2018-19 SEASON PLAYBACK|vol.2 篠山竜青

COLUMN | JUN. 8, 2019

Bリーグ3シーズン目の王座を決めるチャンピオンシップ。クォーターファイナルの4カードでも激戦が予想されたのが栃木ブレックスと川崎ブレイブサンダースの対戦だった。しかし、結果は栃木が容赦のないディフェンス力で川崎を圧倒し、最短の2戦でシリーズに幕を下ろした。リーグ初年度でファイナルを戦った相手に、無残に散った川崎。その中で最後まで力を出し切り、チームを鼓舞し続けるキャプテン、篠山竜青の姿があった――

Text/Kaz Nagatsuka

第2戦の第3クォーター。前日の初戦に引き続き、この日も栃木が得意のプレスをかけて襲いかかってきた。その一方で、川崎は相手の得点を止められない。前半終了時の4点のビハインドは、瞬く間に広がっていった。このクォーターをわずか6点に抑え込まれた川崎。歯がゆいシーズンが、終わろうとしていた。


「自分のPGとしての力量不足」。2試合連続でオフェンスが機能しなかった責めを、篠山は負った。

それでも、篠山は「篠山の役割」を果たそうとしていた。どれだけ点差が開いても、プレーが止まれば味方のところへ駆け寄り、指示を与えた。層の厚さを生かして次々と選手を入れ替えてくる栃木に対して、川崎の面々の脚は終盤、動かなくなっていた。


最終第4クォーター、残り3分半。すでに勝負は決したと判断したのか、北卓也ヘッドコーチは篠山をベンチに下げた。篠山はそれでも、接戦の時と同じようにベンチで立ち上がって、手を叩きながらコートに立つ仲間へ向けて檄を飛ばした。

なぜそうした行動を取ったのか――。愚問だとも思いながら、訊いた。篠山は答えた。アウェーの宇都宮まで来て背中を押してくれたファンたちへ、最後まで戦い続ける姿を見せるためだった、と。

「とにかくファンの人たちへの思いというか。新幹線か何かわかりませんが、ここまで来て、声が枯れるまで応援してくれて…あの点差になっても最後まで…」

Bリーグが始まるまでは、東芝での通常業務をしてから練習に臨む社員選手だった。その頃から弁の立つ選手だったとは言え、同リーグが立ち上がって3年目。影響力の大きい日本代表にも選出されてきたこともあり、プロ意識はより一層、膨らんでいたようだった。

「そういう人たちあっての職業だと思っているので」。応援してくれるファンたちの存在がなければ成り立たないのだと篠山は強調した。「一番は結果で、その声援に対してお返しするのが一番、正しい方法ですけど、試合が終わらない限り、ファンの人たちに“何か”を感じてもらえるようなプレーをしなきゃいけない、っていうのは、僕はもちろんですけど、このチームにはあると思うので。そういう意味では最後までみんなハードにやってくれたと思います」。

この2戦目、篠山自身も栃木の強度の高いディフェンスの前に6つのターンオーバーを犯した。自信やプライドを引き裂かれるような敗れかたをした直後に、しっかりとした口調で、ここまでの言葉を紡ぐことができる選手がリーグにどれだけいるだろうか。頭が下がった。

川崎にとって今シーズンはなかなか波に乗ることのできない、フラストレーションの溜まるそれだった。篠山、ファジーカス・ニック、辻直人が日本代表活動に時間を割かねばならなかったことに加え、昨夏に足首の手術を受けたファジーカスのコンディションが整わずに出遅れた。十全に練習をする時間が限られてしまったチームは、なかなかプレーの精度を上げることができなかった。

「うちは歯車が合えばどのチームにも勝てるチャンスがある」「シーズン終盤になってようやく見えてきたものがある」CS直前の会見で篠山はそう口にしたが、一方で「歯車が合わなければどのチームにも負ける可能性がある」とも付け加えていた。

他意はなかったかもしれない。あるいは、ほんのわずかな弱気が顔をのぞかせたか。あるいは、自分たちの尻に火をつけるためにそう言ったのか…。そこを斟酌するのは難しいが、少なくともBリーグが始まってから、そういうセリフを彼の口から聞いたことはほとんどなかったように思える。




完膚無きまでの敗戦でシーズンを終えた篠山。Bリーグ初年度の優勝決定戦で対戦した栃木に差をつけられたこともあって「危機感を覚える」と吐露した。メディアを通じて球団にメッセージを送る意図が彼にあったとは思えない。だが、何かをドラスティックに変えなければ川崎が今年食い込むことができなかった、彼の言う「トップグループ」へ戻ることはおぼつかないだろう。

日本代表での活躍とは裏腹に、篠山竜青は今、壁を感じているのではないだろうか。

苦しみは人を成長させる。「壁」を乗り越えた篠山とブレイブサンダースの真価が問われるのは、これからだ。

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