3×3は1日にしてならず、日本代表はW杯の経験を糧にどう積んでいくのか

COLUMN | AUG. 6, 2019

3×3は選手やチームがスキル、経験を積んだ先に結果がついてくる競技である――
6月にオランダで開催されたFIBA 3×3 WORLD CUP(以下W杯)で、男子はアメリカ代表が、女子は中国代表が初優勝を飾った。

Text/Hiroyuki Ohashi
Photo/©JBA


男子はアメリカが4連覇を狙った世界ランキング1位のセルビアを予選リーグの初戦でいきなり破り、決勝トーナメントでもスロベニア、ポーランド、ラトビアの欧州強豪らをなぎ倒して、無傷の7連勝で初のタイトル獲得に至った。結果だけを見れば、ついにバスケットボール大国が“本気を出した”という見方になるが、実際のところは彼ら4人のうち3人が、クラブ世界一を争うFIBA 3×3 WORLD TOUR MASTERSをはじめとしたプロサーキットの舞台で戦ってきたPrincetonの選手たち。転戦を通じてチームを作り上げ、目に見える結果へ結びつけた。


オリンピックへ弾みをつけられず

一方で、日本代表は男女ともに予選敗退。男子は3×3国内ランキング1位、2位の落合知也と小松昌弘、Bリーガーの小林大祐と保岡龍斗が初めてチームを結成したが力及ばず・・・ 落合が大会中に負傷するという不運もあったが、それはゲームを構成する要素のひとつに過ぎない。女子は全員がWリーガーという編成で挑んだが、4試合中3試合を2点差で落とすなど、経験不足を露呈した。2月に代表活動が始動してから5人制トップリーガーを積極的に招集して強化を進めてきたが、東京オリンピックに向けて弾みをつけられるような成績は残せず、収穫はありつつも、改めて宿題を突きつけられたと言っていいだろう。


ハイライトは挙げるなら敗れた初戦

そんな中、ハイライトを挙げるとしたら、落合抜きで勝ち切ったポーランド戦(〇21-17)というより、敗れはしたが、限られた時間で最善の“準備”と“ディフェンス”で拮抗した展開に持ち込んだ初戦のラトビア戦(●11-14)ではないだろうか。プロサーキットでもRIGAとして戦うヨーロッパの雄は、ドライブや素早いパスワークでアップテンポな展開を得意とする。それに対して日本は入念なスカウディングを行い、ディフェンスの約束事を徹底して、その長所を消しにかかるなど、この一戦にピークを持ってくるように大会へ臨んだと小松は明かす。

さらに予定されていたチェコ遠征だけでなく、直前にはウクライナ(W杯ベスト8進出)と練習試合を組み、「接戦の良いゲームを行うことができて、ディフェンスの強度や、ぶつかり合いのところでの体感を得ることができた」と、ポジティブな状態で本番へ向かった。言わずもがなこの試合で勝利は欲しかったものの、準備したプランを終始遂行して、粘り強い攻防からロースコアゲームを体現できたことは、いまの日本が世界で勝つための可能性を見出してくれた。もちろん3×3では勝敗で複数チームが並んだ場合、次に総得点が順位決定の判断指標になるため、21点さらには22点を目指すことが必要になるが、まずは相手の得点をいかに抑えるか。大会を通じて、「ディフェンスの強度は、ここまでやってはじめてノックアウトされないんだ、という感覚を初めて思いました」と、小松は2016年、2018年に続く3度のW杯を経て、ようやく強豪国とやり合える見通しが立った様子だった。




悩み多き課題を振り返る

だが、それ以上に課題も山積している。攻撃については、1点の取り方。これには2つの側面がある。ひとつは、選手同士の細かいコミュニケーション。今大会はW杯用の即席チームであったため、パスの出し手と受け手のタイミングが合わないシーンが散見された。小松は「僕のスクリーンダイブで(ボールが)入らなかったり、(僕を)使う側もパスが簡単にとられてしまったり、ターンオーバーが多かった」と、オフェンスのコンビネーションで詰め切れなかったことを言及した。

もう一つは、激しく体を寄せられても1点を取る切る力である。対戦相手のレベルがあがるほど、完全にフリーになるシチュエーションは少ない。彼は「最終的にはタフなディフェンスの中でいかに(点を)取れるか。あのレベル(=強豪国との対戦)では簡単な1点は取れないと思うので、その戦い方をしないといけない」と語る。小林と保岡がいたことによって、2点の強みは発揮できただけに、この部分を来年までにアップデートできるか。「阿吽の呼吸」でプレーが展開できるようになるには、同じメンバーでやり続けることが一番の近道であり、競り合いに負けずに決めきる力は個々のフィジカルを上げ、インテンシティーの高いゲーム環境に身を置き続けるほかない。

加えて、攻守に生命線となるリバウンドも悩みどころになった。小林は大会を通じて、ディフェンスとともにこの弱さに「危機感」を感じたという。スタッツを見返すと4戦のうち、勝利を収めた2戦ではこの数字がほぼ同等であったが(ブラジル戦 16本vs.14本、ポーランド戦 14本vs.14本)、負けた2戦では大きく下回った(ラトビア戦 13本vs.23本、オーストラリア戦8本vs.19本)。この結果、シュートアテンプトは相手より30%以上削られている。「リバウンドの本数を(相手よりどうやって上回れるかを)考えると、オフェンスリバウンド。イーブンイーブン(のボール)にどちらが食らいつけらるかであり、ディフェンスとオフェンスリバウンドの数を一番、僕の中ではやらないといけない(小林)」と、苦い経験を糧にステップアップを誓う。


五輪まであと1年をどう積んでいくのか

W杯後の、代表活動はアンダーカテゴリーを除いていまのところ発表はない。五輪まであと1年と迫った中で、どのように強化を進めていくのか。JBA(日本バスケットボール協会)にはその手腕が問われるところだ。ここ半年で3x3を積み上げてきた選手の多くは夏以降、5人制のシーズンを迎える。個々のスキルアップは所属先で解決することができるが、チーム作りは集まらないと深化しない。かつて5人制日本代表がシーズン中の平日に合宿を開いたように、3人制もミニキャンプの実施や、選抜メンバーをMASTERSの下部大会であるCHALLENGERやQUEST、国内のJAPAN TOURに送りこむなど、実践経験とポイント獲得の機会を創出したい。

クラブレベルに目を向ければ、選手たちはプロサーキットに挑み、結果にこだわるべく奮闘を続ける。インテンシティーの非常に高いハイレベルな海外のゲームをスタンダードとして3×3を吸収し、レフリーの判断基準もインプットすることは、日本にとって大きな財産だ。

小林はUTSUNOMIYA BREXの一員として、セルビアで行われたBELGRADE CHALLENGER(7/13-14)に参戦。予選敗退に終わったが、世界No.1クラブ NOVI SADや、地元の強豪・BELGRADEと戦った。そして落合と小松はTOKYO DIMEでHUAIAN CHALLENGERに出場(7/20-21)。準々決勝でスロベニアのLJUBLJANAという難敵を破り、今季2度目のベスト4進出を果たして、最終順位を過去最高の3位に更新した。落合はこの結果を受けて、「僕たちが毎週末CHALLENGERへ行っていることは、すべて日本代表に還元できることだと思う。実際にW杯で“チーム”になれたことは、僕と小松が入って、ひとつのチームを作ろうと明確にできて、ダイスケやヤスがついてきてくれたから。4人がまとまって、各個人の強みを出せたからこそだと思う。もっともっと良くなると思うし、もっと同じメンバーでやれる機会があれば、良いチームを作ることができる」と語った。

そして、彼らが海外で得た知見は国内シーンにもまた必要不可欠。本人たちもそれを強く自覚している。今季は唯一、2度の日の丸を背負った小林は「僕らがせっかくチャンスをもらったので、国内のディフェンスの仕方やリバウンドの意識を変えていかないと、どんどん(世界から)置いてきぼりになってしまう」と、高みを経験したからこそ、厳しい口調でその役割を全うすることを誓った。3x3.EXE PREMIERやJAPAN TOURといった日常レベルをいかに世界の基準に近づけられるか。これは選手たちの危機意識だけに任されるものでなく、コート内外で取り巻く環境の整備も同時になくてはならない。3x3に関わる人たちの宿題であることも認識しておくべきだろう。

ここ半年で日本代表は劇的に変わってきた。だが、残した結果は十分ではなく、もっとやれるだろうし、メダル獲得を本気で目指しているなら、さらにやるしかない。3×3は1日にしてならず。日の丸を背負うことを渇望する選手たちによって、積んでいくことが何よりの強化になる。







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