Analyst report「日本代表 VS オーストラリア代表」

COLUMN | JUL. 2, 2018

新企画スポーツアナリスト西原雄一が分析する観戦レポート「Analyst report」。Vol.1では FIBAバスケットボールワールドカップ2019 アジア地区 1次予選 Window3 日本代表 VS オーストラリア代表をアナリスト視点で斬る!

ワールドカップアジア1次予選の第5戦、日本代表対オーストラリアは、79-78で日本代表が勝ちました。この試合で勝敗を分けたポイントは主に3点あります。

2PTシュートの成功率でオーストラリアを上回った

1つ目は、2PTシュートの成功率でオーストラリアを上回ったことです。2PTシュートの成功率は、日本が50.9%でオーストラリアが37.3%。日本の2PTシュートの成功率が50%を上回ったのは、ペイントエリア内での得点が多かったからです。この試合では、日本代表がペイントエリア内で挙げた得点は44点と、オーストラリアの36点を上回りました。2017年11月時に対戦した時は、日本代表の得点が14点(オーストラリアは46点)しかなかったことを考えると、いかにペイントエリア内での得点が改善されたかがよく分かります。

ペイントエリア内での得点が増えた要因は、ファジーカスと八村という2人が加わったからです。ファジーカスの2PTシュートの成功率は10/19で52.6%、八村は10/18で55.6%と2人とも50%を超える高確率で確実にシュートを決め続けました。これまでの日本代表の試合を観ていると、「誰にシュートを打たせたいのか分からない」と思ってしまうようなオフェンスをしていました。しかし、この試合を観ていると、ファジーカス、八村というインサイドで強みを発揮出来る選手が加わったことで、2人を活かすためのオフェンスを実行しようとしていることが読み取れました。

オフェンスを開始する時に、ポイントガードがコールし、他の選手がポジションをとった上で、攻撃を仕掛ける。八村とファジーカスのどちらを活かすのか、難しい場合は誰にシュートを打たせるのかといった、オフェンスを仕掛ける際に、優先すべき事が設けられたことで、チームとしての判断ミスが明らかに減りました。日本のターンオーバーの数が6(オーストラリアは9)と1桁におさまっていたのは、優先すべき事が決まり、判断のミスが減ったことが要因だと思います。

そして、オーストラリアの2PTシュートの成功率が37.3%と低かったのは、日本の守備が機能したことも要因です。特に試合を通じて採用したゾーンディフェンスが上手く機能したことが、2PTシュートの成功率を減らした要因だと思います。

ゾーンディフェンスを機能させるには、決められたエリアをただ守るだけでなく、ボールを持っている選手に対して距離を詰めて自由を与えないこと、体格差のミスマッチが生まれないように、上手くマークを受け渡し、選手同士の距離を詰めて、体格差によるミスマッチを生じさせないことが求められます。

日本代表はコミュニケーションのミスによって生じる、マークの受け渡し、体格差のミスマッチで失点する回数を、最小限にとどめることで、オーストラリアの2PTシュートの成功率を50%以下にすることに成功しました。

ディフェンスリバウンドの獲得数でオーストラリアを上回る

2つ目は、リバウンドです。リバウンドの獲得数は、日本が44、オーストラリアが50。数字だけ単純に比較すると、オーストラリアの方が上回っていますが、2017年11月の対戦では、日本が21、オーストラリアが48だったことを考えると、いかにリバウンドが改善されているかが分かります。特に改善されたのは、ディフェンスリバウンドです。前回は日本が17でオーストラリアが31と圧倒的な差をつけられていたのですが、今回は34対28と上回りました。

リバウンドの獲得数が増えたのは、12リバウンドのファジーカス、7リバウンドの八村という2人の貢献も大きいのですが、8リバウンドの比江島、5リバウンドの竹内と、他の選手もきちんとリバウンドを取ることを意識し、シュートを打たれた後にポジションをとり、必要以上にセカンドチャンスを与えませんでした。

日本代表は「2-3」と呼ばれるゾーンディフェンスを採用しているので、リバウンドを奪うためにボックス付近に移動する動きが求められるのですが、「2」のポジションでプレーした比江島も、シュートを打たれた後にボックス付近に戻るといった、リバウンドを奪うための動きを実行していました。この試合の比江島の得点は6得点ということで、物足りなさを感じた人もいるかもしれません。しかし、8リバウンドだけでなく、チーム最多の6アシストを記録していたことからも、比江島がチームの勝利を第一に考え、オフェンスとディフェンスが機能することを心がけてプレーしているのが伝わってきました。

フリースローの成功率でオーストラリアを上回る

3つ目は、フリースローの成功率でオーストラリアを上回ったことです。フリースローの成功率は、日本が13/15で86.7%、オーストラリアが13/20で65%。日本でフリースローを外したのは、ファジーカスと八村が1本ずつだけ。竹内、馬場、田中、辻といった選手は、2本きっちり決めてみせました。

特に Q3残り3:53で馬場がアンスポーツマンライクファウルを受けた後、代わってフリースローを2本決めた辻のプレーは、目立ちませんが得点差を考えると、勝敗を分けるビックプレーだったと思います。

50-52とオーストラリアに0-8のランを決められて逆転された後でしたので、フリースローで確実に同点に追いつき、次のプレーでファジーカスの2PTシュートで勝ち越し。このプレー以降は1度もリードを許さなかったことを考えると、6分30秒しか出場しなかった辻の果たした役割は小さくないと思います。

一方、オーストラリアは日本より5本多い20本のフリースローを得たにもかかわらず、決めたのは日本と同じ13本。僅差の試合では、フリースローの成功数が勝敗を左右します。オーストラリアが日本よりフリースローの成功率が低かったのは、試合にかけつけたブースターの声援が与えたプレッシャーも要因だと思います。選手・スタッフだけでなく、ブースターも勝利のために力を振り絞った結果が、僅差の勝利につながったと思います。

チームとして出来ることは最大限取り組んだ試合だと思いますが、課題が全くなかったわけではありません。ゾーンディフェンスを行った時のコミュニケーションミスは最小限にとどめたとはいえ、全くなかったわけではありませんでした。八村やファジーカスといった選手がペイントから釣り出され、空いたスペースをオーストラリアに攻撃され、シュートを決められた場面がありました。コミュニケーションミスによる失点がなぜ起こったのか、どうしたら改善出来るのかを、チームとして整理する必要があると思います。

この試合は八村とファジーカスの2人で、49得点(チーム総得点の62%)を挙げていますが、2人が毎試合50%以上の成功率でシュートを決められるとは限りません。他の選手がもっと得点を奪い、2人の負担を軽くすることが求められます。

期待したいのは、この試合で0得点だった富樫です。3Q残り3:53からはベンチに座り、4Qは出番なし。4アシストを記録しましたが、得点でも、アシストでも、チームを牽引する活躍は出来ませんでした。篠山が富樫を上回る21分18秒出場し、残り30秒で勝利を大きく引き寄せるレイアップを決めるなど活躍しましたが、富樫は歴史的な勝利に大きく貢献できず、悔しい気持ちを抱いているはずです。次の試合では富樫のプレーに注目したいと思います。

チームとしてベストを尽くして勝利を挙げることは出来ましたが、まだチームの目標である2次予選進出は確定していません。中2日で行われるチャイニーズ・タイペイ戦に2点差以上で勝利しなければ、2次予選に進出することは出来ません。

中2日で迎えるアウェイゲームこそ、日本のバスケットボールの未来を決める大一番です。どんな試合になるのか楽しみです。

西原雄一

2013年10月にブログ「nishi19 breaking news」を開設し、主にサッカー、バスケットボールに関する試合の分析記事を執筆。現在はnote(https://note.mu/nishi19)内の有料課金マガジン「勝ち負けだけじゃないスポーツの楽しみ方」で、有料会員向けに連載中。「B.LEAGUE 2017-18 選手名鑑・最新観戦ガイド」(ぴあMOOK)では、コラム「Bリーグは「データの力」で見えない壁を超える」を寄稿。また、一般社団法人日本スポーツアナリスト協会の広報委員として、様々な競技のスポーツアナリストの活動をサポートしている。
Twitter:@nishi19

FIBAワールドカップ アジア地区1次予選 最終戦
日本 VS チャイニーズ・タイペイ

7月2日(月) 20:00 TIPOFF (現地時間 19:00)
「フジテレビ NEXT」生中継
DAZN」 「バスケットLIVE」にてLIVE配信

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