UNDER ARMOUR「JOEL EMBIID STORY」

FEATURE | DEC. 3, 2018

「バスケットボール以上の意味がある」
76ersのジョエル・エンビードが語った、生い立ちと夢

NBA屈指のセンタープレイヤーである、フィラデルフィア76ersのジョエル・エンビード。彼はアンダーアーマーとの契約発表に際して、自身がNBAにたどり着くまでのストーリーと、これから成し遂げたい夢について語った。歯に衣着せぬ発言で何かと話題になる、エンビードが伝えたかった思いとは――――。

これはただのシューズの話ではなく、バスケットボール以上の意味がある話です。 私、ジョエル・エンビードはアンダーアーマー ファミリーの一員となりました。 しかし、聞いてほしいのはシューズについての話ではありません。 少し物語をお話しします。10分ほどお時間をください。決して後悔はさせません。 この物語は2011年のカメルーンから始まります。 よくある映画の回想シーンを想像してみてください。スクリーンが真っ暗になって…

ヤウンデ、カメルーン
2011年

(首都ヤウンデをヘリコプターから空撮、徐々にズームインしていくと、そこには16歳のジョエル・エンビード青年が。ぶかぶかの半袖シャツを着ており、痩せっぽちでファッションセンスもゼロ。バレーボールの練習から歩いて帰宅、いやダッシュ。宿題の時間をたくさん取るために母親に帰宅時間は15分と決められていたので、ダッシュで帰宅する青年です)

想像できていますか?そんなシーンを。 次の日、僕の人生は変わったのです。当時、バスケットボールをちゃんとプレーしたことは無いに等しかったです。本当に皆無です。母親が買い物に行っている間に家を抜け出して、公園で少し遊ぶ程度。でも背が高かったこともあり、あるコーチに声をかけられ、キャンプに招待されました。カメルーンでは一大事です。キャンプは次の日から始まると告げられました。 まさに一生に一度のチャンス。 自分を信じて、自分の夢を信じてこのキャンプに参加すれば、必ずNBAに行けると確信していました。 本気で信じていました。これが運命だと。

なんてね、冗談です(笑)。 確信や自信なんて1ミリもなかったです。 見知らぬコーチがいきなり話しかけてきて「キャンプに参加すればアメリカに行ける」と、訳の分からないことを言うのです。 「アメリカ?お言葉ですが、ドリブルすらまともにできないんですけど…」と目で訴えながら、コーチの話を聞いているだけでした。 キャンプに参加して、恥をかくのが怖い。だからキャンプに行かなかったんです。 母親は親戚を訪ねてフランスに行っていて、家を留守にしていました。父親は仕事。当時は携帯なんて持っていなかったので、誰にも見つかることはありませんでした。 千載一遇のチャンスだというのに、家で弟のアーサーと一日中ゲームをしていました。 何が悲しいって、別に最新のゲームでもなかったし、最新のゲーム機でもなかったのに。 アーサーは母親のお気に入りで、何をしても許されましたが、僕には厳しかった。母親の留守をいいことに、宿題を放ったらかして普段できないゲームを一日中思う存分プレーしました。NBAへの夢が刻一刻と幻となっていく中、一日中ゲームに没頭しました。 そんな時、急に父親が帰宅しました。 私がキャンプに現れなかったので、コーチが父親に連絡をしたのです。 父親は軍人です。ただの軍人ではなく、将校。それも絵に描いたような、典型的な将校。声を荒げなくても、目を見れば背筋が凍る様な威厳があふれる感じ。分かりますか?

父親に知られた以上、僕には次の日にキャンプに行って恥をかくという選択肢しかありませんでした。それでもコーチ陣は僕が姿を見せないであろうと、家まで迎えに来てキャンプへ連行されました。うそみたいですけど本当の話です。 僕はひたすら「悲惨な結果が目に見えているのに、なぜみんなはこんなに自分を気にかけるのだろう」と道中で考えていました。 来たるキャンプは、実際のところ悪くありませんでした。初日にダンクを決めました。マイケル・ジョーダンみたいに華麗に宙を舞ったわけではないですけど。プレーヤーを飛び越えて、ほとんど跳ばずに決めました。そしたらみんなが「やばっ!」みたいになって。 まさか、この日で人生が変わるなんて思ってもいませんでした。心のどこかではまだ家に閉じこもってゲームをしていたかったのです。しかし、キャンプで注目を浴び、南アフリカで開催されるバスケットボールの大会に招待されました。ここでもリクルーターの目に留まり、アメリカの高校に進学してプレーすることになったのです。一瞬の出来事でした。数カ月ですべてが進み、カメルーンを出発してフィラデルフィア・セブンティシクサーズにたどり着くまでの期間は3年。両親やコーチたちが僕を信じてくれていなければ、きっと未だに家で弟とゲームをしていたでしょう。一人では決してこの夢を叶えることはできませんでした。あっという間にことが進み、カメルーンを離れて3年。一度も戻ってくることができないほどでした。

すべてを置き去りにしたのです。でも、どんなことが自分の身に起こっても、家族はまったく動揺しませんでした。カンザス大学に進学した時も、セブンティシクサーズにドラフトされた時も、大ごととはとらえませんでした。カメルーンではちょっと感覚が違うのです。両親は僕を医者にしたがっていたのです。もちろん、NBA入りを誇りに思ってくれましたが、それ以上でもそれ以下でもありません。一番喜んではしゃいでくれたのは、弟のアーサーでした。僕を追いかけるようにバスケをプレーして、アメリカに行くのを夢みていました。

僕たちは恵まれた環境で育ちました。決して裕福ではなかったけど、必要なものは手に入りました。僕たちの周りはというと、そうではなかったですが。 一文無しの子どもたちも、少なくありませんでした。アメリカから家に連絡をしていたころ、よく父親がアーサーの話をしました。家にある物を、困っている近所の子どもたちに分け与えているのだと。大したものではないけど、食料や服などみんなが必要としているものをあげていました。弟の感覚では、ただ分け合っているという意識だったのです。たった13歳ですよ?普通だったら誰が一番強いとかカッコつける歳ですが、弟は違いました。弟はみんなが普通に暮らせるようにしたかったのです。そんなことを考えて実行する子どもなどいるでしょうか?本当に、本当に自慢の弟でした。弟も僕のことを同じように思ってくれました。 弟の存在は、この地球にはもったいなかったのかもしれません。僕がドラフトされた数カ月後に、弟は交通事故でこの世から去りました。

僕の人生は永遠に変わりました。とてつもなく辛い時期でした。長い間離ればなれだったということもありますし。

弟の死後、自分自身に言い聞かせました。自分の人生は、バスケットボール以上の意味を持たなければいけないと。僕はチャンスをもらってアメリカに来て、NBAでプレーし様々な経験をしていましたが、実際に人の人生を変えていたのは弟でした。 アンダーアーマーと話をした際に最初に話したのは、僕たちの関係はただの物品契約という話ではなく、バスケットボール以上の意味を持つということです。僕は人々の人生を変えたい。 この夏に南アフリカへと戻った時、子どもたちが憧れの眼差しで自分を見ていました。7年前は自分が逆の立場で同じような憧れを持っていたと思うと、不思議な感覚でした。 中には苦しみを抱えている子どもたちも少なくありませんでした。みんなの目を見れば、痛みや悲しみが伝わってくるのです。生きることがどれだけ大変なのか。忘れもしない、ある孤児院を訪ねた時、隅にいたひとりの子が僕のことを見ていました。ジッと、一言もしゃべらずに。急に駆け寄ってきて、僕に抱きついたのです。まるで親子みたいに大きなハグで、最高の瞬間でした。 この子たちは何も持っていないかもしれません。でも愛に満ちあふれていて、計り知れない可能性を秘めています。

これはアフリカだけの問題じゃありません。世界中を、そしてアメリカ国内を見ても、たくさんの子どもたちが基本的なことで苦しんでいます。もっとよくしていけるはずなんです。

バスケットボールは自分にすべてを与えてくれました。しかし、バスケットボールにはそれ以上の意味がなければなりません。 それが、僕がアンダーアーマーへ最初に伝えたことです。それに対して、彼らは100%サポートの意志を示してくれました。 これはただのシューズ契約ではありません。それ以上の意味があるのです。このパートナーシップを通して、本当に意味のあることをしたいのです。弟が誇りに思ってくれるようなことを。まずはフィラデルフィアから始めていきたいです。

アフリカからアメリカに来ると、すべてが完璧であると期待してしまいます。みんなが穏やかに暮らしていると。 しかし、フィレデルフィアで見た現実は違いました。貧困や苦しみはここにもありました。僕がけがや痛みに悩まされている時も、ずっと力をくれました。 けがで2年ぶりに戻って来たとき、正直、ブーイングの嵐を受けると思っていました。アリーナから追い出されるのではないかと。 しかし、ブーイングは一つも起きませんでした。そして、初得点した時の大歓声は、本当に力になりました。 フィラデルフィアについては悪く言われることもありますが、この町は初日から僕を迎え入れてくれました(初日は言い過ぎかも(笑)、2日目からかな)。 みんな過程を信じて、僕を支えてくれました。今度は僕がみんなを支えられるように全力を尽くします。アンダーアーマーと一緒にどでかいことをやっていく予定です。フィラデルフィアのコミュニティ、そして世界中に向けてサプライズを計画中です。

共に歩む仲間は揃いました。これからバスケットボール以上のことをしていきますので、ご期待ください。

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