2018-19 SEASON PLAYBACK|Vol.1 比江島慎

COLUMN | JUN. 7, 2019

今からほぼ1年前、比江島慎は6年間過ごしたシーホース三河を離れる決断を下した。自身に対する新たなチャレンジの舞台は、オーストラリアのトップリーグ、NBLのブリスベン・ブレッツになるはずだった。オーストラリア代表でも指揮するアンドレイ・レマニスコーチは比江島の実力を評価していたものの、言葉の壁が思った以上に厚く、出番がないまま時間だけが経過。年明け早々にブレッツからカットされると、昨年夏に一度入団に合意した栃木ブレックスでプレーすることになった。

Text/Takashi Aoki

シーズン終盤に持ち味を発揮するシーンが増えたといえ、比江島にとっては変化と新たな環境の中で葛藤し、戸惑いの日々に直面した1年だったとも言える。B1ファイナルから数日後に行われた取材で、葛藤をテーマに幾つか質問してみた。最初に聞きたかった内容は、やはり海外でやりたいということと、試合に出たいという部分。比江島はいつもと変わらず、質問された後に自分の考えを整理するかのように少し間を置いた後、次のように返答した。

「オーストラリアですよね。もちろん、ある程度の覚悟を持って行って、もっとすんなりうまくいくし、試合も出られるじゃないかという気持ちで挑戦していました。それがうまくいかず、初めての経験というか、あまり試合も出られずにベンチに座っていたという、そういった経験がなかったので、どうしたらいいのか全然わからず、日本に帰ろうかなと考えた時期もありました。でもいろいろと練習の中でやっていくしかなかったですし、シーズンの始めは本当に苦しい時期というか、戸惑いというか、本当に試合に出たいという葛藤がもちろんあったし、そういう経験ができたというか、そんな感じです…」



28歳という年齢を考えると、まさに全盛期を迎えているのに試合に出られない状況が続くのは、比江島にとって明らかにマイナス。日本代表で欠かせない選手であり、渡邊雄太と八村塁のいない中でワールドカップ予選を勝ち抜かなければならなかったことからすれば、比江島が試合感覚を失いたくないと思うことに驚きはない。オーストラリアから帰国して栃木に入団したことは、環境の変化や違うシステムでプレーするという意味で、新たなチャレンジと言えるものだった。

シーズン途中での入団ということもあり、比江島はスターターでなくベンチスタートの役割を受け入れた。スターターで出たいという気持ちと、チームの一員としてなんとして勝ちたいという気持ちの葛藤についても、筆者が確かめてみたかった部分の一つだった。

「今までスタメンでやってきたし、スタメンで出たいという思いはあったんですけど、本当にある程度完成されているチームというか成績もいいですし、流れを崩したくないということじゃないですけど、自分が入ってまた1から作り直すよりも、スタメンはスタメンで出てもらって、控えから出たほうが自分もいいと思っていたし、コーチもそっちのほうがいいんじゃないかということで、いろいろ相談しながらですけど、そこは受け入れましたし、絶対にスタメンがいいという思いはそんなになかった。今シーズンに関しては、勝つために一番どうしたらいいかを考えましたので…」

スターターとして出られないこと以上に、栃木のディフェンス対応に慣れることが、比江島にとっては予想外の戸惑い。安齋竜三ヘッドコーチはメディアに対し、「代表でこのレベルのディフェンスなのか?」「かなり不安がある」といった比江島のプライドを刺激するようなコメントもしていた。オーストラリアでの経験はディフェンス面で自信になっていただけに、新天地でプレーすることで初めてわかる違い、それも途中で入ることの難しさを比江島は感じていたのである。

「オーストラリアでは自分よりも大きい相手に対してのディフェンスで手応えをつかんでいたんですけど、対日本人ということころでは違うと感じました。もちろん、ディフェンスの仕方もシステムも違うし、栃木のほうが細かいディフェンスの指示もあるので、そういったところでまだ初体験だった守り方もあったし、たまにボーっとしてしまってヘルプができていなかったといったことが最初あったので、そこに戸惑いはありました」

今まで積み重ねてきた自信を失いかけながらも、比江島は栃木の選手として必要なディフェンスを身に付けようと、辛抱強く練習に取り組んでいた。ゲーム1で14点、ゲーム2で18点と奮闘した千葉ジェッツとのセミファイナルは、コート上で躍動する自信満々の比江島本来の姿を見られただけでなく、課題と言われたディフェンスの質を上げてきた証と言えるパフォーマンスでもあった。

「オーストラリアに行った時も自信は失いかけたし、でも練習でやれなかったわけじゃなかった。日本に帰ってきてオーストラリアでやっていたという自信というか、プライドを失わずにやってこられたし、最初(栃木に)入ってまた戸惑いとか自分のプレーを生かせなかったり、そういったところでも葛藤というか、自信を失いかけたというか…。もちろん成長するために栃木に移籍してきましたし、その中で失いかける時もあったんですけど、ディフェンスの部分で向上できたし、自分らしいプレーも出していけたので、今は自信を持ってというか、成長できたかなと思います」




こう語った比江島は、激動の18-19シーズンをポジティブに捉えている。心身両面で蓄積した疲労を回復させるための日々を過ごした後、ダラス・マーベリックスのミニキャンプに招待されるというニュースが入ってきた。ワールドカップで3年前の五輪最終予選で負けたチェコへのリベンジ、NBAのスター軍団になることが濃厚なアメリカにチャンレジできる楽しみの前に巡ってきたチャンス。日本にないタイプの選手たちとマッチアップできる機会は、自身のレベルアップだけでなく、ワールドカップへ向けたいい準備となるに違いない。

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