Analyst report「カタール VS 日本」

COLUMN | MAR. 1, 2019

スポーツアナリスト西原雄一が分析する観戦レポート「Analyst report」。Vol.10ではワールドカップアジア2次予選 Window6 最終戦 アウェーのカタール戦をアナリスト視点で斬る!

Photo/©FIBA

FIBAバスケットボールワールドカップ2019 アジア地区 2次予選 Window6 カタール代表対日本代表は、96-48で日本代表が勝ち、ワールドカップ出場を決めました。 今回のレビューでは、カタール戦のレビューに代えて、ワールドカップ予選のレビューと題して、3つのトピックを取り上げました。

相手の変化に対応できるチームに

1点目は「相手の変化に対応できるチームになった」です。

Window3で行われたオーストラリア戦では、ゾーンディフェンスが機能し、オーストラリア代表の2PTシュートの成功率を37.3%に減らすことに成功しました。ゾーンディフェンスによって、ゴールに近い位置からのシュートによる得点を減らすという狙いはオーストラリア戦では特に効果を発揮しました。しかし、Window4に日本で行われたイラン戦では、イランにゾーンディフェンスを攻略されてしまいます。相手の対応を察知した日本代表は、マンツーマンディフェンスに切り替え、切り替えた後はイランの攻撃を抑えることに成功しました。

Window6のイラン戦でも、日本代表は試合開始当初ゾーンディフェンスを採用していましたが、イランに攻略されてしまいます。イランの狙いを察知した日本代表は、マンツーマンディフェンスに切り替え、試合終了までマンツーマンディフェンスで対応しました。守備でゾーンディフェンスとマンツーマンディフェンスへの切り替えができるようになっただけでなく、攻撃では相手がゾーンディフェンスなのか、マンツーマンディフェンスなのかによって、最適なプレーを選択できるようになりました。

Window4のカザフスタン戦では、カザフスタンが4Qから採用してきたゾーンディフェンスの攻略に苦労し、勝利したものの4Qは20-15とカザフスタンにリードされ、勝利したものの、「ゾーンディフェンスをいかに攻略するのか」という課題が残りました。

Window5のカザフスタン戦、4Qに77-68と9点差に詰め寄った場面で、カザフスタンはゾーンディフェンスを採用してきました。カザフスタンとしては満を持して採用したゾーンディフェンスだったと思うのですが、日本代表はパスを素早くつなぎ、シュートチャンスを得点に結びつけ、点差を広げました。

Window6のイラン戦、カタール戦でも、相手チームがゾーンディフェンスを採用する場面がありましたが、日本代表はカザフスタン戦同様にプレーし、点差を広げました。相手を見て、最適なプレーを選択するというのは、どんなスポーツをプレーする上でも基本ですが、瞬時に複数の選手の頭の中で考えていることを一致させて、連動してアクションを起こすのは、簡単ではありません。相当時間と手間をかけて、準備していたのだと思います。

日本代表の対応から、選手だけでなく、スタッフがどれだけしっかり準備し、課題と向き合い、改善を続けてきたのかが伝わってきました。

チームメイトには気持ちよくプレーさせるポイントガード

2点目は「選手の成長」です。

Window3のオーストラリア戦は勝利しましたが、ファジーカスと八村で79得点中49得点を記録しており、特定の選手への依存度が高いように見えました。

しかし、Window4以降は、ファジーカス、八村、渡邊以外にも、竹内譲次、太田、張本、比江島、田中、篠山、辻といった選手たちが自らの強みを試合で発揮し、特定の選手に頼りすぎることなく、試合に勝てるようになったと感じました。

この予選は富樫のプレーに注目して見ていました。富樫は素晴らしい能力を持つ選手なのですが、自分で得点を奪うプレーが得意な選手なので、味方にシュートチャンスを与えるというよりは、自分でシュートを決めるということを優先してプレーしているように見えるときがありました。Window5のカザフスタン戦のレビューでも書いたのですが、僕はポイントガードは、「チームメイトには気持ちよくプレーさせ、相手チームには気持ちよくプレーさせないように試合をコントロールするポジション」だと思っています。日本代表には、富樫以外にも得点を奪える選手がいますので、富樫が他の選手の力を活かし、チームを勝たせるか。そこに注目していました。

Window6で印象に残ったのは、3PTシュートを決める富樫の姿ではなく、守備時に相手のサインを読み取って味方に伝える富樫の姿や、試合が止まっているときに両手を叩いて味方を鼓舞する富樫の姿です。

もしかしたら、富樫本人は自分の得意なスタイルで100%プレーできないことに、葛藤を抱えながらプレーしていたのかもしれませんが、富樫のプレーの変化は、日本代表でプレーすること、勝つことの重みと大切さを、選手たちが受け止めていることの現れだと、僕は解釈していました。

特別な言葉も、魔法のような戦術もない

3点目は「ラマスヘッドコーチ」についてです。

多くのスポーツファンは、成果を出した監督やヘッドコーチには、特別な戦術、選手にかけた特別な言葉、スタッフのマネジメントなど、魔法のような何かを期待しがちです。むしろ、魔法のような特別な取り組みを実施したから、成果が出たのではないか。そう考えがちです。しかし、様々なラマスヘッドコーチの発言を読んでも、戦術、マネジメントなどで、特別な取り組みをしているようには読み取れません。でも、着実にチームは成長していますし、選手だけの成果だとは思えません。


特別な言葉は言わない。魔法のような戦術も使わない。でもチームは改善している。こうした特徴を踏まえて、僕はラマスヘッドコーチを「当たり前のことを確実に遂行する」ヘッドコーチなのではないかと思いますし、スタッフの力を引き出すのが上手い指導者なのだと思います。

問題を洗い出し、改善のために必要な策を考え、選手やスタッフに納得してもらった上で実行してもらい、少しずつレベルを上げていく。そして、選手が成長していくための環境を整える。ラマスヘッドコーチの取り組みは目立ちませんが、本当にヘッドコーチに求められることを着実に実行している指導者であり、これまでの日本で称賛されてきたカリスマ性のあるリーダーとは全く異なるリーダーなのではないか。僕はそんなことを考えています。

多くの人の注目を集めた魅力的なチームが、ワールドカップ本大会までどう成長するのか。楽しみにしたいと思います。


西原雄一

2013年10月にブログ「nishi19 breaking news」を開設し、主にサッカー、バスケットボールに関する試合の分析記事を執筆。現在はnote(https://note.mu/nishi19)内の有料課金マガジン「勝ち負けだけじゃないスポーツの楽しみ方」で、有料会員向けに連載中。「B.LEAGUE 2017-18 選手名鑑・最新観戦ガイド」(ぴあMOOK)では、コラム「Bリーグは「データの力」で見えない壁を超える」を寄稿。
Twitter:@nishi19




FIBA バスケットボールワールドカップ 2019 アジア地区 2 次予選 Window6

日本(通算 8勝4敗) ○ 96 – 48 ● カタール(通算 2勝10敗)
※「AKATSUKI FIVE」 バスケットボール男子日本代表チーム ワールドカップ出場権獲得!

AKATSUKI FIVE

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