味のドライブを生かしていきたいです」
昨年のアジアカップでも初結成の4人で挑み、予選ラウンドは苦戦したが、準々決勝のスリランカ戦では攻防両面が機能し、22-3で快勝。最終的に3位決定戦で敗れたが、大会を通して、チームは成長を遂げた。それだけに、今年もまず準々決勝のタイ戦を突破し、準決勝、さらにその先へ勝ち上がる3×3女子日本代表が期待される。2019年大会の3位を超える吉報をシンガポールから日本へ届けたい。
【大会日程】
女子日本代表
4/2 (日)
12:40~準々決勝 vs.タイ
17:25~準決勝(敗れた場合は19:30~3位決定戦)
20:20~決勝
詳細は大会公式サイト(英語/外部リンク)へ
【LIVE配信】
4/2 準々決勝
4/2 準決勝、決勝
【日本代表情報】
JBA3x3OFFICIAL Instagram(外部リンク)
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TEXT by Hiroyuki Ohashi