Analyst report「オールジャパン男子決勝 栃木 VS 千葉」

COLUMN | JAN. 24, 2019

スポーツアナリスト西原雄一が分析する観戦レポート「Analyst report」。Vol.8では今後名勝負として語り継がれる男子オールジャパン決勝戦をアナリスト視点で斬る!

2018-19年シーズンも第19節まで終了しました。第19節が終了した時点で、全チームの中で勝率1位は千葉ジェッツ、2位は栃木ブレックス。この2チームは、第94回天皇杯決勝、第19節と連戦で戦いました。2試合の結果は、千葉ジェッツの2連勝という結果に終わりましたが、Bリーグの勝率1位対2位の対戦は、2試合ともとても見ごたえのある試合になりました。2試合を見て、気になった点を3点紹介したいと思います。


栃木の守備を攻略した千葉の攻撃

1点目は、「栃木ブレックスのゾーンディフェンスを攻略した千葉ジェッツのオフェンス」です。
栃木ブレックスの試合を見ていると、状況に応じて「2-3」のゾーンディフェンスを採用します。「2-3」のゾーンディフェンスを採用する理由として考えられるのは、竹内公輔が出場している時間帯でマッチアップする外国籍選手と優位性を作らせないようにする、相手チームのピック・アンド・ロールを使った攻撃への対策など、様々な要因が考えられます。さらに、栃木ブレックスのゾーンディフェンスは、「2」の選手がオールコートでプレスをかけることで、相手チームがボールを運ぶのに時間をかけさせる、より効果を発揮しています。栃木ブレックスは、マンツーマンとゾーンディフェンスを上手く使い分けてくるので、相手チームが対応するのは簡単ではありません。相手チームがボールを運ぶのに時間がかかれば、他の選手のポジションを整え、相手にゾーンディフェンス用の攻撃を実行する時間を与えず、ミスを誘うこともできます。

しかし、千葉ジェッツは2試合を通じて、何回かミスもありましたが、栃木ブレックスの守備に上手く対応しました。栃木ブレックスがプレスを仕掛けてきたら、素早くビッグマンがスクリーンをかけ、他の選手がサポートにくることで、ターンオーバーを最小限に留めながら、栃木ブレックス陣内にボールを運んでみせました。千葉ジェッツが、栃木ブレックス陣内にボールを運んだ後、効果的だったのはポストアップを活用した攻撃です。千葉ジェッツが巧みだったのは、プレーに一工夫加えていたことです。

栃木ブレックスも当然ポストアップを使った攻撃を警戒していたと思いますが、千葉ジェッツはポストアップの攻撃を仕掛ける際、一方のサイドに選手を集め、ポストアップする選手だけ別のサイドに移動し、栃木ブレックスの選手の背中側からパスコースに侵入してボールを受けてから攻撃を仕掛けることで、ポストアップする選手がプレーしやすいエリアを確保していました。天皇杯決勝では千葉ジェッツのポストアップの攻撃が機能していたので、Bリーグ第19節の対戦では、栃木ブレックスは「2-3」のゾーンディフェンスを採用する時間を減らし、マンツーマンでディフェンスします。すると、千葉ジェッツは富樫を起点とするピック・アンド・ロールによる攻撃を多用し、4Qだけで富樫が16得点と活躍しました。ポストアップを警戒すると、ピック・アンド・ロールの攻撃が機能する。千葉ジェッツとしては、ある程度狙い通りに攻撃を組み立てられた2試合ではないかと思います。

千葉の守備を支えるアキ・チェンバース

2点目は、「栃木ブレックスのキーマンを封じた千葉ジェッツのディフェンス」です。
特にディフェンスで印象に残ったのは、天皇杯決勝です。天皇杯決勝の1Qは、栃木ブレックスの遠藤がこのQだけで10得点と活躍。栃木ブレックスが17-13とリードします。しかし、遠藤に対応していたアキ・チェンバースは、2Q以降に守備を修正してきます。修正したのは、遠藤との間隔です。3Pシュートを打たれないように間隔を縮めて守り、遠藤にシュートチャンスを与えません。遠藤もボールを持っていない時、スクリーンなどを活用してマークを外そうとするのですが、アキ・チェンバースのマークをなかなか外すことができず、2Q以降は3得点にとどまりました。富樫やエドワーズのように得点を奪う選手は目立ちますが、守備で相手の強みを消した選手は、なかなか目立ちません。ただ、天皇杯決勝を勝ち取るにあたって、アキ・チェンバースの貢献度はとても高いと感じました。


天皇杯決勝は1Qに得点が集中した遠藤ですが、Bリーグ第19節では4QにこのQチーム最多の6得点を挙げ、チームを牽引しました。2018-19シーズンはピック・アンド・ロールの起点としても素晴らしいプレーを披露している遠藤ですが、4Qで披露したのは、ピック・アンド・ロールからの攻撃というよりは、ボールを持っていないときのアクションで、相手を外し、シュートチャンスを創り出すプレーでした。千葉ジェッツのディフェンスに対して、遠藤含めた栃木ブレックスも上手く対応していたと思います。

プレータイムが少ない実力者をいかに組み込むか

2試合を見終わって、両チームとも似たような課題をかかえていると感じました。それは、「プレータイムが少ない実力者をいかにチームに組み込むか」です。
栃木ブレックスで注目しているのは、比江島です。Bリーグ第19節、栃木ブレックスで初めてプレーした比江島は、15分12秒の出場で6得点と、結果だけ見るとまずまずに見えますが、比江島が出ている時間帯は、比江島にボールを持たせたり、比江島が混乱しないようにマンツーマンディフェンスを採用したりと、配慮しながら戦っているように見えました。栃木ブレックスは、Bリーグの中でもボールを持っていないときの約束事が多いチームだと思います。比江島は、ボールを持っているときは素晴らしい選手ですが、ボールを持っていないときのプレーは、これから覚えていく必要があります。


千葉ジェッツで注目しているのは、小野です。
小野は10月13日に行われた三遠ネオフェニックス戦で負傷。12月27日のレバンガ北海道戦から復帰しました。Bリーグでは12月30日の京都ハンナリーズ戦からは20分以上のプレータイムを得ていますが、まだスターティングメンバーでは出場していません。気になったのは、天皇杯決勝の4Q残り4分27秒以降に出場機会がなかったことです。負傷する前の小野は、チームで最もプレータイムが多い試合があるほどの中心選手でした。

しかし、勝敗の行方を左右する時間帯で、千葉ジェッツが起用したのは、スターターを務めているアキ・チェンバースと石井。栃木ブレックスが鵤を起用していたため、石井をマッチアップさせたかったという理由も会ったと思いますが、オーバータイムに石井がファウルアウトした後に起用したのが西村だということを考えると、まだ小野のコンディションが100%ではないのかもしれませんし、もしかしたら、千葉ジェッツの選手を起用する際の優先順位が変わった可能性も考えられます。比江島と小野。そして、栃木ブレックスには負傷欠場が続いている田臥もいます。実力も、人気もある選手を、いかにチームに組み込んでいくのか。監督・スタッフの腕の見せ所です。オールスターが終わり、残り試合で各チームがどのような変化をみせるのか。予想通りだったり、予想以上だったりするチームの変化を、楽しみにしたいと思います。




西原雄一

2013年10月にブログ「nishi19 breaking news」を開設し、主にサッカー、バスケットボールに関する試合の分析記事を執筆。現在はnote(https://note.mu/nishi19)内の有料課金マガジン「勝ち負けだけじゃないスポーツの楽しみ方」で、有料会員向けに連載中。「B.LEAGUE 2017-18 選手名鑑・最新観戦ガイド」(ぴあMOOK)では、コラム「Bリーグは「データの力」で見えない壁を超える」を寄稿。また、一般社団法人日本スポーツアナリスト協会の広報委員として、様々な競技のスポーツアナリストの活動をサポートしている。
Twitter:@nishi19



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