Analyst report「千葉ジェッツ VS アルバルク東京」

COLUMN | MAY. 14, 2019

スポーツアナリスト西原雄一が分析する観戦レポート「Analyst report」。Vol.11ではB.LEAGUE FINAL 2018-19をアナリスト視点で斬る!




2018-19シーズンBリーグチャンピオンシップファイナル、千葉ジェッツ対アルバルク東京は、71対67でアルバルク東京が勝ちました。ファイナルに相応しい見応えある試合でしたが、Q毎にポイントになった場面を取り上げながら、何が勝敗を分けたのか、読み解いていきたいと思います。



1Q:仕掛けてきたアルバルク東京と迷いが見られた千葉ジェッツ

1Qで僕がポイントに上げるのは、1Q 6:02 アルバルク東京が12-6でリードするまでの展開です。

最近の将棋は序盤の局面で遅れを取ると、終盤に取り返すのは難しいという話を聞いたことがあるのですが、先手を打ってきたのは、アルバルク東京でした。これまで全試合でスターティングメンバーに名を連ねていた菊池ではなく、馬場をスターティングメンバーに起用してきました。この起用からは、試合開始から優位に立ちたいという意図が読み取れました。

馬場を起用したことの意図は、試合開始直後の攻撃からも読み取れました。アルバルク東京が選択したのは、田中とカークのピックアンドロール。田中のシュートは外れましたが、オフェンスリバウンドを拾ったカークがシュートを決めて、バスケットカウント。フリースローも確実に決め、いきなり3点をリードします。田中と馬場というピックアンドロールの起点になれる選手をスターティングメンバーで起用し、ピックアンドロールを使ってスコアを挙げたことは、アルバルク東京の選手にとって、自信になったと思います。



一方の千葉ジェッツが最初に選択したのは、石井の3ポイントシュート。僕はこのプレーを観た時、千葉ジェッツの意図をこう推測しました。

石井はセミファイナルの栃木ブレックス戦で、1本も3ポイントシュートを決めていません。その分、田口が2試合で7本の3ポイントシュートを決めています。石井は攻撃だけでなく、守備でも重要な役割を担っている選手なので、石井のプレーは勝敗を左右します。したがって、最初に石井に打たせて、入らなかったら田口のプレータイムを増やす。そんなプランだったのだと想像します。

ただ、この策はリーグ戦や3戦勝負であれば悪くないかもしれませんが、ファイナルは1発勝負。序盤の遅れや迷いは、取り返しがつかない結果をもたらします。千葉ジェッツはその後、16-15まで盛り返しますが、15点を挙げたのは、エドワーズと富樫勇樹のみ。本来であれば調子のよい選手を見極め、相手との差をつけたい1Qで、点差を離されないことに費やしてしまいました。

結果的に4点差であったことを考えると、1Q 4:06時点での12-6というスコアはその後の試合展開に大きく影響したと、僕は考えています。




2Q:タイムアウト後に上手く修正したアルバルク東京

2Qで僕がポイントに上げるのは7:52のタイムアウト以降のアルバルク東京の修正です。

2Qでのスタートを見た時、僕は驚きました。なぜなら、アルバルク東京は安藤と小島を休ませ、菊地を起用したからです。

菊地には西村にマークさせ、田中にポイントガード役を任せます。正直言うと、この施策はあまり機能せず、田中と菊地の役割分担が上手くいかなかったこともあり、西村が素晴らしいプレーを披露し、千葉ジェッツは点差を詰め、アルバルク東京はタイムアウトを選択します。

しかし、この菊地に西村をマークさせるという選択は、4Qのアルバルク東京の富樫に対する対応の布石だったような気がします。富樫を抑えるために、身長の大きな選手をマークにつけることを、アルバルク東京は準備していたのではないか。そんな事まで考えてしまいました。そのくらい、アルバルク東京は用意周到でした。

2Q 7:52 千葉ジェッツが22-16とリードした後に、アルバルク東京はタイムアウトを選択します。

このタイムアウトの後、アルバルク東京は千葉ジェッツの守備が対応してきたことを察知し、攻撃のパターンを変えます。パスを回してオープンな選手を作ってからペイント内に侵入したり、リピック(ピックアンドロールを仕掛けた向きとは別の向きにスクリーンをセットし直すこと)を何度も仕掛けたり、千葉ジェッツを揺さぶり、結果的にこのタイムアウトの後17得点を重ね、再びリードすることに成功しました。

2Qは千葉ジェッツの田口が6本中4本の3ポイントシュートを決め、2Qだけで14点を挙げます。田口のチャンピオンシップでのパフォーマンスは、本当に素晴らしかった。ただ、この14点は今振り返ると、田口自身の好パフォーマンスだけでなく、アルバルク東京がインサイドの選手への対応を重視し、アウトサイドで待つ田口に対する守備を緩めていたことも要因だと思います。

まずアルバルク東京が警戒していたのは、エドワーズ、パーカー、ダンカンといった選手によるインサイドからの得点。次にセカンドチャンスからの得点を減らすことだと思います。そんなアルバルク東京の意図を感じたのは、馬場の守備です。2Qまでは馬場はペイントエリア付近の選手を対応するような守備をしていました。この試合の馬場は、12リバウンドを挙げていますが、7つのリバウンド(オフェンスリバウンドは1つ)を挙げていることからも、いかにペイント付近に注意を払っていたのか、読み取れます。

一方の千葉ジェッツは、18点中14点を田口が挙げたのですが、他の選手の得点が増えません。7:52のタイムアウト以降に千葉ジェッツは9点を挙げているのですが、全て田口の得点でした。

2Qの18点を3人で挙げた千葉ジェッツ、一方19点を5人で挙げたアルバルク東京。前半を終えて、チームとして機能しているのはアルバルク東京の方だと、僕は感じました。





3Q:ポイントになった3ポイントシュート

3Qでポイントに上げるのは、3ポイントシュートです。

この試合のスタッツを調べると、2ポイントシュートは20対19で千葉ジェッツ、フリースローは6対6の五分でしたが、3ポイントシュートの本数は7対9でアルバルク東京が上回りました。つまり、3ポイントシュートの決定本数が、そのまま得点差につながったのです。そして、アルバルク東京は9本の3ポイントシュートのうち、5本を3Qで決めています(千葉ジェッツは0本)。決めたのは、竹内が2本、安藤、バランスキー、ビエリツァが1本ずつ。どれも効果的な3ポイントでした。



ポイントとして上げたい3ポイントシュートが2つあります。

1つ目は、3Q開始直後に竹内が2本連続で3ポイントシュートを決めたプレーです。この2本の3ポイントシュートは馬場がアシストしたのですが、1本目は石井、2本目はチェンバースと、千葉ジェッツの守備を支える2人を1対1でかわしてのアシストでした。特に2本目は千葉ジェッツにとって、大きなダメージを与えたと思います。

千葉ジェッツの強みは、チェンバースというスピードのある選手を3番(スモールフォワード)のポジションで起用できるため、マッチアップする日本人選手より優位に立てることでした。ところが、アルバルク東京にはサイズでもスピードでも上回る馬場がいるので、チェンバースが優位に立てません。千葉ジェッツはパワーで優位に立ち、スイッチしてインサイドの守備もできる原を起用することを選択します。原は3Qに6得点を挙げるなど、チームの追い上げに大きく貢献しましたが、一方で4Qに手痛いミスを犯してしまいました。

もう一つ挙げたいのは、45-62とこの試合最大の得点差につながった、ビエリツァの3ポイントシュートです。この3ポイントシュートを決める前に、アルバルク東京は小島が2本連続でオフェンスリバウンドを獲得しています。小島をマークしていたのは、石井でした。このシーンの直後、石井は田口と交代します。

ビエリツァの3ポイントシュートのきっかけになったのは、ダンカンがビエリツァにスティールされたことでした。ダンカンはポストプレーやインサイドの守備でシーズン中何度も千葉ジェッツを救ってきましたが、この試合はアルバルク東京の守備に抑え込まれてしまいました。

千葉ジェッツにとって、3Qは12-29という得点差以上に、石井、チェンバース、ダンカンという、シーズンを戦う上でチームを支えてくれた選手がアルバルク東京相手に優位に立てておらず、時間が経過する毎に、選択肢がどんどん減っていくような感覚があったのではないかと思います。2Qに14点を挙げた田口は、3Q以降は馬場にマークされ、1点も挙げることができませんでした。田口が抑えられたことも、痛かったと思います。

一方のアルバルク東京は、普段と違う戦いも織り交ぜつつ、起用できる選手は普段どおりのクオリティを保てていたので、ある程度余裕をもって、4Qに臨めたのではないかと感じました。



4Q:勝敗を分けた2つのプレー

4Qでポイントに上げたのは、千葉ジェッツの2つのミスです。

1つ目は、4:13にカークがフリースローをする場面です。4Q開始から千葉ジェッツは猛然と得点差を縮め、14-0のランを演出します。

14-0のランの後、原のファウルを受け、カークがフリースローを得ます。1本目を外した後の2本目、なんとカークは2本目も外してしまいます。ところが、2本目のフリースローの時に、エドワーズがペイント内に入ってしまったため、フリースローはやり直しになってしまいます。3本目のフリースローをカークが確実に決め、アルバルク東京は4Q初得点を挙げます。

たかが1点、されど1点だったかもしれませんが、この1点がもたらしたものは、小さくありませんでした。

もう1つはこのプレーの直後のプレーです。千葉ジェッツは原が3ポイントシュートをミスするのですが、他の選択肢もあったにもかかわらず、ショットクロックも残っていたにもかかわらず、他のプレーを選択することなく、簡単にシュートを打ってしまいます。シュートは外れ、直後に馬場に24秒ギリギリでシュートを決められてしまい、14-0が14-3になってしまいます。

千葉ジェッツが勝つとしたら、ここでできる限り畳み掛けてスコアを縮め、アルバルク東京にプレッシャーをかける必要があったと思います。ところが、この2つのプレーによって、再び8点差に点差が開いてしまいます。

残り時間1分を切った後の攻防は見ごたえがありましたが、4Qのアルバルク東京は、いくつかミスを犯しています。馬場が2本連続フリースローを外し、ビエリツァがラインクロスでターンオーバーを犯すなど、自らを苦しい立場に追い込んでいました。

千葉ジェッツも勝てるチャンスは十分ありました。だからこそ、僕が取り上げた2つのミスと、2点差に詰め寄った後に原が犯したターンオーバーは、千葉ジェッツにとって痛いミスでした。

まとめ:リーグとトーナメントでは戦い方が違う

接戦で面白い試合ではありましたが、実はリードが入れ替わったのは、2Qに千葉ジェッツが逆転した後、アルバルク東京が再逆転した2回のみ。3Q以降はずっとアルバルク東京が試合をリードしており、アルバルク東京がコントロールし続けていた試合という見方もできるかと思います。

以前「統計学は最強の学問である」という本の著者である西内啓氏が教えてくれたのですが、西内氏曰く「リーグで勝つための分析と、トーナメントで勝つための分析は違う」のだそうです。

西内氏によると、リーグ戦「1つの戦い方で戦う」ことを突き詰めるチームが勝つ確率が高まるそうですが、トーナメントは「1つの戦い方」を突き詰めるのは強みではなく弱点になる恐れがあるので、トーナメントでは「相手の弱点をつく戦いが出来るチームが勝つ確率が高まる」と教えてくれました。

千葉ジェッツは、リーグ戦の戦い方が上手いチームだと感じています。天皇杯はトーナメントですが、シーズン中に行われるだけでなく過密日程なので、リーグ戦と同じように戦い、クオリティを高いレベルで維持できるチームが強みを発揮しやすいのかもしれません。

2018-19シーズンはリーグ戦で8敗(そのうち2敗は開幕節)だったのですが、栃木ブレックスと東地区1位を争っていたこともあり、シーズン終盤まで確実に勝つことが求められる試合が続きました。そのことが、シーズン中に思い切った手が試せず、ファイナルでの打ち手を減らしたというのは、考えすぎでしょうか。


アルバルク東京は、リーグ戦は1つの戦い方を突き詰めるチームなのですが、プレーオフになると戦い方を変えてきます。リーグ戦の負けは、チーム力を高めるために必要なことだと割り切っているように見えるほどです。

もしかしたら、シーズン途中のどこかでホームコートアドバンテージは諦め、プレーオフで勝ち抜くためのチーム作りに切り替えたのだとしたら、ルカ・パビチェビッチヘッドコーチを始めとするスタッフと、選手たちの頑張りを褒め称えるしかありません。

Bリーグ2018-19シーズンは、アルバルク東京の2連覇で幕を閉じました。ファイナルの試合は、これまでの激闘を勝ち抜いた2チームの戦いにふさわしく、昨シーズンから明らかにレベルが上っていることも感じました。

2019-20シーズンは、リーグ戦だけでなく、開幕前のワールドカップ、そして、リーグ戦終了後にオリンピックが待っています。代表もリーグも一層盛り上がるであろう2019-20シーズンがどのようなシーズンになるのか、楽しみに待ちたいと思います。








B.LEAGUE ファイナル 2018-19

2019年5月11日(土) 15時10分 ティップオフ
@横浜アリーナ

アルバルク東京 71 – 67 千葉ジェッツ

(第 1Q:16-15、第 2Q:19-18、第 3Q:29-12、第 4Q:7-22)
BOX スコア

西原雄一

2013年10月にブログ「nishi19 breaking news」を開設し、主にサッカー、バスケットボールに関する試合の分析記事を執筆。現在はnote内の有料課金マガジン「勝ち負けだけじゃないスポーツの楽しみ方」で、有料会員向けに連載中。「B.LEAGUE 2017-18 選手名鑑・最新観戦ガイド」(ぴあMOOK)では、コラム「Bリーグは「データの力」で見えない壁を超える」を寄稿。また、一般社団法人日本スポーツアナリスト協会の広報委員として、様々な競技のスポーツアナリストの活動をサポートしている。
Twitter:@nishi19











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