Analyst report「日本 VS カザフスタン」

COLUMN | DEC. 6, 2018

スポーツアナリスト西原雄一が分析する観戦レポート「Analyst report」。Vol.7ではWC2次予選Window5ホームカザフスタン戦をアナリスト視点で斬る!



この試合は、試合を見ていた人の数だけ「ここだ」と感じたポイントがあったと思います。僕が取り上げるポイントは3点あります。

ミスマッチを抑えきった太田のディフェンス

1点目は、2Q残り00:10、日本代表が34-33でリードしている場面での太田のディフェンスです。この場面、カザフスタンのスクリーンが上手く機能し、日本代表はスイッチで対応せざるを得なくなり、太田がガードのイェルガリとマッチアップすることになってしまいます。ミスマッチをついてカザフスタンが得点を奪うことができれば、リードしてハーフタイムを迎えることができる。そんな場面でした。しかし、太田はイェルガリとの1対1に冷静に対応し、イェルガリにシュートチャンスを与えません。イェルガリはトラベリングを犯してターンオーバー。カザフスタンはミスマッチをつけず、逆転する絶好のチャンスを逃してしまいました。太田はカタール戦では、ファジーカスとプレーする位置が重なるなど、上手く連携して動くことができていませんでしたが、この試合はファジーカスとの役割分担も修正され、ファジーカスがペイントエリア内を、太田がペイントエリアの外でボールを受ける選手に対応していました。

この試合、太田、竹内譲次、張本は、タフな仕事が求められました。カザフスタンのジグリンが3Pシュートもペイントエリア内のシュートも上手いので、ペイントエリアから離れて守備をする機会も多く、ファウルも増えてしまいました。ただ、ファジーカスはペイントエリア付近から動かしたくなかったので、3人にはペイントエリアの外に出てディフェンスをした後、相手がシュートを打ったら、素早くペイントエリア内に戻ることも求められました。ファジーカスのリバウンドが増えた(この試合は15リバウンドを記録)したのは、3人がディフェンスのタスクをきちんとこなしていたからだと思います。


勝負どころでカザフスタンのゾーンディフェンスを攻略

2点目は、4Q残り02:50の場面での、馬場が決めたジャンプシュートです。4Q残り05:19で竹内譲次がファウルアウトし、さらに張本もファウルアウト。急遽ファジーカスをコートに戻し、日本代表はベンチに入っていた太田も竹内公輔も起用せず、馬場をパワーフォワードの位置で起用した「スモールラインナップ」で残り時間を戦うことを決断します。

しかし、直後のプレーでファジーカスがイェルガリに対して3Pラインの外側でファウル。イェルガリが3本のフリースローをすべて成功させ、77-68と9点差まで点差を縮められてしまいます。このタイミングでカザフスタンは、ここまで使っていなかったゾーンディフェンスを使ってきました。カザフスタンのゾーンディフェンスは、前回の日本との対戦時に機能し、ゾーンディフェンスを採用した4Qだけの点差だと、21-15とカザフスタンが上回っています。

ただ、日本はカザフスタンの変更に冷静に対応しました。相手がゾーンディフェンスに切り替えていることに気がつき、丹念にパスを回しながら、田中のパスを受けた馬場がジャンプシュートを決めます。この試合の馬場のプレーを振り返ると、3Qに決めたダンクを思い出す人がいると思いますが、僕はこの場面で決めたシュートの方が重要だったと思います。このシュート以降、日本は比江島の3P、比江島とファジーカスの見事なピック・アンド・ロールによる得点で一気に点差をひろげ、勝負を決めました。


30分以上出場してターンオーバーが0だった富樫

3点目は、4Qのこり01:34の比江島とファジーカスの見事なピック・アンド・ロールではなく、その1つ前の富樫のディフェンスリバウンドです。この試合の富樫は32分32秒出場し2得点。フィールドゴールが1/8となかなかシュートが決まりませんでした。たぶん、カタール戦で負傷した足首も万全ではなかったのだと思います。



ただ、この試合の富樫のプレーを見ていると、普段の富樫のように自分の得点でチームに貢献するというよりは、他の選手が気持ちよくプレーできるようにサインを出してコントロールし、ディフェンスで貢献することに重きをおいてプレーしているように見えました。ファジーカスから得点があげられると判断すれば、徹底的にファジーカスを使う。ピック・アンド・ロールを使ったオフェンスは、比江島や田中や馬場に任せる。自分で仕掛けずに、味方をいかす。これまで見たことない富樫のプレーを、この試合で見ることができました。32分32秒出場したにもかかわらず、富樫が犯したターンオーバーは0。いかに富樫が丁寧に試合をコントロールしていたか分かります。




僕はポイントガードというポジションに求められることは、「チームメイトには気持ちよくプレーさせ、相手チームには気持ちよくプレーさせない」ように試合をコントロールすることだと思っています。6連勝しましたが、残り2試合はイランとカタールとのアウェーゲーム。おそらく、八村と渡邊雄太を選ぶことはできないと思いますので、厳しい試合が予想されます。また、代表選手にとっては、ハードなスケジュールでの試合が続きますので、怪我人が出る可能性もあります。

アウェーゲームでは、上手くいかないときに、声で、プレーで、試合をコントロールしつつ、少しずつ試合を自分たちが望む展開に持っていくような我慢強さも求められると思います。この試合の富樫は、普段の富樫とは違っているように見えたかもしれませんが、新たな引き出しを空けたようにも見えました。今後の試合でプレーに変化があるのか、注意深く追いかけたいと思いいます。

西原雄一

2013年10月にブログ「nishi19 breaking news」を開設し、主にサッカー、バスケットボールに関する試合の分析記事を執筆。現在はnote(https://note.mu/nishi19)内の有料課金マガジン「勝ち負けだけじゃないスポーツの楽しみ方」で、有料会員向けに連載中。「B.LEAGUE 2017-18 選手名鑑・最新観戦ガイド」(ぴあMOOK)では、コラム「Bリーグは「データの力」で見えない壁を超える」を寄稿。また、一般社団法人日本スポーツアナリスト協会の広報委員として、様々な競技のスポーツアナリストの活動をサポートしている。
Twitter:@nishi19





FIBAバスケットボールワールドカップ 2019 アジア地区 2次予選Window5

日本(通算 6勝4敗) ○ 86-70 ● カザフスタン(通算 4勝6敗)

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