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  • 2020.10.23

TOKYO DIMEとXDがJAPAN TOURを初制覇、王者から感じた3×3との向き合い方

コロナ禍ではじまった『3×3 JAPAN TOUR 2020 Extreme Limited』のシーズンチャンピオン決定戦・FINALが、10月17日、18日に国立代々木競技場 第二体育館で開催された。6度のレギュラーラウンドを経て、女子8チーム(うち1チーム棄権)、男子9チームが集結。波乱の幕開けから、波乱なしの王者の誕生まで、2日間を振り返る。その言葉からは、競技に向き合う姿勢が浮かび上がった。

波乱と苦戦の予選ラウンド
大会の模様を思い出すと、DAY1のグループラウンドは男女ともにレギュラーラウンド1位が、初戦で敗れる波乱からはじまった。男子はCrayonが、日本選手権の覇者・TEAM TSUKUBAを受け継ぐSolviento Kamakuraに19-21で接戦を落とした。続くBEEFMAN戦こそ22点のKO勝利を収めたが、男子は9チームが3チームずつの予選POOLに割り振られ、各POOL1位と全体2位が予選を突破できるルールとあって、首位通過を逃した彼らは他チームの結果待ちに。全体2位突破へ望みを託した。


しかし別POOLのALBORDAがKOTO PHONEXに22点KO勝ちを決めたことで、彼らは勝利数で並ばれて、平均得点でわずか0.5点差に泣き、決勝トーナメントへ届かなかった。今季、ノリに乗ってるCrayonをもっと見たい気持ちは残ったが、ここではALBORDAが先月19日のツアー開幕戦の決勝で敗れた相手に、雪辱を晴らしたナイスゲームを称えたい。この1ヶ月で精神的に成長したことを感じさせてくれた。


また女子でもレギュラーラウンド最多となる4度の優勝を決めたBEEFMANが大苦戦。初戦でSHONAN SUNSに延長戦の末、17-16で敗れてしまった。序盤から硬さが見られ、気合の入った相手の守備に手を焼いてしまう。続くSHINANO signpost戦は22-7で圧勝したが、予選最後のSHOEHURRY戦は17-16の薄氷を踏む試合だった。相手は3人のエントリーで、練習量も彼女たちに比べれば積めていないチーム。それだけにツアーを通して強烈だった人もボールも動くアグレッシブなスタイルが鳴りを潜めた様子を見ると、自分たちの力を出し切ることの難しさを、改めて感じさせられた。


初優勝のXD、多くの方に支えられての頂点
決勝トーナメントのDAY2では前日とは対照的に、男女ともにチームの長所をゲームに落とし込み、やるべきことを徹底した者たちが、頂点へ駆け上がった。当たり前な話であるが、3×3を制するベストアンサーを出すのは、一朝一夕ではできないものだ。

まず女子はXD(クロス・ディー)が初優勝に輝いた。準決勝ではレギュラーラウンドで全敗だったBEEFMANを、延長戦の末に22-20で撃破。ツアー屈指のスコアラー・齋藤桃子(#54)がスピードのミスマッチを突き、さらに彼女からのパスを高橋優花(#23)が値千金の2ポイントシュートにつなげて、仲間の期待に応えた。そして決勝ではTOKYO DIMEを下したSHONAN SUNSとのロースコアゲームを14-11で制した。

彼女たちはチームとして初のタイトルを獲得。しかし齊藤、塚野理沙(#13)、猪崎智子(#6)の3人にとって、決勝では今年1月のJAPAN TOUR FINAL、2月の日本選手権で2連敗していただけに、3度目の正直という感覚があったことだろう。しかし斎藤に話を訊くと優勝したこと、MVPを初受賞したこと以上に、感謝の気持ちのほうが強かった。

「ここへ来るまでに、お世話になっている方たちがいらっしゃいます。SHOEHURRYさんは、試合がない週末にも練習へ誘っていただきました。本当に毎週のようにゲームライクに3×3ができたので、今日の結果につながったと思います。自分たちだけでなくて、他のチームの力があってこその優勝です」

SHOEHURRYとは今大会にも参戦しているチームだ。平将貴氏が代表を務めるバスケットボール選手に特化した育成やマネジメントに取り組む集団で、矢野良子(#12)もその協力を仰いでチームに携わる。女子は男子に比べて競技環境は、いまだに整っていない。ただ、そんな中でも斎藤らは数少ない場で、成長を遂げた。「練習したことをいきなり試合でやることは難しいのですが、そういう環境でゲームを通して試したり、調整したりできるので、やるとやらないとでは全然違います。矢野さんは普及も取り組んでいらっしゃる方で、そこでは若い選手たちとプレーする機会もあるので、嬉しいですね」と、女子3×3の先駆者による取り組みは、後進の力になった。

新たなチャンピオンは、今後も競技シーンで際立つ存在になるだろう。ただ、齊藤にフォーカスされがちだが、強さの秘訣はそこではない。「私は周りの選手にいかされて試合をさせてもらっている感覚が大きいです。みんなが自分にはできないことを頑張ってくれている。そういう背中や心の部分で支えられています」と、仲間あってこその自分であると、言葉に思いを込めて話した。練習によってチーム全員で上手くなる。そのために目の前の環境を楽しみ、先輩や後輩と切磋琢磨する。気負うことなく、ひたむきにやったからこそ、優勝にたどり着いた姿がそこにあった。

初VのTOKYO DIME、長所をいかして最適解を導く
一方で男子もTOKYO DIMEがチーム史上初のJAPAN TOUR優勝を飾った。準決勝ではSENDAI AIR JOKERを205㎝の岩下達郎(#20)で押し込み、21-20の逆転勝ち。決勝ではALBORADAを破ったSolviento Kamakura を20-14で突き放した。先行を許すも、相手のミスに乗じて、鈴木慶太(#7、K-TA)の好守や逆転弾で流れを取り戻す。そしてB.LEAGUEのレギュラーシーズン2ゲームを経て、3連戦目の落合知也(#91)がゴール下をこじ明けて勝利を決定づけた。そしてK-TAがMVPに初選出されて、タイトルボードを笑顔で掲げる4人の光景が広がった。

大会がクロージングして思うことは、「DIMEはやっぱり強かった」という感想に尽きる。今季はJAPAN TOURのレギュラーラウンドで2度の優勝を飾ったが、3×3.EXE PREMIER CUP(10/11)や2度のF1 Tournamentでは準優勝。1月のJAPAN TOUR EXTREME FINAL、2月の日本選手権でも2位に終わったことを結びつければ、その力を疑ってしまいそうになった。だが、これは見当違いもはなはだしかった。

DAY1では3人でビハインドを背負っても慌てず、アドバンテージを獲った選手が結果を出し、僅差の展開で踏みとどまる粘りが蘇った。MVPこそK-TAが選ばれ、小松も落合も安定したパフォーマンスを発揮したが、両日ともに岩下が奮闘した様子も印象的だった。K-TAへこれについて聞いてみると、次のように教えてくれた。

「最近は岩下を使った練習を重点的にしています。WORM(落合)がB.LEAGUEの活動で練習に参加できないので、3人で取り組むことも多いですね。彼自身も結果が出ていないことに責任を感じていました。でも、もう少し僕らも彼をどう組み込めば、良さが本当にいきてくるのか。今年はこれを突き詰めてやったことで、3人で勝ち切ったJAPAN TOUR(Round.3)や、FINALの優勝につながったと思います。岩下が伸びたことで、プラスになっている実感がありますね」

これまでのTOKYO DIMEはK-TA、小松、落合の3人を軸に、外国籍選手やBリーガーを加えたメンツがベストであった。しかし、いまはイレギュラーなシーズンであるため、岩下が担う役割は大きい。ただ相手にとって、高さは脅威であるものの、スピードとフィジカルの差を突いて、勝機を見出すポイントでもある。今年に入って、DIMEを破ったライバルたちはコメントに「落合さんがいないから」、「ベストメンバーではないのですが」と枕詞がつく。岩下にFINALをどういう気持ちで戦ったのか聞いてみた。

「僕は言ってしまえば、サブメンバーでした。ただ今季はコロナ禍という状況ですが、選手としてはチャンスです。ここ1年間、いまのままではいけない。そう思ってシーズンオフは体を変えるつもりでトレーニングを積んできました。TOKYO DIMEの一員として認識される、そして優勝に貢献できるメンバーとして、ブレイクスルーしたかったんです」

彼は2014年に誕生したチームで唯一の生え抜き選手だ。一時、本業の都合で抜けた時期もあったが、彼がいたからこそ勝った試合がある。プロサーキットを転戦して進化する仲間を尻目に悔しい気持ちもあったと思うが、今大会の動きを見れば、まだまだやれることを証明した。もちろん弱点はあるが、205㎝は彼だけのもの。以前、小松が「DIMEの選手はそれぞれ強みもあって弱みもありますが、強みだけを見ると尊敬できるんですよね」と語っていた。勝ち切れない時期でも下を向くことなく、お互いの長所に目を向け、チームを作り上げて、コートで最適解を導き出す。結果出し続けるDIMEのあり方を、今一度、体現してくれた。なお、彼らは優勝したことで「FIBA 3×3 Challenger」の出場権を獲得。対象大会は未定だが、再び世界で戦う勇姿も楽しみにしたい。

成長の余地を残す国内シーン
さて、9月19日に開幕した2020シーズンのJAPAN TOURは、これを持って閉幕する。あっという間の1か月であったが、選手たちはいま披露できる最高のプレーを見せてくれた。




最後に決勝進出は逃したが、SENDAI AIR JOKERについて触れておきたい。2018年より始動した彼らは、初年度こそ結果に苦しんだが、宮坂侑(#2)を中心にドライブと2ポイントシュートをおり交ぜるアップテンポなスタイルを磨き上げて、今大会は2月の日本選手権に続く4強入りを果たした。地方参戦組としては堂々の結果である。いまの成果に満足はしていないが、「軸となることはぶらさずに続けてきたことで、自分たちのスタイルが少しずつ確立して、結果が出てきていると思います」と宮坂は手ごたえも感じている。

さらに、彼は2014年の3×3.EXE PREMIER 開幕シーズン、当時のGREEDYDOG.EXEで落合知也とチームメイトだった。あの時はまだ大学3年生。「落合さんには3×3を手取り足取り教えてもらったんですよ」と振り返ってこう続けた。

「お世話になったからこそ、もういつか、やっつけたいんです(笑)」。まだまだ国内シーンは成長の余地を残している。

結びに
この前例のない状況で、JAPAN TOURを指揮した日本バスケットボール協会(JBA)のスタッフ、ゲームを裁いたレフリー、さらは無観客試合に対応したLIVE配信や選手たちのパフォーマンスを支えたMC MAMUSHIやDJ MIKOをはじめとしたコートサイドの主役たちによって、無事にツアーがクロージングされたことを記しておきたい。ありがとうございます。

Withコロナで競技シーンを取り巻く環境はすぐに明るくなることはない。それでも、いまは限られた中で選手や関係者、ファン・ブースターという携わる者たちが、目の前の大会をやり切る、どれだけ楽しめるかが、なによりも大切だろう。それぞれの立場で次なる一戦を、ベストトーナメントにオーガナイズしていきたい。

TOKYO DIMEとXDがJAPAN TOURを初制覇、王者から感じた3x3との向き合い方

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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